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成人式の衣装で会社に行く
しおりを挟むハーク王とブルランさん、そして数名のメイドを交えて話の場が持たれる。俺のランクアップの式典についてだ。
普通の冒険者、例えばジョンの場合、ギルマスに「お前Aランクに昇格するからこの日迄に礼装用意して式の三日前迄に式典会場のどこそこに行け」と言われるだけらしい。俺の場合、今がその三日前に相当する。
「礼装はどうすれば良いのだろう。カケラントから皇帝の服借りて来るとか?」
「問題御座いません。礼装は此方で用意致しました」
俺の問いにブルランさんは答える。
「派手派手にしたりしてないよね?」
「…隠密行動は出来ませんね」
溜めを鑑みると派手だと思われる。因みにジョンの礼装は毒を捨てに行った時のあの赤い鎧だそうだ。安くない買い物だろうし、今日からこの姿で売って行くと考えると使い続けるのも頷ける…のか?成人式の衣装で会社に行くようなモンだぞ?
「とにかく一度見せてくれ。ジョンみたいに着続ける事は無いと確信してるがな」
メイドが二人、礼装を取りに席を外し、その間に式典の作法についての話をした。謁見の間での式典があり、平民への顔見せ。その後晩餐会があると言う。
筋書きのある式典は問題無いが、問題はある。大ありだ。それは、顔見せと晩餐会で行われるスピーチ。式典迄の三日間、俺はストレスで禿げるかも知れない。
「お待たせ致しました」
スピーチの存在に途方に暮れていると、入室したメイド等がカートに箱を乗せて転がして来た。シルケにもカートってあるのな。木製だが地球のと殆ど同じ作りで目が行ってしまった。
「カケル様、お気になりますか?」
「いえ、全然」
勘違いするメイドに棘を飛ばすがダメージは無く、嬉々として箱の中身を取り出した。人が縮こまれば入れそうな大きさの箱の中には鎧一式とマント、細身の剣が入ってて、メイド達が一人一つか二つを持って俺の座るソファーの前に横並びになった。
「…マントはエルシドのを借りた事あるし、剣は派手だが儀礼用だよな。まあ良い。しかしなぁ」
何で鎧がカラフルなんだ?赤青白に黄色と黒の差し色が映えて、とても外を歩けるような装備では無い。こんなの着られるのはアニメキャラだけだ。此処は異世界だがアニメじゃ無いのだ。…あ、以前捨てた魔導砲に色味が似てる…。持っとけば良かった…。
「カケル、どこ見てんのさ」
「遥か遠くを見ておりますね」「感動していらっしゃるのかと」
「んんっ、何でも無い。とにかく俺は着ないぞっ。これ着るくらいならAランクなんてならなくて良い。金は稼げてるんだしなっ」
「そんな…」「国がカケル様の為を思って用意なされましたのに」「ハーク陛下がカケル様のお気に召すようにとお選び下さった逸品ですのに…」
「問答無用っ。今着てる鎧がダメならコレでどうだ」
カナブン色の装備に換装する。家でしか着ないカナブン服だが家でもあまり着ていないからキレイだぞっ。
「その鎧が良くて此方が悪い道理が分かりませんが」
「より派手になったんだから良しとしてくれ。とにかく、それはハークが大人になったら着なさい。城の中だけでな」
ブルランさんには首を傾げられたがカラフル鎧は絶対却下だ。
午前中、政務をこなしていたハーク王は午後になり鍛練の時間。城の中庭でエイヤーしてるのを聴きながら、俺はメイド相手に式典の練習をする。普通、Aランク冒険者になるのと同時に騎士爵が叙爵されるそうで、俺の場合勝手が違うので調整に時間が掛かったそうだ。
「はい。これで一通り終わりました。次回は夕飯時。就寝前と各食後に反復しますので体に叩き込んで下さいませ」
所作と台詞を覚えるシミュレーションをこれから何度もするそうだ。夕飯迄寝たいがそうは行かない。空いた時間はスピーチの原稿を書き、覚えて話す練習がある。これにもメイドが付いてくれた。
「定型文がありますので擬えて行きましょう」
虎の巻、此処にもあったのか。
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