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夜行性
しおりを挟む肉を焼く煙で、肉となった者の仲間達が寄って来るのを倒しながら交代で飯を食う。お手頃価格の冒険者達が、一匹のブフリム相手に寄って集ってボッコボコにする様はあまり美しくない。当然弥一もその中に居て、うーうー唸りながら両手で構えたミドルソードで突進してた。
「うう…、食って直ぐ動くと腹痛くなるんだぞ…」
「加減して食わないとな。怪我無く戻って来れて偉いぞ」
「痛いのは嫌なので飯時に来るのは辞めてもらいたいぜ…。俺の肉何処?」
お前の胃の中だろ。今俺が焼いている薄焼き肉を薄ソーサーに巻いたのは明日の朝飯と昼飯だ。
「スープならお代わりしても良いぞ。体を休めて次の戦闘に備えよ」
具増し増しのスープをくれてやり、どんどん肉巻きを作って行った。
不寝番が見張りを始めた後もポツポツとゴーラやブフリム、ウォリスがやって来る。荷車とホルストの周りには《結界》を張ってあるので馭者はぐっすり寝ているが、俺達は中々寝られない。俺達ゃ寝るから勝手にやっとけ、とはいかんからな。三四番と五六番が交代する。惰眠の続きは明日、荷車の中でするしか無い。
「貴方、ちょっと」
交代間際のヘンプシャーが声を掛けて来る。背中にダガーを隠し持って。
「警戒し過ぎだ。で、何だ?」
「貴方、何かしてるわよね」
「色々してるが、どれの事を言ってるんだ?」
「色々よ。こんなに早く着くなんて思っても無かった。普通は十五日以上掛かるのよ?それに、敵が同じ所からしか来ない。コレって貴方の仕業よね?」
「敵?それは偶々だろ。一ヶ所から血の匂いが溜まってんだし」
「ん…」
格下共を甘えさせるのは良くないので荷車やホルストには《結界》を張って手心を加えたが、それ以外は飯を作ってやった程度だ。それに関しては納得したようで、小さく頷いた。
「移動の速さは道中に敵が出なかったからだが、それは俺じゃない。俺は荷車を軽くして、ホルストを《強化》してやっただけだ」
「通りで揺れが少なかった訳ね」
「街から此処迄の区間ってさ、平地だと殆ど敵が枯れちゃってんのよ。だから此処迄は助力させてもらったよ。早く終わらせたいしな。明日の移動からはゆっくり行くだろうから、メルタール迄往復六十日、仲良く頼むぜ?」
「…Bランクの力じゃ無いわね。何者よ」
「俺をAランクにしてくれる奴は、まだ王位を継承して無いんだ」
「王子派閥だったのね」
「派閥?此処の王子じゃ無いぞ?」
敢えて言うなら公女派か?
「それじゃあ何処なのよ。北の小国は姫しか…」
「ノースバー。北の大陸だよ。そろそろ寝とけ」
考え過ぎて寝られなくなるのも可哀想だし答えを言ってとっとと寝かせてやる。それにしても北の小国か…、良い事を聞いたが、正座で説教される未来も見える。我慢だな。
三四番が付き添いと共にテントに籠り、俺は鉄板に薬缶で茶を沸かす。時折ウォリスが寄って来るが、放置してあるブフリムを咥えると、後ずさりして帰ってく。お掃除ご苦労様。
「翔、眠い」
「寝たら冷水掛けてやる。お前夜行性だったろ」
眠さに耐える弥一が口を開く。他の奴等も体を動かしたりして睡魔と戦っているようだ。
「生活リズムが太陽に支配されたわ。明かりが無いだけで此処迄健康的になれるとは思わなんだぜ」
「何よりだ。所で人は殺れそうか?」
「……殺るっきゃ無いだろ。もしかして、コレでチュートリアル卒業か?」
「何処迄がチュートリアルかは分からんが、確かにコレで一区切りだな。ダンジョン潜るのは金掛かるし」
「けどよ、護衛依頼もあるんだろ?」
「客との相対と長期遠征。で、依頼完遂。自由な冒険者には難しいだろうな」
「翔パイセンはどうやって騙晦かしたんだ?」
「移動中に貴族に出会すテンプレだな」
「成程。テンプレのお陰で依頼者の友好度が高い状態になったってか。もしかしてそれがさっきヘンプシャーさんと話してた王子か?」
テンプレと言うだけで流れが解る弥一であった。
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