523 / 1,519
サンダルくらいなら俺にも作れる
しおりを挟む片目を瞑って何とか視力を確保していた最後の一人が女達に刃物を当てて喚いてる。
「もう少しだぞ、頑張れー」
「手前ぇ等の目的はこの二人だろうがっ!殺されたく、な…」
馬鹿な奴である。喋くってる暇があるなら壁際にでも逃げれば良い物を。後ろから両腕と首をスパーされて物言わぬ塊と化した。
「三人共、お疲れ」
「吐きそう…」「吐いていい?」「おろろろろろろ!」
ガットはここまで、否、三人共ここまでだな。ワーリン達に介抱されてゲロってら。俺はアジト毎全員に《洗浄》を掛けた。ぐったりしていた女達もびっくりして跳ね起きたよ。
「お、お前さん…。するならするって言っておくれよ」
「あたいは慣れてるけどね」
「兄貴ぃ、水ちょーだーい」「「俺もー」」
女達と三人の勇者に回復と水をくれてやる。ワーリン達が女達の介抱をしてる間に、金目の物を回収だ。と言っても大した物は無かった。金と、安物の武具と、装飾品。手持ちの物に比べるべくも無い。
「カケルさん、何か服になりそうなの無い?」
シトンが聞いて来る。そう言えば人質の女達は殆どが素っ裸だったな。雑木紙に穴を開けて貫頭衣にしてもらおう。サンダルくらいなら俺にも作れるな。履き心地はともかく、足が痛い事は無くなるだろう。八足作って配って回った。
「この度はお救い頂き感謝する」
殆ど素っ裸の中に居て、服を着ていたのはこの台詞を吐いた女の後ろに居る者だけだ。多分貴族で、身代金の為にキレイなままにしておいたのだろう。野盗は本当に馬鹿だな。俯いたままで一言も発せず、唯々時間が過ぎるのを待っているようだ。
「助けたのは彼処の三人だ。礼は彼奴等に言ってやれ」
「…貴方。何処の家から依頼されたの…?」
黙りの貴族が口を開けば家の事、か。
「冒険者の依頼に家名を出すか?アズよ?」
「え?まあ、出しませんね。そもそも依頼なんて受けてませんし、依頼が出てるかも怪しいですね」
「と言う訳でタダ働きだ。気負わず助かった事に喜んどけ」
「私を売れば…お金になるわよ?」
「卑屈だな。金はあるから心配すんな。バルタリンドまで送るから、後は現地の貴族にでも借りを作るんだな。ハイネルマールなりメリクヒャーなりな」
「貴族にお詳しいのですね」
護衛なのかメイドなのか、俺から貴族を守るかのような仕草の女が訝しげな目を向ける。
「メリクヒャーはギルドのサブマスだ。ハイネルマールは仕事の付き合いがあって懇意にしてるってだけの話さ」
女達と少年隊が回復し、揃って外に出た。この穴も閉じておかないとまたアジトにされるのでしっかり蓋しとこう。女達はこれからの移動を思ってか表情が暗い。俺は有り余る雑木で箱を作る。移動は浮かせて行くから足元は橇にした。椅子とクッションも設置して、十人乗りの橇型荷車が完成した。それを魔道車に牽引させる。
「貴方は魔導師でしたか」
「唯のスケベ男だよ」
「オレの時は人外とか女好きって言ってたよね」
「はいはい乗れ乗れ。街に着いたら服と飯。アズと少年隊はギルドで報告だ。昼飯には間に合わせるぞー」
魔道車と荷車に乗り込んで空に上がる。当たり前だが荷車の女達が驚いてるな。風が当たるし怖がらせないように速度を落としてバルタリンドに飛んでった。
門兵に奴隷売買と間違われ、結果全員でギルドに向かう羽目に遭う。ギルドにはカロも居るし、話は通しやすいか。
「カケル様、この女達は…まさか!?」
「カロさんや、お前もか」
階段を降りて来たカロにまで疑われたが、アズが説明して誤解は解けた筈だ。女達は四人がメイド兼護衛、一人が四人を雇っている貴族、三人は平民だそうで、会議室にて各々お礼を言われた。
「メリクヒャー嬢、不躾な申し出ではありますが…」
そんな中、口を開いたメイドの代表はカロに泣き付くようだ。しかしカロ邸には俺達も厄介になってる訳で、カロは渋い顔をしていたが、俺が湖の島に行く事を念話で伝えると寂しげな顔で了承していた。愛い奴め。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
暗殺者から始まる異世界満喫生活
暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。
同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。
ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。
新たな生活は異世界を満喫したい。
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる