支援魔術師の俺、美女だらけの仲間と世界を救う

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第16章「姫騎士の涙──誇りの裏にある弱さ」

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魔王城への旅が始まって一週間が経った。
五人は険しい山道を進んでいた。
「はあ……疲れた……」
セラは息を切らしていた。
「この山、いつ終わるの……?」
「もう少しです」
アリシアは地図を確認した。
「あと数時間で、山を越えられるはずです」
「頑張ろう、セラ」
蓮が励ました。
「うん……」
セラは再び歩き始めた。

夕方、五人は山の中腹で野営することにした。
「今日はここで休もう」
健太が提案した。
「ああ、賛成」
蓮も頷いた。
五人はテントを張り、焚き火を起こした。

夕食後、アリシアは一人、焚き火の前に座っていた。
炎を見つめながら、何かを考え込んでいる。
「アリシア、大丈夫?」
蓮が声をかけた。
「あ、神谷さん……」
アリシアは少し驚いた様子だった。
「ええ、大丈夫です」
「何か考え事?」
「……少し」
アリシアは炎を見つめた。
「父のことを、思い出していました」
「お父さん……」
蓮は隣に座った。
「騎士団長だったんだよね」
「ええ」
アリシアは静かに頷いた。
「父は、とても立派な人でした」

アリシアは、ゆっくりと語り始めた。
「父は、王国騎士団の団長として、多くの人々を守ってきました」
「常に正義を貫き、弱き者の味方でした」
アリシアの目に、懐かしさが滲む。
「私は、そんな父を尊敬していました」
「父のような騎士になりたいと、幼い頃から思っていました」
「……」
蓮は静かに聞いていた。
「でも、三年前……」
アリシアの声が震えた。
「父は、魔王軍との戦いで命を落としました」
「……」
「私は、父の最後を看取ることができませんでした」
アリシアは拳を握りしめた。
「戦場から遠く離れた場所にいて……父が死んだという知らせを受けただけでした」
「アリシア……」
「父の遺体を見た時……私は、何も言えませんでした」
アリシアの目から、涙が溢れた。
「ただ……泣くことしかできませんでした」
「……」
「それから、私は誓ったんです」
アリシアは涙を拭った。
「父の遺志を継ぎ、立派な騎士になろうと」
「誰も泣かせない、強い騎士になろうと」
「だから……」
アリシアは蓮を見た。
「私は、弱さを見せてはいけないと思っていました」
「常に強くあらねばならないと」
「でも……」
アリシアの声が震えた。
「最近、気づいたんです」
「私、本当は……とても弱いんだって」

アリシアは顔を伏せた。
「神谷さんと出会ってから、私は変わりました」
「仲間と共に戦うことの素晴らしさを知りました」
「支え合うことの大切さを学びました」
「でも、同時に……」
アリシアは蓮を見つめた。
「あなたに頼りすぎている自分に気づいたんです」
「え……?」
「あなたの支援がなければ、私は戦えない」
アリシアは自嘲気味に笑った。
「これって、弱さですよね」
「そんなことない」
蓮は即座に答えた。
「仲間を頼ることは、弱さじゃない」
「でも……」
「アリシアは、俺なんかよりずっと強い」
蓮は真剣な目で言った。
「剣の腕も、心の強さも」
「……」
「俺は、アリシアを尊敬してる」
蓮は優しく微笑んだ。
「父親を失っても、その意志を継いで騎士になった」
「それって、とても強いことだと思う」
「神谷さん……」
アリシアの目から、再び涙が溢れた。
だが、今度は悲しい涙ではなかった。
「ありがとう……ございます……」
アリシアは蓮の胸に顔を埋めた。
そして、声を上げて泣いた。
「うっ……うう……」
「いいよ、泣いて」
蓮はアリシアの背中を優しく撫でた。
「我慢しなくていい」
「……はい……」
アリシアは、長い間抑えていた感情を解放した。
父への想い。
騎士としてのプレッシャー。
弱さへの恐怖。
全てが、涙となって溢れ出た。

