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2.あの子は誰?
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「なぁ、親父。あの子、誰だよ?」
「何だいきなり」
「ずっと寝たきりなんだぜ?暇なんだよ」
「お前が足の骨を折られたのは自業自得だ」
取り付く島もねぇ。
仏頂面で言うか、ふつ~。
「あの子に会わせたかったんじゃねぇの?だからこんな人里離れた修道院に連れてきたんだろ?で、ここは一体どういう所だよ?修道院にしちゃあ、やけにセキュリティが高いぜ。飯もうめぇしな。建物自体年代物だが造りがいい。どっかの貴族の屋敷だったんじゃねぇの?飾ってある装飾品もやたらに手が込んでいやがる」
「…………相変わらず観察眼は鋭いな」
「あの子さぁ、オレにくれない?」
「……は?」
「アレ、気に入ったわ。オレが貰ってやる」
「…………い?」
「こんなとこにいるんだ、どうせ訳アリだろ?オレんトコで引き取ってやんよ。ウチの館にはそういう連中が多いしな。皆、事情がある奴ばかりだから、詮索もしない。ああ、あの性悪女なら心配すんな。今頃、新しい男連れ込んでるだろうからな。オレの家には寄り付かねぇよ。まぁ何か問題があってもこのオレ様がいるから心配すんなって!」
我ながらナイスアイデア!そう思ったんだが、次の瞬間、オレは親父にぶん殴られていた。
マジで痛ェ!!冗談じゃなく本気で殴りやがった!
「おまっ!実の息子に何をっ!!」
「お前のような息子を持った覚えはないっ!このバカモンがっ!!!!!」
その後しばらく親父はカンカンだったが、あの子が気になるのも確かだしな。
こっそり様子を窺うくらいはしてもいいだろ?それに、親父の態度も妙に煮え切らないというか……。何を隠してやがるんだ?まさか、実は隠し子でしたーとかいうオチじゃないよな?だとしたらちょっと面白いけど。ま、お袋もとっくに死んでんだ。隠し子の一人や二人いた処で隠すほどのことでもねぇ。今なら逆に喜ばれるんじゃねぇか?産めよ増やせよ地に満ちよの精神万歳!の時代だからさ。
「あの方には、既に相手がいる」
親父の言葉にオレは耳を疑った。
は?相手?婚約してたのか!?あんなチビにか?
「誰だよそいつは!?」
「…………さる高貴なお方のご子息だ。軽々しく口を出していいお人ではない」
「さる高貴な身分のお坊ちゃんね……」
それを聞いてピンときた。
一人だけ思い当たる男がいる。
そもそも侯爵である親父が「高貴」だと称する相手は一人しかいねぇからな。間違いないだろう。しかし……あの男にやるのか。
「もったいねぇ」
意識した訳じゃねぇ。
ただ、チビとあの男じゃつり合いが取れねぇと思ったからだ。
王太子には勿体ねぇ逸材だぜ。
今は、ガリガリのチビだが、あれは生まれながらの貴族……いや、王の器だ。女だから女王様か?生気を失って死んだ目をしていたが、あれは只者じゃないぞ。
欲しいものは簡単に手に入れてきた。
ミュッケンベルガー侯爵家の嫡男に生まれ、想像を絶するスパルタ教育を受けてきた身からすりゃあ、むしろ安いくらいだ。だが、今回だけは難しいみてぇだ。
チビは恐らくリベルタ王国の王族だろう。
一年ほど前に民衆が革命を起こした国。この国の王女が王妃として嫁いでいた。リベルタ王国の国王夫妻には王女と王子が居た筈だ。王女は生きていれば十二歳……ひょっとすると……ひょっとするかぁ。国王夫妻はギロチンにかけられ、王子は裁判によって平民落ちしたという情報だが、王女の情報はシャットアウトされてる。王太后と共に行方不明との噂もある。あのチビは王女か?ああ……それなら合点がいくぜ。
欲しいものは必ず手に入れる。
それが俺の信条だ!
