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9.愛の劇場2
しおりを挟む数日後――
驚きました。
まさか王太子殿下がソニア嬢との恋を選ぶなんて……。
『私とソニアは真実の愛で結ばれている!二人で力を合わせれば乗り越えられないものなどない!!』
王太子殿下はそう宣言なさったとか。
この世の中、愛情だけでどうにかなるものではありませんわ。王太子としての教育は受けている筈ですのに。恋は教育の全てを容易く吹き飛ばしてしまうのかもしれませんわね。恐ろしい事に、ソニア嬢も愛に生きるタイプの女性のようです。
噂に聞くソニア嬢は殿下を支えるタイプではありません。
乗り越える以前に逃げ出してしまうのではないかしら?
殿下はそういった想像は一切除外なさっているようですわ。
「自分達が物語の主人公になった気でいるのだろう」
「現実を見つめて欲しいですわ」
「今の段階では無理だろうな」
「側近の方々はどうされているのかしら?」
「彼らは王太子の側近を辞退したよ」
「まぁ」
「各家の判断だろうな。賢明な事だ」
ティエリー様の事です。何処かの誰かさんと違って裏まで調査済みでしょう。
殿下に新たな出会いを、と設けられている場所での言葉です。
しかも主催者は王妃殿下。
これは平民の恋人と婚約すると宣言したも同然でしょう。
その夜会に私は出席していませんが、噂では、王室御用達のドレスを身に付けていながら無作法過ぎる少女の存在は嘲笑の的でしかなかったとか。淑女たちは扇子で顔を隠しながら少女を嘲笑っていたとか。
王太子殿下と少女のダンスもそれは酷いものだったようですわ。
ダンスステップの不揃いもさることながらリズム感やタイミングの合わないダンスほど酷いものはありませんから。
ある貴族夫人は「六歳の子供でももっと優雅に踊れますね」と。
またある令嬢は「二人に音楽は必要ないのではありませんか?お二人に合わせなければならない彼らこそ哀れですわ」と。
誰もが「ありえませんわ!!」「これから王家はどうなるのかしら?」などと失笑と嘲りを隠しきれなかったそうですわ。
王妃殿下に至っては茫然自失で立っておられるのがやっとだったとか。
宰相もあまりな王太子の行動に両手を額にあてて呻いていらしたそうです。
実に滑稽ですわね。
果たして王太子殿下は平民の女性を妃に据える事が何を意味するのか分かっているのかしら?
また、殿下の恋人は王家に嫁ぐ覚悟を理解しているのかしら?
殿下は正気でしょうか?
何はともあれ、お二人の覚悟が本物なのかそれとも……。
どちらにせよ、この宣言の撤回はできないでしょうね。
発言の撤回は、更なる王家の失墜になります。
王家の発言の重さ、決断の重さを理解していないと解釈されますもの。とりあえず、そう遠からず現実を思い知る事になるでしょう。
それが王家にとっての爆弾になるか、そうでないかは王太子殿下のお覚悟次第ですわ。
私は元婚約者として、影ながら見守る事と致しましょう。
無能な指導者には有能な副官は必要なものです。
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