女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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暖簾に腕押し

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 地上に降りて窮地を脱したリアが合流し、スキルでこっそりしながら夜の城下街を歩く。先ずは何処からと言う話になったが、リアの提案で兄から救出する事になった。怪我は治したと言え気が気ではないだろうし、次代に必要な存在だからだ。

「兄は中立派、悪く言えばどっち付かずの方でしたがこと内政に於いては無くてはならぬ方です。貴方様がカケラントの王で無ければ、とも思いましたが」

「内政は大変だからなあ」

「うふ、ですよね」

程無くして《白昼夢》で見た屋敷に着く。

「どの者の屋敷かは存じませんが、貴族である事は間違い無いようですね」

「門を開けろ」

「「…はい」」

門前にて立ち呆けな門番に命令し、開け放たれた門を潜る。庭や玄関迄の通りにも何人かの兵士が居るが、皆門番同様に立ち呆けて居る。特に気にせずどんどん進み、玄関を開けた所で近くに居たメイドに命令した。

「兵隊を庭に、貴族は客間に、使用人達は厨房に集めろ」

「…はい」

メイドが動き出し、俺達も動く。地下へと続く通路は隠し扉になっているので《収納》で穴を開けて先へと進む。

「臭い」

「んん…」

地下下水道に降りて直ぐの部屋を開けると、マットに横たわる男が見える。

「気付いてるようだな。助けに来たよ」

「感謝したいが、誰の手の者か?」

「私です、兄様」

光魔法を灯して視界を得た男が、声の主に気付いて飛び起きた。

「まさか、カルメリアか!?」

「お久しぶりです。兄様も随分キレイなお姿になられましたね。貴方様、何かお召物を」

服なんて持って来て無いのでシーツサイズの雑木タオルを渡す。

「こうなる前の姿を見せてやりたかったぞ。貴殿だな?傷を癒してくれたのは。私はロデュローン。ロデュローン・ミラルダ・アフマクシアである」

「カケル・カリバだ」

「聞かぬ家名だが大儀であった」

「まだ始まったばかりだよ。助けを待つ者が居るのでね」

「父、か」

「女騎士の方が先かな」

「貴方様?」「カケルさぁん?」

「怪我してるのを軽くしか治して無いんだよ。コッチが優先っ」

「ならば私も行こう。此処に長居したくも無いしな」

「序に服を貰って行こうか。王子だしな?」

「気遣い痛み入る」

屋敷に上がって厨房へ。メイド数人に指示を出し、王子の服を見繕わせる。元の物は無いみたいだし、此処の貴族に上納する栄誉を賜らせてやろう。

「兄様。どの者に囚われたので?」

 服を着て出て来た王子にリアが問う。捕まって、最初に見た貴族はネイゲナー伯爵であると言う。上の階にはもっと沢山貴族が居ると言うと、ならば見てやろうと言う事になり、貴族共の屯する客間へとメイドに案内させた。

「貴方様」「何処見てますかぁ?」

「前だよ、前」

「カケル殿と言ったな。カルメリアと仲睦まじい様子だが…」

「兄様、カケル様は私の夫となった方です」

「…唯の家出かと思っていたが、駆け落ちして居たのか。では、其方の婦人も…」

「妾のリュネでぇす」

「妾が正妻と並び立つのか」

「俺はともかく、リュネの名を呼ぶ時は様を付けろよ?やんごとなき方だからな」

「…そのような方を妾にし、何故公女風情が妻なのか」

「兄様、私、残念ながら正妻でも御座いません。三番目、です」

「訳が分からん」

「単純に順番だよ」

「順番は大事ですよ~」

雑談しながら客間に着き、中に居る貴族共と面通しをする。

「貴様っ!よくもっ……どうしたこれは」

掴み掛かる王子に対し、暖簾に腕押しな状態の名も知らぬ貴族。あまりの呆気なさに王子が動揺した。

「スキルで腑抜けにしてあるんだ。詳しくは冒険者の秘密って事で」

「貴殿、冒険者だったのか」

「顔を覚えたら次へ行こうか。粛清は後でも出来るしな」

「うむ。決して忘れん」

アジトの屋敷から、再び徒歩で城へと向かう。都会な公都とは言え夜になれば道行く者の姿は無い。違う通りではどんちゃんしてるのかも知れないが、城へと続く通りは静かなモンだ。




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