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同じ事言ってる
しおりを挟む二振りの剣を上中段に構えヤル気満々なエルシドに、低い唸り声を上げてノシノシと近寄って来るライガー。互いに狙いを定めたのか、静と動で対峙する。俺は蚊帳の外だな。
「ふっ!」
息を吐き、自ら必殺の間合いに飛び込んだのはエルシド。上段構えの右腕を振り下ろし、ライガーの鼻先を狙うが相手も素早い。顔を少し引っ込めただけで剣の間合いから逃れ、ジッとエルシドを見る。エルシドの、次の動きを見るつもりだろう。人との戦いに慣れているのかも知れない。
初撃を外したエルシドは、止まる事無く剣を振るう。今度は喉元へ飛び込んで中段構えの左手を突き上げた。これにはライガーも下がる他無く飛び退くが、右前脚での猫パンチがエルシドの左手を引っ叩いた。
「ちっ」
畳まれる事の無いトラ爪が、腕鎧を凹ませる。持っていた剣も茂みの奥へ吹っ飛んで行った。
「グルルル…」
敵の手数を減らす事に成功したライガーだが追撃には至らない。視線を外さず睨みを利かせて居るが、体の左側を前に出す。エルシドの右手剣に携えた剣は赤く色付けされていた。ライガーの血だ。猫パンチの瞬間に、切先を合わせていたようだ。喉元への突きが決まった後に薙ぎ払うつもりだったのだろう。エルシドは左腕で剣の中程を支え、攻防何方も見る構えを取った。多分だが、左手は使い物にならんだろう。
「すーー、ふーー」
長い呼吸をして、ジリジリとライガーの左後方へ回り込もうとするエルシドに、ライガーは正面を向く事で牽制する。こうなると真正面から殴り合うしか無い。
「ふんっ」
飛び込むしか無いエルシドが、ライガーの喉元へ跳ぶ。《強化》系スキルだろうか。低い高度で間合いを詰めたエルシドに、ライガーの左手が振り払われた。
「グルァァアッ!」
先の先。エルシドを払い飛ばそうと振るわれた左手が浅からぬ傷を帯びて鮮血が噴き出した。左手が伸びる瞬間、右に跳んで躱すと同時に斬り付けたようだ。他の装備はゴミだが剣だけは良い物らしい。否、コレもスキルで何かしてるのか?
少なくない出血に、ライガーはより慎重になる。歯を剥き出して威嚇するが、コレは悪手。時間を伸ばして不利になるのは其方なのだから。
威嚇に怯まず左側から首元を狙って突撃したエルシドは、ライガーへのダメージと自身の左腕を天秤に掛けた。
「ぐおおおおっ!!」「グルアアアッ!!」
何となく同じ事言ってる気がする。首に刺さった剣を手放し拳で顔を殴り付けるエルシドに、血みどろの左手で猫パンチを浴びせるライガー。此処迄だな。
「ゴモラン、そこまでだ」
「なっ!?」「グアッ!」
双方に《結界》を纏わせて引き離すと、出血の多いライガー、そして左腕と右脚がグズグズになってるエルシドに《治癒》を掛ける。
「お、おおお…。ライガーの傷が癒えておる」
「先ずは自分のを確認なさいよ。泥試合で勝者無しでは詰まらんからね、止めさせてもらったよ」
「ぐぬぬ…」「グル…」
「それにもう直ぐ昼だろ。帰らないとハーク王が泣く」
「な、泣きはしまいかとは思いますが…」
頑張ったライガーにはちょっと遠くに居たドウドウを三匹《収納》して目の前に出してやる。
「人よりコッチのが美味かろう。さ、帰ろうか」
「う、うむ。良い戦いをさせて貰った。礼を言うぞ」
エルシドの言葉はドウドウに齧り付くスノーライガーに向けられた物であった。
「カケルー!何処行ってたのーっ!?」「!?」
城に戻るとハーク王が部屋に居て、俺の姿を見て飛び込んで来た。そしてボロボロになったエルシドを見たブルランさんは目を丸くした。
「ゴモラン殿。まさかカケル様と仕合いましたかっ?」
「否、どデカいスノーライガーと仕合っておりました」
「え!?僕も見たかったよ!」
「陛下、お言葉を」
「っ!余も見たかったぞー!」
娯楽無さそうだしな。見たかっただろうな。俺もまあ楽しめたし。
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