しばらくして、アリシアは泣き止んだ。
「すみません……取り乱してしまって……」
「気にしないで」
蓮は笑顔で答えた。
「みんな、弱い部分があるから」
「……そうですね」
アリシアは小さく微笑んだ。
「神谷さん、もう一つ聞いてもいいですか?」
「うん」
「私……あなたのことが好きです」
アリシアは顔を赤らめた。
「でも、リリアさんもセラさんも、あなたのことが好きで……」
「……」
「私、どうすればいいのかわからないんです」
アリシアは困惑した表情を浮かべた。
「一人の人を、三人で好きになるなんて……」
「……」
蓮は答えに窮した。
正直、自分でもどうすればいいのかわからない。
「ごめん、俺も……まだ答えが出せない」
「いいんです」
アリシアは微笑んだ。
「焦らないでください」
「でも……」
「今は、仲間として一緒にいられるだけで幸せです」
アリシアは空を見上げた。
「いつか、あなたの答えが出る日が来るでしょう」
「その時まで、私は待ちます」
「アリシア……」
「だから……」
アリシアは蓮を見た。
「これからも、よろしくお願いします」
「うん」
蓮は笑顔で答えた。
「こちらこそ」
二人は静かに微笑み合った。

その時、テントからリリアが出てきた。
「あら、二人で何を話してるの?」
「あ、リリア……」
アリシアは少し慌てた。
「別に、何でもないわ」
リリアは疑わしそうな目で二人を見た。
「……そう」
リリアは焚き火の前に座った。
「ねえ、神谷」
「うん?」
「あなた、アリシアと何を話してたの?」
リリアは少し不機嫌そうだった。
「え、えっと……」
蓮は困惑した。
「アリシアの過去とか……」
「過去?」
リリアはアリシアを見た。
「あなた、神谷に何を話したの?」
「……父のことを」
アリシアは正直に答えた。
「そう」
リリアは少し表情を和らげた。
「大切な話だったのね」
「ええ」
「……」
リリアは少し考え込んだ。
「ねえ、アリシア」
「はい?」
「私たち、ライバルよね」
リリアは真剣な目で言った。
「神谷を巡る」
「……はい」
アリシアも頷いた。
「でも」
リリアは微笑んだ。
「それでも、私たちは仲間よ」
「リリアさん……」
「だから、お互い正々堂々と戦いましょう」
リリアは手を差し出した。
「……はい」
アリシアはリリアの手を取った。
「よろしくお願いします」
二人は笑顔で握手した。

「何の話?」
セラがテントから出てきた。
「あたしも混ぜて~」
「セラ……」
「ねえねえ、何で二人で握手してるの?」
セラは不思議そうに尋ねた。
「ライバル宣言よ」
リリアが答えた。
「ライバル?」
「ええ。神谷を巡るライバル」
「あ、それならあたしも!」
セラは二人の手に自分の手を重ねた。
「あたしも、蓮のこと好きだもん!」
「……もう」
リリアは呆れたように笑った。
「三人でライバルってことね」
「ええ」
アリシアも微笑んだ。
「でも、仲間でもあります」
「そうだよ!」
セラは無邪気に笑った。
「あたしたち、家族みたいなものだもん」
三人は笑い合った。

「お前ら、仲いいな」
健太がテントから出てきた。
「ハーレムかよ」
「ハーレムって……」
蓮は顔を赤らめた。
「そんなんじゃないよ」
「まあ、お前が羨ましいよ」
健太は肩をすくめた。
「俺なんか、一人だからな」
「……」
蓮は健太を見た。
少し寂しそうに見えた。
「健太も、俺たちの仲間だよ」
「え?」
「一緒に旅してるんだから」
蓮は笑顔で言った。
「仲間だろ?」
「……」
健太は少し驚いた表情を浮かべた。
やがて、小さく笑った。
「そうだな。仲間か」
「うん」
「じゃあ、よろしくな」
健太は手を差し出した。
「こちらこそ」
蓮は健太の手を握った。
五人は、焚き火を囲んで笑い合った。

その夜、アリシアは一人、テントの中で考えていた。
「神谷さん……」
胸が温かくなる。
今日、自分の弱さを見せてしまった。
だが、蓮は優しく受け入れてくれた。
「ありがとう……」
アリシアは小さく呟いた。
「あなたと出会えて、本当に良かった」
窓の外には、満月が輝いていた。

翌朝、五人は再び旅を続けた。
「今日で山を越えられそうですね」
アリシアが言った。
「ああ」
健太は前方を見た。
「あと数時間だな」
五人は険しい道を登っていった。

山頂に到着すると、眼下に広大な平原が広がっていた。
「わあ……」
セラは感嘆の声を上げた。
「綺麗……」
「これが、魔境への入り口ですか?」
蓮が尋ねた。
「ええ」
アリシアは頷いた。
「この平原を抜けると、魔境に入ります」
「魔境か……」
健太は腕を組んだ。
「ここからが本番だな」
「ええ」
五人は決意を固めた。

