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酷い国王
しおりを挟む「ふう。これで漸く本題に入れるな」
取り巻きが居なくなり、息を吐くトリントンが切り出した。
「ギッツの事ですね?」
それが残ってたか。二人共、自分が起こした事では無いのに責任を果たさねばならんと言う事に眉間に皺を寄せ目を伏せた。流石兄弟、動きが何か似ているな。
「ねえ爺や、ギッツ王国はボクが王になっても攻めるつもりなのかな?」
「引くに引けぬ、と言う事もありましょう。戦費が無駄になったとあれば民の信が離れ兼ねませぬ」
「ハーク様が王となって引き返したとあれば笑い草でありますしな。それに奪われた大アトールも取り戻さねばならん。それは兵の士気に関わる」
「ハーラデー様、それは誠に御座いますか?」
「うむ。内部の兵は俺の知る限り全てギッツの者であったよ。街の方迄は知らんがな」
「カケル殿は如何に」
「俺はどれがどっちの兵か分からんから何とも。参考にならずすみません」
「ゆ~~っくりぃ、寝てましたもんねぇ~」
「寝たのはハーラデーを助けた後だ」
「ハーク様。戦支度をせねばなりませんな」
ブルランさんの声にハークは言葉を失う。俯いてしまったハークは優しい子だ。だが王として、やらねばならぬ時がある。
「ハーク、人が死ぬな」
「うん…」
「誰を殺し、誰を生かす?」
「そんなのっ」
「お兄様、戦いは数だけではありませんよ?」
「ああ。シュルデン先生の授業だね。あれ口癖なのかな。みんな理屈倒れとか机上の空論って言ってたけど」
「それを補うのが魔法で、スキルなのです」
「俺も受けたな」「私もだ」
貴族の子女は皆分かる話らしい。名物教師ってヤツなのだろうな。俺には分からん。
「カケルよ、貴殿ならどう戦う?」
「あ、ボクも聞きたい!」
「えー、俺かぁ…」
「お兄様、皆様、カケル様のお力は頼らぬのが良いかと」
ハーラデーは俺に戦略を聞きたいみたいだが、冒険者の戦いは兵士の戦いと違うだろうし、どう答えたものか。更にハークも身を乗り出してワクワクしていらっしゃる。それをアルアが制止する。
「カケル様がこの国の王であればカケル様が出張ってチョチョイとすれば片付きます。ですが此処はお兄様の国。お兄様が王として対処せねば、最悪カケル様の傀儡と言われ兼ねません」
「…攻めて来ないギッツ、みたいなものであるな」
「よせやい、自分の国すらノータッチなのに」
「酷い国王だ」
「兄上、俺はこの酷い国王に雇われました」
ジト目を向けたトリントンの目が更にジトッとする。しかしチョチョイか…。
「ああ、そう言う事か」
「はい。カケル様抜きで、私共だけで、この国の力だけで解決せねばなりません」
「お手並み拝見だな。リュネは手伝うか?」
「うふっ、私は魔法を教えるだけで~す」
スキルも教えてんじゃね~か。
「手伝いが要らんのなら俺は一度家に帰るかな」
「え!?帰っちゃうの!?」
「帰るのは良いが、俺は一人ではカケラントには行けないぞ?」
「安心してくれ。二日程したら戻るから」
戦争が終わる迄放置なんてしないぞ?家族サービスしないとあっちも不満が溜まりそうだから一旦帰りたいってだけだ。仕事も休んでるしな。
「あの、カケル様…」
「何だい?」
やはり俺が居ないと寂しいか。そうかそうか。
「あの、甘いの、くださいまし…」
「ボクもっ」「俺にも」「私も頂きたい」
そうですか…。雑木で、蓋の出来る大きめのお椀を拵えて、中に煎餅を詰める事四杯。ジト目のメイドに残り物を箱毎渡して残り二箱。
「まだありますよね~?」
「カケル…、ボクの事、嫌いになっちゃった?」
「私、カケル様の妻として、耐える日々を送るのですね…」
「ハークとアルアんトコのメイド達にあげる用なんだよ。世話になったゴモラン家にもな」
「流石カケル様です」「カケル大好きーっ」
素早い掌返しである。何方にしても足りなくなったので増産せねばなるまい。またリームに手伝ってもらおっと。
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