女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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明らかにそこにある殺意

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 ネーヴェが落ち着いた所でドアをノックし来訪を告げると、間を置かずメイドが来て中に上げてくれた。

「本日は、よろしくお願いします。ラッテ様をどうかお救いください」

「神にでも祈っていてくれ」

客間に通されると、既に家主とその妻が待っていて、深く頭を垂れた。

「カケル殿…、本日はご足労頂きありがとうございます」

「表情が優れないな。…と言うより焦りと疑念が見えてるぞ?心変わりでもしたか?」

頷いたままの二人は顔を上げずピクリと肩を震わせた。

「旦那様!それではラッテ様が!」

「そんな事は分かってる!…カケル様はお見通し、なのですね」

「理由を聞いても良いよな?」

「夜分に文が届きまして、貴方様が視察を拒んだ場合、かの者は詐欺師である故、施術は断るようにと…」

「バルジャンに唆されたか。俺は詐欺師じゃなくて冒険者なんだがな」

「存じております。ジョン様とダンジョンに潜られたと聞いております」

「金も力もある俺が、お前等から何を詐欺するんだ?金はある。家も先日セカンドハウスを作った。女にも困ってないし貴族より良いモン食ってる。お前等から何を搾取したら良い?」

「仕事です…」

「断ればギルドが仕事を妨害するって訳か。ジョンはそんな事しないがな」

「ジョン様以外はするのです」

「ならば此方は家政婦組合を味方に付けるか」

「カケル様、それは難しいかと…」

「なぜ?」

「家政婦組合は、男性の言葉を意見の一つとしてしか聞きません。男女で争う事も違反となります」

「意見の一つとして聞いておくよ。今日は帰るので気が変わったら樵に来てくれ」

「カケル!」

「ネーヴェ、これが、正直者が馬鹿を見るって事だ。けど必ず助ける。先に馬鹿を懲らしめてからだ」

「……わがっだ」

脇腹に飛び込み悔しさを堪えるネーヴェを抱え、俺達は外に出た。立ちながら呻いてる馬鹿共は無視だ。

「ネーヴェ、ジョンに殺意を飛ばしてくれ。殺すなよ?」

「うん」

見る事は出来無いが、明らかにそこにある殺意がジョンの元へと凄い速さで伸びて行く。ギルドの壁にぶち当たった瞬間、ジョンはギルドを飛び出した。
追い掛けて、回り込み、道を塞いで此処まで来るのに三リット。

「かっ、カケル!今度は何だ!?」

「ネーヴェが激おこプンプン丸なんだ」

「な!?キルヒネーヴェ様!お怒りの理由をお答え下さい!必ずや取り払って見せます!」

ネーヴェの前に跪き理由を問うジョンに、先程の話を聞かせてやった。

「この馬鹿女!」

やはり独断か。呻いて返事も出来無いバルジャンにジョンの怒号が飛ぶ。

「ジョン、其奴がやった事を纏めて、関わった奴を洗い出してくれ」

「わかった!」

「ネーヴェ、森を消し飛ばしに行くぞ。関係無い人を殺しても意味が無いからな」

「うん」

「おまっ、そんな事したら狩りが出来なくなるだろ!?」

「開墾するなり街を広げるなりすれば良いさ。それとも街に向かってブレスを吐かせるか?」

言葉の出ないジョンを放置し、空に上がる。どんどん上がって街が豆粒程になった所で街の周囲五キロ程に生えてる木を全て《収納》した。

「ふぅ。ネーヴェ、やって良いぞ」

「グオラァァァ!」

怪獣映画に出て来る大怪獣が吐き出す放射熱線の如く、青白い光が森に飛ぶ。雪は一瞬で昇華し、木は炭となって燃え上がり、地面と一緒に飛び散った。ネーヴェのブレスが森をぐるりと一周すると、土煙と水煙が立ち昇り、火の粉が降り注ぐ深い窪地が出来上がった。

「うぐぅ…、カケル、カケルゥー」

抱き着いて顔を埋めるネーヴェを優しく抱き返し、宿に戻った。

「カケル様!ラッテは?ラッテは治ったの!?」

宿に着くとティータが駆け寄り施術の結果を聞いて来るが、大人の都合で今日は出来無かった事を告げると残念そうな顔をしながら少しほっとしていた。
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