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秘密でハメハメ
しおりを挟む午前午後、休憩地の手前迄走るのを続ける事十日。動けるデブこと弥一の体に異変が訪れた。
「お前、少しシュッとしたか?」
「そう言えば顎が見えるぞ」
六組の皆が言うのでそうなのだろう。
「元々あっただろ顎は」
弥一は反論するが、野郎が野郎の顔を凝視なんてしないもんな。俺も気付かなんだし。それでも十日も走れば脂肪も燃焼するか。本日夕方、時間的にはあと少しでメルタールに到着すると馭者が言う。
「街に着く迄に痩せられて良かったな」
「ん?娼館行く金なんてねーぞ?」
弥一は食欲より性欲を取るのか。これは末期だな。
「金は討伐した素材で幾許かにはなるべ。まあ、弥一の場合、買い食いで終わるだろうけどな」
「ヤイチは食い溜めするのか」
「女買える程貰えれば良いっすけどねー」
「荷車とかの整備に三日掛かるって言ってましたよね。それ迄俺達は休みですか?」
「だな。依頼を受けても良いが、土地勘無いだろ?街を散策するのが精々だろうな」
「夕方着くから正味二日か。翔はどうすんだ?」
「着いてから考えるが、お土産は買わんとな。それに買い出しする事になるだろう」
「中々羽目を外せないんすね」
君等に秘密でハメハメしてたけどな。そんなこんな、俺達が駄弁っていると、横から斥候の騎士が追い越して、メルタールの門へと駆けて行く。先触れだな。
「翔、俺達も出るか?」
「残念な事に敵が近くに居らん。門前に着く迄待機だな」
「野盗、結局出ませんでしたね」
「草原地帯で昼間の移動なら仕方無いさ。この街道自体、そう言うのが来辛い所に作ってんだし」
稍あって、メルタールの門前に到着。夫人達との挨拶があるので一旦全員下車をして、お言葉と受け取り証を頂く。今回は突発で、現地での依頼受注であったが、受け取り証をギルドに持って行くとお金に換えてくれるのだ。騎士の代表であるデヌーロが俺を呼んだのに、何故かヘンプシャーがしゃしゃり出てデヌーロの顬をヒク付かせる。目力が飛んで来るのをアイコンタクトで返しその場は済ませる。
「カケル殿、それではこれにて」
「旅のご無事を」
夫人一行を見送って、俺達も門を潜る。そしてそのまギルドへ入り、事務処理を済ませる。夕方の混み合う時間に三十六人も追加されたら受付嬢の顔も曇るし、買い取り嬢の目も濁る。
皆が受付けを終えると一旦お手頃価格達は解散となる。
「お前等、宿に泊まるくらいの金はあるんだろうな?」
「ギルドの安宿ならなんとか」
「そう思ってる奴はお前含めて三十人は居る筈だ。とっとと行かないと間に合わなくなるぞ」
「なっ!宿取れなかったら…」
「大部屋のある宿に行くのが安上がりだな。六人部屋なら十人は寝られる。ベッドは奪い合う事になるがな」
「皆、急ぐぞっ、翔またな!」
解体の支払いと護衛報酬は明日支払われるそうなので、今夜は寝るしか無いお手頃価格達。弥一の掛け声で外へと飛び出して行った。
で、俺達付き添いは会議室のような部屋に集まり護衛報酬を分ける。
「ヘンプシャー、ちと欲張り過ぎじゃあ無いか?」
「貴族の護衛を真っ当にこなしていたのは私と彼女達だけよ?配当が付くのは当たり前じゃない」
分け前の分配でダミヤンが異論を唱えると、ヘンプシャーは反論する。
「ヘンプシャー、お前のやり方じゃ敵ばかり作りそうだな」
「Bランクの貴方は分け前が少ないから文句を言ってるだけでしょう?口を挟まないでくれる?」
そう。何故か俺の目の前には金貨が一枚ぽっち。ヘンプシャーの言う通り、分け前の少なさに文句を言っているようにも見える。
「お前、カケルの飯食ってただろう!?」
「それは護衛とは関係無いわ」
「否、関係あるぞ」
俺の言葉に《威圧》を込めた視線を飛ばすヘンプシャー。
「護衛する事で食料の買い出しに行く事になったんだ。先ずはその金を貰わなくてはならん。勿論此処にある金貨一枚じゃ全然足りないからな?」
疑い眼のヘンプシャー。金銭感覚無いのかな?
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