だが、その時──
遠くから、黒い煙が立ち上っているのが見えた。
「あれは……」
リリアは目を細めた。
「村……?」
「まさか、襲撃されてる……!?」
アリシアは驚愕した。
「急ぎましょう!」
五人は村へと走り出した。

村に到着すると、そこは地獄絵図だった。
家々が燃え、村人たちが倒れている。
「ひどい……」
セラは愕然とした。
「誰がこんなことを……」
その時、村の中心から声が聞こえた。
「クククク……」
低い笑い声。
五人が駆けつけると──
黒いローブを纏った人影が、村人たちを嘲笑していた。
「お前は……」
アリシアは剣を抜いた。
「魔王軍……!」
「よく来たな、トリニティ」
黒いローブの男は振り向いた。
「俺は魔王軍特務部隊長、ヘルファイア・グリム」
「お前たちを、ここで始末する」
グリムは炎を纏った。

「みんな、行くよ!」
蓮は叫んだ。
「グランド・サポート!」
四人の体が光り輝いた。
「行きます!」
アリシアが突撃した。
だが──
グリムは一瞬で姿を消し、アリシアの背後に現れた。
「遅い」
グリムの拳が、アリシアの背中に叩き込まれた。
「ぐはっ……!」
「アリシア!」
「フレイムランス!」
リリアが魔法を放つ。
だが、グリムは炎を吸収した。
「俺は炎の魔王だ。炎魔法は効かない」
「くっ……」
「はあっ!」
セラと健太が同時に攻撃した。
だが、グリムは軽々と二人を弾き飛ばした。
「弱い……」
グリムは冷笑した。
「これがトリニティか? 期待外れだな」

「くそっ……」
蓮は焦った。
支援魔法をかけても、歯が立たない。
「どうすれば……」
その時、アリシアが立ち上がった。
「まだ……終わってません……」
「アリシア、無理しないで!」
「いいえ」
アリシアは剣を構えた。
「私は……騎士です」
アリシアの目には、強い決意が宿っていた。
「弱き者を守ることが、私の使命」
「ここで倒れるわけには……いきません!」
アリシアは叫んだ。
その瞬間──
アリシアの体が、眩い光に包まれた。
「この光は……」
グリムは驚愕した。
「まさか……覚醒……!?」
アリシアの剣が、聖なる光を放ち始めた。
「私は、父の娘」
アリシアは剣を構えた。
「王国騎士団団長、ジークフリートの娘!」
「その意志を継ぐ者!」
アリシアは突撃した。
その速さは、光速を超えていた。
「はああああっ!」
聖剣がグリムの胸を貫いた。
「ガアアアッ!」
グリムは悲鳴を上げた。
「く……そ……こんな……はずでは……」
グリムの体が煙のように消えていった。
「覚えて……ろ……」
グリムは完全に消滅した。

「やった……」
アリシアは膝をついた。
「はあ……はあ……」
「アリシア!」
蓮が駆け寄った。
「大丈夫!?」
「ええ……何とか……」
アリシアは笑顔で答えた。
「でも、不思議です……」
「何が?」
「急に、力が漲ってきたんです」
アリシアは自分の手を見た。
「まるで、父が背中を押してくれたような……」
「……」
蓮は微笑んだ。
「きっと、お父さんが見守ってくれてたんだよ」
「そうでしょうか……」
「うん。絶対」
「……」
アリシアは涙ぐんだ。
「ありがとう……父さん……」

村人たちを治療した後、五人は再び旅を続けた。
「アリシア、すごかったね」
セラが言った。
「急に強くなって」
「覚醒したのよ」
リリアが説明した。
「強い意志が、潜在能力を引き出したの」
「へえ」
「でも、疲れました……」
アリシアは苦笑した。
「しばらく、あの力は使えないかもしれません」
「無理しないでね」
蓮が言った。
「うん」
アリシアは微笑んだ。

その夜、五人は再び野営した。
アリシアは、父の形見である剣を磨いていた。
「父さん……」
アリシアは呟いた。
「私、頑張ります」
「あなたの意志を継いで、立派な騎士になります」
剣が、月光を反射して輝いた。
まるで、父が答えてくれているようだった。
アリシアは微笑んだ。
もう、涙は流さない。
前を向いて、進んでいく。
仲間と共に。
そして──
大切な人と共に。
アリシアの心は、決まっていた。
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