女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

もる

文字の大きさ
1,517 / 1,519

城勤め

しおりを挟む



「な、アルア様、お帰りなさいませ」

「ち、カケル様いらっしゃいませ」

「むぅ、お茶を用意致します」

 俺を刺せなかったのが悔しいのか、言葉の棘を刺しに来るメイド達。そんな事するなら此方にも考えがある。

「あ~~あ、折角ダンジョンフルーツ持って来たのにな~。も~帰ろっかなぁ~」

「「「お寛ぎ下さいませ!」」」

腰を直角に折って頭を下げるメイド共。現金なものである。

「アルアは顔見せしておいで」

「はい。ですが、カケル様は?」

「ハークかブルランさんが来る迄待つけど」

「とか言って、致すのでしょう?」

「致しません。他国の王に刃物グリグリして来るメイドにグリグリしてやるちんぽなんてありません。致すにしても、先に仕事をしてからです」

「…まあ、そう言う事でしたら」

アルアをハグして送り出す。俺がソファーに座っても、メイド達は今の言葉を聞いてからか部屋の隅に整列して待つ。仕事の時は仕事する奴等だ。

「エルシド・ゴモランッ入り申す!」

ノックがあり、部屋の外からでも聞こえた通り、エルシド・ゴモランがメイドに連れられ入室する。

「久しぶりだな」

「うむっ。カケル殿、否、陛下とお呼びすべきであった。失敬」

何で城にエルシドが?と思って聞いたら、昇進して隊長総括になっちゃったんだと。現場仕事が天職だと言っていたエルシドなので、城勤めは少し物寂しいと言う。
で、ハークの政務が終わる迄の間、場繋ぎに来たそうな。

「ハーク王はどんな仕事してんだ?」

「は。今は各都市の予算を」

「一人にやらせる仕事じゃ…ああ、それでブルランさんも駆り出されてるのか」

「左様であります」

「先に仮の認可出して、事後で確認してんだろうなぁ」

「儂には分かり兼ねまする」

見た目没なのは予めブルランさん辺りが弾いてるんだろうけど、何方にしても一人でやる仕事じゃ無いんだよな。王政の短所の一つだ。

「切り上げて昼…って感じだろうし、外にでも出るかね」

「それでは増設した鳥舎をご覧なさりますか」

「外と言ったら、コレだろ」

俺はドーンドゥールで売りそびれたトカゲ頭の剣を出す。エルシド・ゴモランは目を見開いた。

「おほっ、お供致しますぞっ」

少々お時間頂くと、部屋を出て戻って来たゴモランは腕脚頭を鎧で固め、剣を二振り携えていた。一般兵の支給品みたいなソレ等は、その場にある物をある物合わせで着けて来たように見える。胴鎧は無かったんだろうなぁ。ウキウキ顔のエルシドと、お外に向けて《転移》した。


「うほほっ!久々の外じゃあ!!」

「どんだけ軟禁されてたんだよ…」

 嬉しがり方が半端無い。両手の剣を振り回し、毒を捨てに行った時のジョンを彷彿とさせるエルシドは、ズカズカと足を踏み鳴らして森の中を闊歩する。それこそあの時のジョンと一緒で、魔物なんて近寄りゃしない。

「ゴモランさん、魔物を寄せてやるから静かにな」

「う、うむ。そうか、では頼むぞ陛…カケル殿」

内外での対応の変化に戸惑うエルシドだが、剣を構えて静態する。そんな急には来ないから、何時でも飛び掛れますなポーズは止めてくれ。《感知》で見回し…居た居た。一匹だけに《集結》を掛けた。

「鈍ってるだろうし、先ずは一匹」

「このエルシド・ゴモランッ!城勤めであっても鍛錬を欠かした事あり申さんっ!って、うおあっ!?」

森から現れた白い巨体にエルシドは驚いた。スノーライガーでもかなりデカい個体だったからだ。まだ三十ハーン程の距離はあるが、木が邪魔をして無ければ既に必殺の間合いと言っても良いだろう。《集結》を解くとエルシドの気配に呼応して唸り声を上げノシノシと、堂々と言う表現が一番しっくり来る姿で寄って来た。抱き着きたい。撫で回したい。

「殺さない事。殺されない事。危なくなった時点で負けだからね」

「む…確かに。ハーク王の御前に死体を晒す訳には行かんな」

スーッと大きく息を吸う。

「儂は!ミソプファンティア衛兵隊総括!エルシド・ゴモランであるっ!!」

楽しそうで何よりであるっ。




しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...