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14.ランカー男爵家の母娘2
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「殺戮者の人格はもう出てこないんだろうな」
「? それは分からん」
「分からんて……」
「催眠療法で無理矢理封じ込めたようなものだ。本来なら、ゆっくりと時間をかけて人格を一つにするのだが……生憎と時間がなかったからな。こればかりは仕方ない」
「元の人格に戻したんじゃないのか?」
「戻ったとも。過去の記憶を封印してな」
公爵の話では催眠療法で過去の嫌な記憶を全く別の記憶に塗り替えて残酷な人格を無理矢理封じ込めたという。なので、いつ記憶が蘇って別人格が復活するかは未知数らしい。
田舎町で無惨に死んだ者達。
彼らはアリス嬢を助けなかった。大人たちは彼女を玩具にするか、見て見ぬふりをするかのどちらか。だから殺されたのだ。
「このままでいいのか?」
「彼女は実にいい研究対象だった。最終段階に入っていたからな。だが、これも運命だろう。彼女がこれから先も生き残れるか否かは彼女次第だ」
ああ、もう一人の研究対象がいるからな。
公爵の研究施設で死ぬまで出られない白い部屋に入れられている。憐れと思うが、これも自業自得だと諦めてもらうしかない。こんな人でなしと結婚した自分の見る目のなさを恨んでほしいところだ。まあ、人の事をとやかく言える立場ではないんだが……。
私や公爵のような人間は「大切な人」以外は基本的に人として認識しない節があるからな。
「彼女が今のコムーネ王国で生き残れると思うのか?」
「運が良ければ生き残れるだろう」
「共和国が介入しているのに?」
「だからこそだ。彼らにとって都合の良い駒であるうちは滅多に死ぬことはない。一応、王太子の婚約者……いや、もう王妃だったか」
「よくまぁ、結婚したものだ」
「王太子は義娘を溺愛していたからな。当然の結果だろう?地方視察にも同行していたのだからな」
「あそこで死んでいた方が彼らには良かったかもしれないぞ」
とうに始末したと思った王太子とその婚約者。
まさか生きて王宮に戻るとは……。
急な国王の死。
間違いなく王太子が絡んでいる筈だ。
そうでなければ即位など出来る訳がない。
よほど鈍い貴族でない限り、この不自然さ故に王都から脱出している。現に報告にもよると大半の貴族は王都を離れ自領に戻っているとか。それはそうだろう。ただでさえ、おかしくなっている王家にこれ以上つきあえる者はいない。国王だけでも大概だが、それに輪をかけておかしな王太子が即位した。正妃がブロワ公爵家の養女とはいえ、男爵家の跡取りであるアリス嬢は成人の暁にはランカー男爵家を継ぐ予定であった。つまり、公爵家の一員と言うには立場が弱い。しかも、公爵の実の娘で義姉にあたるキャサリン様から王太子を奪った尻軽だ。まともな貴族なら到底相手にしたくない。
「どうやら、今回の件には中央貴族の数名が関わりをもっているらしいぞ。なんでも共和国と縁がある者らしい。なんらかの取引をした可能性はあるな」
「なるほど。どうりでスムーズに事が運んだわけですな」
「ああ、王太子だけではこう上手くはいかなかっただろう」
「彼らは共和国と手を組むリスクを考えているんでしょうか?」
「さぁ?リスクを理解しているかどうかは分からん。もしくは共和国を甘く見ているのかもしれないが……先行きは暗いな」
公爵の言葉に頷くしかできなかった。
それほど、共和国の内情は酷い。
革命軍を名乗っていた連中は政治の素人だ。国内を破壊することしか知らないアホどもは恐怖政治を行うことで民衆をまとめ上げていた。
「? それは分からん」
「分からんて……」
「催眠療法で無理矢理封じ込めたようなものだ。本来なら、ゆっくりと時間をかけて人格を一つにするのだが……生憎と時間がなかったからな。こればかりは仕方ない」
「元の人格に戻したんじゃないのか?」
「戻ったとも。過去の記憶を封印してな」
公爵の話では催眠療法で過去の嫌な記憶を全く別の記憶に塗り替えて残酷な人格を無理矢理封じ込めたという。なので、いつ記憶が蘇って別人格が復活するかは未知数らしい。
田舎町で無惨に死んだ者達。
彼らはアリス嬢を助けなかった。大人たちは彼女を玩具にするか、見て見ぬふりをするかのどちらか。だから殺されたのだ。
「このままでいいのか?」
「彼女は実にいい研究対象だった。最終段階に入っていたからな。だが、これも運命だろう。彼女がこれから先も生き残れるか否かは彼女次第だ」
ああ、もう一人の研究対象がいるからな。
公爵の研究施設で死ぬまで出られない白い部屋に入れられている。憐れと思うが、これも自業自得だと諦めてもらうしかない。こんな人でなしと結婚した自分の見る目のなさを恨んでほしいところだ。まあ、人の事をとやかく言える立場ではないんだが……。
私や公爵のような人間は「大切な人」以外は基本的に人として認識しない節があるからな。
「彼女が今のコムーネ王国で生き残れると思うのか?」
「運が良ければ生き残れるだろう」
「共和国が介入しているのに?」
「だからこそだ。彼らにとって都合の良い駒であるうちは滅多に死ぬことはない。一応、王太子の婚約者……いや、もう王妃だったか」
「よくまぁ、結婚したものだ」
「王太子は義娘を溺愛していたからな。当然の結果だろう?地方視察にも同行していたのだからな」
「あそこで死んでいた方が彼らには良かったかもしれないぞ」
とうに始末したと思った王太子とその婚約者。
まさか生きて王宮に戻るとは……。
急な国王の死。
間違いなく王太子が絡んでいる筈だ。
そうでなければ即位など出来る訳がない。
よほど鈍い貴族でない限り、この不自然さ故に王都から脱出している。現に報告にもよると大半の貴族は王都を離れ自領に戻っているとか。それはそうだろう。ただでさえ、おかしくなっている王家にこれ以上つきあえる者はいない。国王だけでも大概だが、それに輪をかけておかしな王太子が即位した。正妃がブロワ公爵家の養女とはいえ、男爵家の跡取りであるアリス嬢は成人の暁にはランカー男爵家を継ぐ予定であった。つまり、公爵家の一員と言うには立場が弱い。しかも、公爵の実の娘で義姉にあたるキャサリン様から王太子を奪った尻軽だ。まともな貴族なら到底相手にしたくない。
「どうやら、今回の件には中央貴族の数名が関わりをもっているらしいぞ。なんでも共和国と縁がある者らしい。なんらかの取引をした可能性はあるな」
「なるほど。どうりでスムーズに事が運んだわけですな」
「ああ、王太子だけではこう上手くはいかなかっただろう」
「彼らは共和国と手を組むリスクを考えているんでしょうか?」
「さぁ?リスクを理解しているかどうかは分からん。もしくは共和国を甘く見ているのかもしれないが……先行きは暗いな」
公爵の言葉に頷くしかできなかった。
それほど、共和国の内情は酷い。
革命軍を名乗っていた連中は政治の素人だ。国内を破壊することしか知らないアホどもは恐怖政治を行うことで民衆をまとめ上げていた。
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