【完結】動物と話せるだけの少女、森で建国して世界の中心になりました

なみゆき

文字の大きさ
12 / 12

番外編

しおりを挟む
 森と王都の関係が少しずつ落ち着きを見せ始めた頃
―― 王都から、また一通の手紙が届いた。


「“動物語スピーチコンテスト”を開催したい、ですって?」

私はパンの耳を焼きながら、首をかしげた。 

どうやら、動物語講座の評判が王都で広まりすぎて、「話せるようになったら披露したい」という声が続出したらしい。

開催場所は森の中央広場。 

審査員はフクロウ(発音と文法)、インコ(表現力)、フェレット(面白さ)。

私は、司会を務めることになった。

出場者は王族から庶民まで、そして一部の動物たちも混ざっていた。


最初の登壇者は王女殿下リゼ。

「ニャー……えっと、“こんにちは”です!」

ミルフィーが冷ややかに見つめる。

『発音が甘いニャ。あと、語尾が高すぎるニャ』


次は王子殿下フィン。

「ワン! ワンワン! ワンワンワン!」

ベルクがそっぽを向いて一言。

『うるさいワン。何の意味もない言葉だワン』


続いて登場したのは、王妃。

「ピヨ……ピヨピヨ……ピヨ?」

金魚が泡で「……無視」と返した。



一方、動物たちのスピーチは堂々たるものだった。
•インコが「人間との共存について」熱弁。
•フェレットが「ポケットの可能性」について語り、貴族の財布を盗みながらのマルチタスクぶりで、会場拍手喝采。
•カメが「ゆっくり生きることの美学」を語り、説明の途中で爆睡。



私は、焚き火のそばで静かに見守っていた。

「……なんだか、すごいことになってるな」


最後に、ミルフィーが登壇した。

『ニャー。人間は、動物語を学ぶべきニャ。でないと、猫の気持ちなんて一生わからないニャ』


その言葉に、会場は静まり返った。 
そして、ゆっくりと拍手が広がった。

こうして、“動物語スピーチコンテスト”は大成功を収めた。 人間と動物が、言葉を超えて心を通わせた瞬間だった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く

腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」 ――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。 癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。 居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。 しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。 小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。

とあるギルド員の事件簿Aランクパーティーを追放されたとやって来た赤魔道士の少年が実は凄腕だった件について~

東稔 雨紗霧
ファンタジー
 冒険者ギルドでカウンター業務をしていたトドロキの元へAランクパーティを追放されたと言う少年が「一人でも受けられるクエストはありますか?」とやって来た。  込み入った事情がありそうだと判断したトドロキは一先ず個室へと案内して詳しい話を聞いてみる事に。

追放された元聖女は、イケメン騎士団の寮母になる

腐ったバナナ
恋愛
聖女として完璧な人生を送っていたリーリアは、無実の罪で「はぐれ者騎士団」の寮へ追放される。 荒れ果てた場所で、彼女は無愛想な寮長ゼノンをはじめとするイケメン騎士たちと出会う。最初は反発する彼らだが、リーリアは聖女の力と料理で、次第に彼らの心を解きほぐしていく。

勇者パーティーを追放された薬草師

高坂ナツキ
恋愛
「端的に言って、君はここでクビだ」  魔王討伐のために結成された勇者パーティーに所属していた薬草師のサラは、魔族領域まであと一歩というところでクビになった。  自分から志願したわけでも、懇願してパーティーに入れてもらったわけでもないサラは、渡りに船とばかりに勇者パーティーから追放される。  その後、勇者たちは失敗続きでサラの重要性を理解するも、何もかもがもう遅い。  これは勇者パーティーから追放された薬草師の少女が、自分の居場所を掴むまでの物語。 9月20日・21日は7:00と17:00の2回投稿。 9月22日以降は7:00に投稿します。 全12話予約投稿済みですので、最後までお楽しみください。

【完結】夢診薬師リセの調方録

なみゆき
ファンタジー
夢を「診断」し、そこから心身の異常を治療する文化が根付いた都市――《夢界都ユーメリア》。 人々の夢は「夢晶」と呼ばれる薬石に記録され、薬師はそれを調合して治療薬を作り出す。夢は記憶や感情、呪い、過去を映す鏡とされ、正しく扱えば人を癒す力となる。 しかし、夢を悪用すれば人の心を狂わせ、現実そのものを歪ませることも可能だった。 やがて都市を覆う陰謀が動き出す――夢を奪い、操り、売買する者たち。夢晶に刻まれた秘密は、街の存亡と人々の存在そのものを揺るがす。 夢を守る薬師リセは、自らの存在に潜む謎影に直面しながら、「真実」へと歩みを進めていく。

魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす

三谷朱花
恋愛
 ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。  ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。  伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。  そして、告げられた両親の死の真相。  家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。    絶望しかなかった。  涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。  雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。  そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。  ルーナは死を待つしか他になかった。  途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。  そして、ルーナがその温もりを感じた日。  ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。

【完結】王都に咲く黒薔薇、断罪は静かに舞う

なみゆき
ファンタジー
名門薬草家の伯爵令嬢エリスは、姉の陰謀により冤罪で断罪され、地獄の収容所へ送られる。 火灼の刑に耐えながらも薬草の知識で生き延び、誇りを失わず再誕を果たす。 3年後、整形と記録抹消を経て“外交商人ロゼ”として王都に舞い戻り、裏では「黒薔薇商会」を設立。 かつて自分を陥れた者たち ――元婚約者、姉、王族、貴族――に、静かに、美しく、冷酷な裁きを下していく。 これは、冤罪や迫害により追い詰められた弱者を守り、誇り高く王都を裂く断罪の物語。 【本編は完結していますが、番外編を投稿していきます(>ω<)】 *お読みくださりありがとうございます。 ブクマや評価くださった方、大変励みになります。ありがとうございますm(_ _)m

処理中です...