女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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鼻患い

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 夫人に繋ぎを付けてもらい、騎士の代表を交えて設営についての提案を出す。

「森を切るのはならんのか?」

「敵意の無い動く木が、痛くは無いが殴り掛かって来ます。無用な殺生はハイネルマール様の不利益となります故、控えるべきでしょう」

「カケル様、私共はその間、宿舎を間借りすればよろしいので?」

「いえ、車の中でお待ち頂くのが良いかと。男所帯の宿舎等、淑女の耐え得る物ではありますまい」

「ふっ、得心した。出来るだけ急がれよ?奥方様方の鼻を痛めたくは無い」

「鼻患いは嫌ね。カケル様、頼みましたよ?」

「はっ」


 ホルスト車を移動させ、水場には俺と、弥一を含めて野次馬多数。冒険者は好奇心の塊である。

「翔ー、はよー」

妻みたいな口調で弥一が煽る。こんにゃろめ。

「皆、足元に気を付けろよー」

「「「おおーっ」」」

元気なモンだぜ。
水場から森の外に向けて、煉瓦で床を張る。下草には悪いが巨木の根を踏ませる訳にはいかんからな。ざっと百平方ハーン程を床にして固めると、ズカズカと床に上がり出す野次馬共。ドタドタすんな。
床の端から壁を生やし、大部屋を作ってく。ドアは作るのが手間なので、入口の正面に壁を立てて目隠しとした。屋根は外側に下がるよう一枚成りで乗せて固めてこれで良し。馭者と冒険者の部屋とする。
大部屋の反対側は向かい合わせで部屋組みし、屋根は一体化させた。真ん中は夫人達、周りは騎士達の部屋として、防御性を高めたつもりだ。
一番奥には風呂。男女別にしないと飲む奴居そうだから面倒だが二つ作り、その正面はホルストの厩舎にトイレを作る。《浄化》のクリスタルを使った高級品だ。
中央は食堂兼調理場。テーブルに椅子と、調理場セットを柱と屋根の下に置いたら終了だ。

「土魔法で此処迄出来るのか…」

「さすかけ~」「「「さ~す~か~け~」」」

止めんか。壁を殴ったりウロチョロする野次馬共を置いて報告に向かい、ホルスト車を搬入させる。

「見事だな」

「光栄です」

「施行の早さは言うに及ばず、守備に於いての考えも成されていて、カケル殿の心遣いが見て取れる。名付けるならば、オコン要塞であろうな」

「装飾も施せず、無骨な造りではありますが、お褒め戴き恐縮です」

実際には一オコンも掛かって無いが、四十五リット要塞よりは語呂が良い。騎士の代表と別れると、厨房を見て動線を考えるメイド達に合流し、夕飯の支度を始めた。

「カケル様に感謝を」

「「「感謝をっ」」」

 夫人の音頭で食事が始まる。感謝するなら作った人に…俺も混じってたか。食べよ食べよ。今夜は夫人達も一緒に食事を摂る。確実に敵が居ない上に屋根も有り、騎士に席を囲まれて、安全が確保されているからだ。俺達冒険者と馭者は外周で食うよ?被雇用者だし。

「くーーっ、肉が厚いぜっ!」

「スープも肉がゴロゴロしてやがる」

「カケルさん、今迄肉ケチってたっすね!?」

「逆だ。野菜が少ないんだ。それに移動中は時間が惜しいから薄切りにしてただけだ」

ギルドから支給された野菜に、夫人達の手持ちの野菜が底を尽こうとしている。今は俺の乾燥野菜があるが、後十五日、七十九人にホルストのオヤツを含めるとどうしても足りない。

「肉さえあれば、それで良い」

「お前は俺の妻か」

「野菜は摘めるだけで良いっす」

「上手い事言ったつもりか。明日は出掛けて来るからな。皆良い子で留守番してやがれ」

「一日中寝てますよ」

「「「俺もー」」」

「カケル様、お出掛けなさるの!?」

俺達のガヤを聞いてニーネンタールがお声掛け下さるが、端無はした いですぞ?お嬢様がお声高く在らせられてはなりませぬ故、此方から出向く。

「僭越ながら。野菜が尽きます故、街にて買い付けて参ります」

「カケル様ぁ」

「ニーネンタール嬢」

「ふふっ、ニーン。カケル様を困らせてはなりませんよ?」

「もうっ」

納得してもらう代わりに、今夜は施設でたっぷりした。
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