女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

もる

文字の大きさ
1,143 / 1,519

鼻患い

しおりを挟む


 夫人に繋ぎを付けてもらい、騎士の代表を交えて設営についての提案を出す。

「森を切るのはならんのか?」

「敵意の無い動く木が、痛くは無いが殴り掛かって来ます。無用な殺生はハイネルマール様の不利益となります故、控えるべきでしょう」

「カケル様、私共はその間、宿舎を間借りすればよろしいので?」

「いえ、車の中でお待ち頂くのが良いかと。男所帯の宿舎等、淑女の耐え得る物ではありますまい」

「ふっ、得心した。出来るだけ急がれよ?奥方様方の鼻を痛めたくは無い」

「鼻患いは嫌ね。カケル様、頼みましたよ?」

「はっ」


 ホルスト車を移動させ、水場には俺と、弥一を含めて野次馬多数。冒険者は好奇心の塊である。

「翔ー、はよー」

妻みたいな口調で弥一が煽る。こんにゃろめ。

「皆、足元に気を付けろよー」

「「「おおーっ」」」

元気なモンだぜ。
水場から森の外に向けて、煉瓦で床を張る。下草には悪いが巨木の根を踏ませる訳にはいかんからな。ざっと百平方ハーン程を床にして固めると、ズカズカと床に上がり出す野次馬共。ドタドタすんな。
床の端から壁を生やし、大部屋を作ってく。ドアは作るのが手間なので、入口の正面に壁を立てて目隠しとした。屋根は外側に下がるよう一枚成りで乗せて固めてこれで良し。馭者と冒険者の部屋とする。
大部屋の反対側は向かい合わせで部屋組みし、屋根は一体化させた。真ん中は夫人達、周りは騎士達の部屋として、防御性を高めたつもりだ。
一番奥には風呂。男女別にしないと飲む奴居そうだから面倒だが二つ作り、その正面はホルストの厩舎にトイレを作る。《浄化》のクリスタルを使った高級品だ。
中央は食堂兼調理場。テーブルに椅子と、調理場セットを柱と屋根の下に置いたら終了だ。

「土魔法で此処迄出来るのか…」

「さすかけ~」「「「さ~す~か~け~」」」

止めんか。壁を殴ったりウロチョロする野次馬共を置いて報告に向かい、ホルスト車を搬入させる。

「見事だな」

「光栄です」

「施行の早さは言うに及ばず、守備に於いての考えも成されていて、カケル殿の心遣いが見て取れる。名付けるならば、オコン要塞であろうな」

「装飾も施せず、無骨な造りではありますが、お褒め戴き恐縮です」

実際には一オコンも掛かって無いが、四十五リット要塞よりは語呂が良い。騎士の代表と別れると、厨房を見て動線を考えるメイド達に合流し、夕飯の支度を始めた。

「カケル様に感謝を」

「「「感謝をっ」」」

 夫人の音頭で食事が始まる。感謝するなら作った人に…俺も混じってたか。食べよ食べよ。今夜は夫人達も一緒に食事を摂る。確実に敵が居ない上に屋根も有り、騎士に席を囲まれて、安全が確保されているからだ。俺達冒険者と馭者は外周で食うよ?被雇用者だし。

「くーーっ、肉が厚いぜっ!」

「スープも肉がゴロゴロしてやがる」

「カケルさん、今迄肉ケチってたっすね!?」

「逆だ。野菜が少ないんだ。それに移動中は時間が惜しいから薄切りにしてただけだ」

ギルドから支給された野菜に、夫人達の手持ちの野菜が底を尽こうとしている。今は俺の乾燥野菜があるが、後十五日、七十九人にホルストのオヤツを含めるとどうしても足りない。

「肉さえあれば、それで良い」

「お前は俺の妻か」

「野菜は摘めるだけで良いっす」

「上手い事言ったつもりか。明日は出掛けて来るからな。皆良い子で留守番してやがれ」

「一日中寝てますよ」

「「「俺もー」」」

「カケル様、お出掛けなさるの!?」

俺達のガヤを聞いてニーネンタールがお声掛け下さるが、端無はした いですぞ?お嬢様がお声高く在らせられてはなりませぬ故、此方から出向く。

「僭越ながら。野菜が尽きます故、街にて買い付けて参ります」

「カケル様ぁ」

「ニーネンタール嬢」

「ふふっ、ニーン。カケル様を困らせてはなりませんよ?」

「もうっ」

納得してもらう代わりに、今夜は施設でたっぷりした。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜

くまみ
ファンタジー
 前世は空手部主将の「ゴリラ」男。転生先は……筋力Eのひ弱な少年治癒士!?  「資質がなんだ!俺の拳は魔法を超える!……と、思うけど……汗」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  俺は五里羅門(ごり・らもん) 35歳独身男だ。硬派すぎて女が寄り付かず。強すぎる空手愛と鍛え抜かれた肉体のせいで不本意ながら通称「ゴリラ」と呼ばれていた。  仕事帰りにダンプに跳ねられた俺が目覚めると、そこは異世界だった。だが転生した姿は前世とは真逆。  病弱で華奢。戦闘力最低と言われる職業の「治癒士」(ヒーラー)適正の10歳の少年・ノエル。  「俺は戦闘狂だぞ!このひ弱な体じゃ、戦えねぇ!  「華奢でひ弱な体では、空手技を繰り出すのは夢のまた夢……」  魔力と資質が全てのこの世界。努力では超えられない「資質の壁」が立ちふさがる。  だが、空手馬鹿の俺の魂は諦めることを知らなかった。  「魔法が使えなきゃ、技で制す!治癒士が最強になっちゃいけないなんて誰が決めた?」  これは魔法の常識を「空手の技」で叩き壊す、一人の少年の異世界武勇伝。    伝説の騎士、美少女魔術師、そして謎の切り株(?)を巻き込み、ノエルの規格外の挑戦が今始まる!    

処理中です...