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覚悟しろ
しおりを挟む「バッキャローッ!!ガキ相手にちんたらしてんじゃねえーっ!引っ掻き回して打ち殺せええっ!!」
「足を止めりゃあこんな雑魚共ゴミ以下だっ!根性入れて働きやがれええっ!」
何方も似たような事を言う。
突撃姿勢の野盗共が左右に散り散りになるのを止めようとして、空いた中央が薄くなる。仕方無い事だ。
「まだまだーっ!」
そこに弥一が壁を生やす。直ぐに二手に分かれて左右の戦列に加わる野盗。此奴軍人崩れか?
弥一は手詰まり。真っ直ぐの壁を建てて、一部を削るのが今の限界なのだろう。一方、敵は配置を変えて片方に戦力を集めるようだ。しかも女が多い側。これでは各個撃破されるのは此方になってしまうぜ。
「カケル、アレは彼奴等の手に負えんぞ」
汗タラタラのダミヤンが寄って来る。
「戦いたいだけじゃ無いのか?」
「俺は盾役だ」
「なら口を動かそうな」
指示が追っ付かない冒険者達に綻びが出たのはその時だ。
「いやっ!」
「ぎひっ!女だぜ!?殺され…」
「え?」
「どうせ全員殺すんだろ。ちゃんと戦えー。お前も迂闊だぞ。もっ回行ってこーい」
捕まった女を《転移》させ、注意して送り出す。
「何だ、今の…」
「良いから指示出せし。出さなきゃ俺が出しちゃうぞ?」
「お、おう…」
「ダミヤンから指示を代わった!上手い事殺って凱旋だ!」
「「「おうっ!」」」
「弥一、ドラまたの魔法だ!皆時間を稼げっ」
「ふぁっ!?詠唱長いぞ、覚悟しろよーっ!…四界の闇を統べる王、汝の欠片の…」
弥一の詠唱が始まった。両翼の敵から丸見えな位置に立ち、腕を組んだり上げたりして魔力増加版の魔法を唱え始めた。
「そんな壁なんて粉々になっぞ!下がれ~」
「んなっ!?」「彼奴そんな魔法使えんのかよ!」
「敵が下がった!俺達も下がるぞーっ!」
敵が薮迄逃げるのを見て、お手頃価格達も弥一の後ろ迄逃げて来た。敵は弥一目掛けて飛び道具を放つが、前面に壁があっては当たりはしない。敵が見えなくなって直ぐにこっそり最初の壁の裏に隠れてるしな。
「怪我した奴は今の内に直してもらえー」
「…等しく滅びを与えんことをっ!」
「「「…………」」」
僅かな静寂。そしてドンッと大きい音と阿鼻叫喚の声。
「やったか?」
「まだ少し残ってんな」
弥一の問いに答えると、正面の壁を消してやる。
「一体、何が…」「魔法はどうした?」
「敵は!?…はぁ?」
そこには厚い煉瓦の板が倒れ、敵の殆どを押し潰していた。
「残党狩りだ!蹴散らせーっ!」
「「「おおおっ」」」
生き残りはたったの二人、完全に戦意を絶たれた敵に抵抗は無かった。
「はあ!?嘘っパチだって!?」
瓦礫や壁を回収し、怪我した野盗を縛り上げ、死体を一ヶ所に寄せて、此方の怪我人をケアしたら、弥一と二人質問攻めに遭う。
「どうせ彼奴等魔法なんて知らんだろうしな」
「実在しない魔法を使えって言われて、時間稼ぎしろって気付いた訳よ。で、敵が狭い方行ったから、後は後ろからバタンッてな」
「殺れなくても動きを止めて、頭数を減らせれば良かったしな」
「流石に俺にはそんな指示出来ん。知り合い同士ならではと言った所か」
「しかし…、よく即興であんな長い詠唱出来たものだ」
ダミヤンは俺と弥一が依頼初日から慣れ親しんでいた事を、気にもして無かったみたいだ。そしてムームードは詠唱が気になる様子。
「小説…物語の一文にあってな。格好良いから、読んだ奴は皆覚えるんだぜ」
「四界の王に、昏く紅い、偉大な者、か…。確かに心躍る節だ。複数の高位精霊の力を借りるような物だしな」
高位精霊か…。
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「そうか。自重する」
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