女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

もる

文字の大きさ
491 / 1,519

当たり障りの無い話

しおりを挟む


 久しぶりのエディアルタは、夕方だからだろうか、冒険者の数が多いように感じた。

「事務処理を頼むよ」

「エディアルタへようこそ。ギルド証を預かります」

事務的な会話しかしない受付嬢に当たったが、知り合いでも無ければこんなもんだろう。仕事してくれたらそれで充分だ。

「Cランクのエージャさんにカケルさん…ん?カケルさんはこの街の出なんですね」

「そうだよ。ギルマスに、カケルが属性魔石持って来たと伝えてくれないか?きっとすっ飛んで来るから」

「は?え?属性魔石って、光の棒とか…ですか?」

「そうだよ。増産分を持って来たんだ」

「し、少々お待ち下さい。連絡して参ります」

今日の受付嬢は当たりだ。こんなに嬉しい事は無い。

「あの女が気に入ったのですね。そしてまた私の目の前であんな事やこんな事を見せ付けてお楽しみになるのですかそうですか」

「またクタクタになるまでしてやろうか?」

耳元で囁くと、俺のマントの中に隠れてしまった。抱き着いてニヤニヤするんだろう。暫くしてドタドタと階段を降りる音。胡麻塩角刈りヒゲマッチョ、ギルマスだ。

「カケルか!」

「禿げたな」

「まだ禿げとらん!…こっち来い」

指でクイクイっとするのでホイホイっと付いて行ってしまう俺と、しがみ付いて離れないエージャ。ギルマスの部屋は相変わらずだな。

「女達は元気にやってるか?」

ソファーにドカッと腰を下ろしてギルマスが問う。当たり障りの無い話から始めるのは会話の基本だ。

「嫁がコレでコレモンでさ」

「真面目に働いてるようだが…其奴は新しい嫁か?」

「エージャです。カケル様のお世話係として大奥様に推して頂きました」

「詳しくは省くが嫁の実家の従業員だ。鈍っているけどそれなりに強いぞ?」

「成程分からん。で、今日はどんだけ持って来たんだ?旧ナーバーグに優先して回したからこっちには殆ど回して無いんだ」

「あっちは穴掘り辛いからな」

「掘れんそうだぞ」

「取り敢えずあるだけ全部持って来た。とにかく見てくれ」

《収納》から箱に入った属性魔石を取り出して見せてやる。光と水が各三千、火の鉄板は千あるが出すと床が抜けそうなので一枚だけ出してやる。

「水三千はありがたいな。この鉄板は何だ?魔石が嵌ってるから魔道具なのは予想出来るが」

「火の属性魔石の鉄板だ。火を使わず料理が出来る。一枚三千ヤンで千枚持って来た」

「儲ける気になったのか」

「三百ヤンで放火されたら嫌だろ?」

「…まあな。全て買い取ろう。金のやり取りと搬入は下でやってくれ」

荷物を《収納》して気になった事を聞いてみた。

「転売の件はどうなってる?」

「私が代わりに報告します。当ギルドでの監視の強化と取扱い業務の交代。それにより商業ギルドの取扱い停止。増して、家政婦組合の監査によりエディアルタ、旧ナーバーグでの転売は見られません。流出はゼロでは無いと思われますので他の街でどう取り扱われているかは不明です。それでも住民以外には売らないようにしています」

「他所に流れちゃったら仕方無いよな」

雑談もそこそこに、秘書に連れられ下に降り、倉庫に荷物を搬入した。

「凄い量ですね…」

「鉄板は嵩むからなぁ」

搬入を終えたら宿を取ろう。以前泊まったちょっと良い宿でチェックイン出来たのはラッキーだった。

「カケル様はお酒飲めたのですね」

夕飯に酒を頼んだらエージャがそんな事を聞いて来た。ママ上殿の所でもカロ邸でも飲まなかったからだろう。

「そこまで好きじゃ無いし、沢山飲めないからなー。コレ一杯で充分だし、今夜はもう外に出ないから飲む事にしたのさ」

温目のエールをちびちびやるが、地球のビールのように苦くなく、ちょっと甘酸っぱい。キンキンに冷やしたら危険な気がする。

「飲むか?」

「良いのですか?では一杯だけ…」

酒を飲み、ほんのり赤みを帯びたエージャはちょっと色っぽかった。



しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...