女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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津波

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 俺が人だからか、それとも龍に備わる特性か。部屋の中がむわっとして粘膜がしょぼしょぼする。正直あまり居心地が良ろしく無い。人であれば熱と毒で死んでる所を、《龍化》して、更に《耐性》マシマシにした事でこの程度で済んでいると思われる。
暑いのはともかく、目と喉の痛みは何とかしたい。ネーヴェに作ってもらった大きい浄化の属性魔石を取り出すと、魔力を込める前から発動して光り輝いた。その途端しょぼしょぼは治まり、蒸し蒸しした部屋となった。この為に作ってもらったのでは無いのだが、一先ずこれで寝る事が出来る。
野生を捨てた姿で寝転んで、重い球をにぎにぎしながら口の中に魔力を溜めて行く。明るい内に何度も練習した甲斐もあり、金属並みのカッチカチに固める事が出来た。密度もリュネが呼び水にくれた物よりみっちりミチミチだ。ソイツを大きくしたり粒々にしたり、ガムっぽくしてくちゃくちゃしたり、色々やって朝になった。この姿だと意識的に寝るつもりにならないと、あまり眠くもならんのだ。


「カーケールさぁ~ん。朝ですよぉ~」

「ねーてーなーい」

 朝食の時間を告げに来たのか、リュネが転移して来た。

「おはようございます。浄化されてますねぇ」

「喉と目がしょぼしょぼイガイガして居心地悪かったからな」

「確かに。人の子は入る事もままなりませんね。朝食が出来ますので、島に戻りましょうか」

「そうだね。その前に、一発撃ってどのくらい使えるか見てくれる?」

「はぁい。お外に行きましょう」

浄化の魔石を回収し、リュネを乗せて外に出ると、なるべく島から離れた方向に向けて口を開く。
エネルギー充填百二十パーセント!、とか言いたいけど口開けっ放しなので言える筈も無く、口一杯に溜まった魔力を吐き出した。目標は千ハーン先の海上。真っ直ぐ飛んでく魔力の塊は海水を抉り、爆発しながら深く沈んで行き…、海面を盛り上げ波を起こした。

「あ、ヤバくねこれ?」

「波ですよね?」

「津波だと思うんだ…」

「津波、ですか?」

「今すぐ帰って、島とウラシュ島とバルタリンドの海に結界張ってくれ。人死にが出かねん」

「は、はい。分かりました。姉達と手分けして当たります」

俺を置いて一足お先に島に転移したリュネを見送り、自分が災害になった事を実感した。爆心地から押し寄せる波が少しずつ大きくなってくのが分かる。飛び上がり、島に帰ろうとして思い…出した。

キネイアッセンが残ってた!

試した事無かったけどスキルとしてなら結界は使える筈だ。超高速で飛びながら自分の周りに《結界》を張って試しながら移動した。大丈夫、水深が浅くなる程進みは遅くなる。アレに追い付いた時点で間に合うのは確定だ。《結界》自体は成功してるので、後は何処まで範囲を広げられるかだけだ。

 津波を追い越しキネイアッセンの軍港迄飛んで来た。人の子は《洗脳》されてるので普段の生活を営んでいるが、トカゲ達は飛び回って何かが来るのを察してる。港の前で背を向けて、魔力をねりねりスキルと一緒に《結界》を構築した。
海の一部と街全体を囲んだ壁の高さは凡そ百ハーン。ドーム状には出来なかったのでこれ以上の高さだと水没するが、その時は水を《集結》させて何とかしよう。飛び回っていたトカゲ達が着陸して此方を伺っているが、もしかして俺だと分かるのか?空に留まり波が来るのを待った。

 遠くにシャバシャバが見えて来て、何となく水位も下がったか?俺の《結界》がどれ程の効果があるのか。飛んでる時の風圧は完全に防げたが、果たして水にはどうなのか…。じわじわ迫るシャバシャバに正直不安しか無い。
シャバシャバが大きさを増して波となり、結界に打ち当たる。

バシャ……バシャ……

あれ?威力、そんだけ?何時かテレビで見た本物の津波はこんなモンじゃ無かった。黒い波がドバーーって、しない。白く濁っては居るがバッシャンバッシャンしただけだった。
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