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王選
しおりを挟む「商いは辞めましたが、代わりに仕官先が決まりましたよ」
「仕官?まさかギッツか!?」
トリントンよ、流石にそれは浅慮だろう。ギッツに行くならこんな所で公には出来ないし、此方に攻め入る支度で忙しかろうよ。
「まさか。南の海を越えた先、カケラント国に参ります」
「南の海…」「ヒズラーでしょうか…」
またもヒソヒソやり出す取り巻きだが、此奴等の事はスルーで良いだろう。
「良し。三方気持ちは固まったようだな。国葬前だが王選を始めてしまおう」
トリントンはとっとと楽になりたいのか、葬儀後にやる予定の王選を繰り上げようと提案する。
「俺に異議は無い」
「分かったよ」
就職先が決まったハーラデーに異論無し。それを見たハークもそれに続いた。
「ちょぐっ」「ばっ、ばばっ」
三人がノって来た所に水を差すべく声を荒らげた二人は、リュネによって動きを封じられた。多分だが、俺がやった感じになってる。二人の目がそう言ってるし。
「私は父の跡を継ぐ。よって継承権を放棄する。何より私は宰相と成る可く学んで居たのだ。王になる等とんでもない事だ」
「俺は他国へ行く身。継承権は放棄させてもらおう」
「では、継承一位のボクが父上を継ぐよ。後見人は聞いたね?」
「はい、ハーク様」
「ハーク様を王と認め、忠誠を誓いまする」
「ぐ…ぐぐ…」「ぶぎ…」
「リュネ」
「はぁい」
《威圧》が解かれた二人はドバッと汗を流しその場にへたり込む。
「メリトロ侯、バーン伯。ご回答を」
「ぐはっ、ぜぃ…はぁ……」
「げっほ、はっ、はぁっ」
ブルランさんの問い掛けに荒い息で返す事しか出来無い二人は、メイドから差し出されたお茶を煽る。
「こ、こんな事、許されませんぞ…」
「儀式に則って行う物でありましょうに」
「侯爵殿。国葬前に王権を主張する者が集まったのならば、先に筋を通しても構わんだろう?それに俺は葬儀が終わり次第国を出る。出る国の事を話し合うのは時間の無駄であるからな、葬儀後に王選をするとしても俺は欠席させてもらうぞ?」
「権利を放棄した者は王選に参加する事叶わず。であれば私達兄弟は王選には出られん。アルアイア嬢に父上、それにまだ幼いスティマイト様もだ。ハーク様お一人しか居られない王選を、何故侯達は引き留めようとする?」
「ひ、引き留めよう等とは」
「そうですともっ」
「いいや、時間稼ぎ、でしょうな」
取り巻きの声を止めて割り込んだのはエレデリマ大司教。
「貴殿等、ギッツと繋がっておりますな?」
「お前こそが繋がっとるでは無いか!」
「左様。されどギッツが片方だけに肩入れするとは考えておりますまい?誰が王と成られても攻め入るつもりなのですからな。ハーラデー様が大アトールから消えた今、侵攻を早める算段を弄しておりますでしょうよ」
「時間を稼いで王選をさせたとして、国葬で集まった貴族を一網打尽にでもするつもりか?侯爵、答えるのだ」
トリントンの問いに、メリトロは答えられず押し黙る。バーンは震えて動けなくなっているようだ。それもそうだろう。公爵の息子は王戚である。良い血を掛け合わせた結果の子だ。その子が赤く輝く魔力を放って威圧している。伯爵程度ブルっちまうのは当然である。この場でそれに耐えられない者はこの二人だけであり、ハーラデーが眉間に皺を寄せている程度であった。
「沈黙は是。でよろしいのでは?」
目付きの悪いハーラデーが提案し、トリントンとハークはそれを支持した。
「二人を特別牢へ」
「「はっ」」
ブルランさんの掛け声でメイドが動き、二人を後ろ手に縛り部屋を出る。
「私も牢へ行こうかと思います。誰か案内頼む」
「大司教、貴方には仕事が御座いますぞ?」
「仕事…何なりと」
「王の最後を送り、最初の王を迎える仕事。貴方で無く誰が為せると言うのです」
「……その栄誉、賜りましょう」
「よろしくね、司教」
エレデリマはその言葉に涙を流し、部屋を後にした。
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