女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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三分では無く四分

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「暫くです。突然の訪問をお許しください」

「貴方、カケル様ね?立派になられて嬉しいわ。とにかく皆様、此方へどうぞ」

庭にいた大所帯を屋敷に招き入れるこのご婦人は、エルシド・ゴモランの夫人である。夫人は皆が中に入るとハークとアルアへ膝を折り、長い長い挨拶口上を述べる。これ外でやったらぐったりするよな。それくらい長かった。

「カケル殿、それでは我等は城へ参ります」

「危ない目に遭ったら駆け付けますが、気を付けて」

「お待ちになって」

早速行動に移すブルランさんに夫人は待ったを掛ける。

「お車も無しに行かせるのは良くないわ。用意させるからお待ちなさいな。それに、お二人にも相応のお召し物を身に着けて頂くべきね」

「これは…、私とした事が、少々気を急いていた様で御座いますな。ゴモラン夫人のお言葉とお気遣い、心より感謝致します」

要するに、喪服に着替える間に車を用意してくれると言う提案だが、ブルランさんは夫人の顔を立てたのだろう。二人とメイドとブルランさんはゴモラン家のメイドに連れられそれぞれ着替えに行った。

「カケル様、お久しぶりね。其方は奥方様かしら?」

「此方はグリューネワルター様。俺の良い人ですよ」

「あら、羨ましい事」

「リュネでーす」

「エルシドの妻のトリエーレと申します。仲良くして頂けると光栄で御座います。して、カケル様。だいぶ急いで参られたのね」

「親の死に目に会え無かった訳だしな。それに次の王がなあなあで決まってしまうかも知れないし」

「そうね、貴族達がピリピリしているわ。とにかく座ってお茶でも如何?」

 立っているのも何なので、皆で座ってお茶にする。お茶を持って来たメイドにお土産の甘い物を渡し、お茶請けにした。

「砂のように砕かれたコレはまるで砂糖のようね。甘くて美味しいわ」

「材料は違うけど似たような物だよ。お口に合って良かった」

使ってなかった氷砂糖を少し粗めの粉にして、一口に切った芋羊羹の表面に塗布してみた。外はシャリッと、中はしっとり。もりもり食べちゃう子達には作ってやらんお菓子だ。

王が死んで、その日の内にテンテリオンを煽ぐ一派が名乗りを上げたと言う。ハーラデーは街から離れていたが派閥の商人により戻っている最中。各貴族には使いが送られ名乗りの準備を整えていると夫人は纏めた。

「随分と訳知りで」

「貴族は口で治めるものよ。けれど三人揃ったら、そうもいかなくなるかしらね」

「貴族が三分するからね」

「それもあるのだけど、単純に外へ出辛くなるの。女同士は仲良しでも、人質に取られたり、色々とね。そうそう、当家は何方にも付かない立場なの。だから三分では無く四分ね。どの方が王に成られても国を守るのは変わらないって、当家の主は言っているわ」

「無理に押し掛けてしまってすみません」

「大丈夫よ。どの方が居らしても対応は変わらないから。国を守る家の者が、贔屓をしてはいけないわ」

ハーク達が喪服に着替えて戻って来ると、挨拶もそこそこに、既に用意されていたゾーイ車三台に乗って城へと向かって行った。

「よく三台も用意出来たね」

「これで父も貸しを返せたでしょう」

「父?ああ、寄親の」

「ええ。ドラゴンを丸ごと献上させてしまった事に心を痛めてね、何時かお詫びをと願っていたそうなの」

確かにあの時はかなり不利を受けたな。ランク上げられなくてダンジョンに行けなかったし。何より遺憾なのはハークやアルアがちっとも食べられなかった事だ。その後ブルランさんと有志達のお陰で食べる事は出来たが、掃き溜めから鶴とはこの事かと思った記憶が蘇った。

さて、ハーク達が出払った今、後は彼等に何か無いか監視するだけだ。《感知》で見えるので何処に居ても良いのだが、夫人が是非にと言うので甘えさせてもらう。離れに通された俺達は、昼迄の時間をベッドで横になり過ごした。



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