あのチビはいずれ俺の物になる。
「ほぉ……お前はそう思うのか……ならば大丈夫だな」
悶々と考え込んでいた俺は親父の何気ない一言に気付くことはなかった。
「何だいきなり」
「ずっと寝たきりなんだぜ?暇なんだよ」
「お前が足の骨を折られたのは自業自得だ」
取り付く島もねぇ。
仏頂面で言うか、ふつ~。
「あの子に会わせたかったんじゃねぇの?だからこんな人里離れた修道院に連れてきたんだろ?で、ここは一体どういう所だよ?修道院にしちゃあ、やけにセキュリティが高いぜ。飯もうめぇしな。建物自体年代物だが造りがいい。どっかの貴族の屋敷だったんじゃねぇの?飾ってある装飾品もやたらに手が込んでいやがる」
「…………相変わらず観察眼は鋭いな」
「あの子さぁ、オレにくれない?」
「……は?」
「アレ、気に入ったわ。オレが貰ってやる」
「…………い?」
「こんなとこにいるんだ、どうせ訳アリだろ?オレんトコで引き取ってやんよ。ウチの館にはそういう連中が多いしな。皆、事情がある奴ばかりだから、詮索もしない。ああ、あの性悪女なら心配すんな。今頃、新しい男連れ込んでるだろうからな。オレの家には寄り付かねぇよ。まぁ何か問題があってもこのオレ様がいるから心配すんなって!」
我ながらナイスアイデア!そう思ったんだが、次の瞬間、オレは親父にぶん殴られていた。
マジで痛ェ!!冗談じゃなく本気で殴りやがった!
「おまっ!実の息子に何をっ!!」
「お前のような息子を持った覚えはないっ!このバカモンがっ!!!!!」
その後しばらく親父はカンカンだったが、あの子が気になるのも確かだしな。
こっそり様子を窺うくらいはしてもいいだろ?それに、親父の態度も妙に煮え切らないというか……。何を隠してやがるんだ?まさか、実は隠し子でしたーとかいうオチじゃないよな?だとしたらちょっと面白いけど。ま、お袋もとっくに死んでんだ。隠し子の一人や二人いた処で隠すほどのことでもねぇ。今なら逆に喜ばれるんじゃねぇか?産めよ増やせよ地に満ちよの精神万歳!の時代だからさ。
「あの方には、既に相手がいる」
親父の言葉にオレは耳を疑った。
は?相手?婚約してたのか!?あんなチビにか?
「誰だよそいつは!?」
「…………さる高貴なお方のご子息だ。軽々しく口を出していいお人ではない」
「さる高貴な身分のお坊ちゃんね……」
それを聞いてピンときた。
一人だけ思い当たる男がいる。
そもそも侯爵である親父が「高貴」だと称する相手は一人しかいねぇからな。間違いないだろう。しかし……あの男にやるのか。
「もったいねぇ」
意識した訳じゃねぇ。
ただ、チビとあの男じゃつり合いが取れねぇと思ったからだ。
王太子には勿体ねぇ逸材だぜ。
今は、ガリガリのチビだが、あれは生まれながらの貴族……いや、王の器だ。女だから女王様か?生気を失って死んだ目をしていたが、あれは只者じゃないぞ。
欲しいものは簡単に手に入れてきた。
ミュッケンベルガー侯爵家の嫡男に生まれ、想像を絶するスパルタ教育を受けてきた身からすりゃあ、むしろ安いくらいだ。だが、今回だけは難しいみてぇだ。
チビは恐らくリベルタ王国の王族だろう。
一年ほど前に民衆が革命を起こした国。この国の王女が王妃として嫁いでいた。リベルタ王国の国王夫妻には王女と王子が居た筈だ。王女は生きていれば十二歳……ひょっとすると……ひょっとするかぁ。国王夫妻はギロチンにかけられ、王子は裁判によって平民落ちしたという情報だが、王女の情報はシャットアウトされてる。王太后と共に行方不明との噂もある。あのチビは王女か?ああ……それなら合点がいくぜ。
欲しいものは必ず手に入れる。
それが俺の信条だ!
あのチビはいずれ俺の物になる。
「ほぉ……お前はそう思うのか……ならば大丈夫だな」
悶々と考え込んでいた俺は親父の何気ない一言に気付くことはなかった。
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