20 / 67
20.元側近side
しおりを挟む
「申し訳ありません、父上」
「謝るな」
「私が王太子殿下を止められなかったせいで……」
「お前のせいではない!」
「しかし……」
「殿下が自ら選んだことだ」
「……」
父上の言葉に言い返せなかった。その通りだったからだ。王太子殿下は、あの女を選ばれた。
そうして、私は今日、王太子殿下の側近を辞めた。
私だけではない。今まで殿下の側近として切磋琢磨してきた者達は全員だ。全員が殿下の側近を辞退した。
当然の結果だと人はいうだろう。
王太子殿下に先はないと――――
私は幼い頃から王太子殿下を知っていた。
それこそ側近に選ばれる前からずっとだ。
レーモン王太子は、人目を引いた。
いい意味でも悪い意味でも……。
ただ、私が王太子殿下を気になったのは、容姿が優れているからでも、文武に優れているからでもない。
殿下は兎に角、冷めた子供だった。
幼い頃の私はそれが不思議でならなかった。周囲から愛されて大事に育てられているのに、いつも不機嫌そうにしていた。だからだろうか。殿下の側近は、私も含めて皆どこか距離があった。当時の私は、殿下に仕えるという意味をよく理解してなかったのだと思う。ただ「王太子殿下の側近」と周囲に囁かれることに小気味よく感じていたし、いずれは国を治める国王の側近という肩書はそれだけで魅力的に聞こえるものだ。
だから気付かなかった。
両親が複雑な表情をしていた事を。
父上は内心私が王太子殿下に仕える事を快く思っていなかったのだろう。両親にとって本意ではないことに気付いたのは随分後になってからだ。殆ど、王妃殿下の後押しで決まったと言ってもいい。そもそも何故、当時まだ未成年だった私や他の側近の登用を王妃殿下が望まれたのかは今となってはわからない。何しろ、ご学友という形を取ることなく決まった側近達だ。
選ばれた理由は一体何だったのか。
特別優秀というわけではない。かといって出来が悪い部類でもない。はっきりいって「そこそこ優秀な部類」だ。
側近に選ばれたのは「王太子殿下と同年代」だったことも要因の一つだったのだろう。
それともで同年代なら殿下と上手くやることができるだろうと思ったのだろうか。子供の目から見ても殿下は気難しい性格で、何を考えているのか分からないところがあった。今思えばもう少し踏み込むべきだったと思う。
レーモン殿下は王太子ではあるものの、その地位は不安定で盤石では無かった。
きっと殿下は幼いながらにその事を無意識に理解していたのだろう。
自分の周囲が悪意に塗れている事も……。
周囲は確かに殿下を王太子として敬っていた。
でもそれは、どこか腫れものに触るような距離感。「未来の国王」という曖昧な言葉に人々の期待、困惑があった。私達が考える以上に殿下はそのことを感じ取っていたのだろう。
欲に目が眩んだ者。
名誉に目が眩んだ者。
殿下に気に入られて甘い汁を吸おうとする愚か者。
そんな輩達が悪意をもって殿下に近づくことを牽制するのが私達側近の仕事でもあった。
まさか殿下が、あんな女に惹かれるとは……。
評判の悪い女子生徒だった。
何のために学園に通っているのか分からないような女だった。
あの女のせいで不幸になった学生すらいたほどだ。
私には理解できない。
何故、殿下があんな女に心惹かれたのか。
多分、私がそのことを理解できる日は来ないだろう。
それでも殿下が目を覚ましてくれればいい、そう思った。
「謝るな」
「私が王太子殿下を止められなかったせいで……」
「お前のせいではない!」
「しかし……」
「殿下が自ら選んだことだ」
「……」
父上の言葉に言い返せなかった。その通りだったからだ。王太子殿下は、あの女を選ばれた。
そうして、私は今日、王太子殿下の側近を辞めた。
私だけではない。今まで殿下の側近として切磋琢磨してきた者達は全員だ。全員が殿下の側近を辞退した。
当然の結果だと人はいうだろう。
王太子殿下に先はないと――――
私は幼い頃から王太子殿下を知っていた。
それこそ側近に選ばれる前からずっとだ。
レーモン王太子は、人目を引いた。
いい意味でも悪い意味でも……。
ただ、私が王太子殿下を気になったのは、容姿が優れているからでも、文武に優れているからでもない。
殿下は兎に角、冷めた子供だった。
幼い頃の私はそれが不思議でならなかった。周囲から愛されて大事に育てられているのに、いつも不機嫌そうにしていた。だからだろうか。殿下の側近は、私も含めて皆どこか距離があった。当時の私は、殿下に仕えるという意味をよく理解してなかったのだと思う。ただ「王太子殿下の側近」と周囲に囁かれることに小気味よく感じていたし、いずれは国を治める国王の側近という肩書はそれだけで魅力的に聞こえるものだ。
だから気付かなかった。
両親が複雑な表情をしていた事を。
父上は内心私が王太子殿下に仕える事を快く思っていなかったのだろう。両親にとって本意ではないことに気付いたのは随分後になってからだ。殆ど、王妃殿下の後押しで決まったと言ってもいい。そもそも何故、当時まだ未成年だった私や他の側近の登用を王妃殿下が望まれたのかは今となってはわからない。何しろ、ご学友という形を取ることなく決まった側近達だ。
選ばれた理由は一体何だったのか。
特別優秀というわけではない。かといって出来が悪い部類でもない。はっきりいって「そこそこ優秀な部類」だ。
側近に選ばれたのは「王太子殿下と同年代」だったことも要因の一つだったのだろう。
それともで同年代なら殿下と上手くやることができるだろうと思ったのだろうか。子供の目から見ても殿下は気難しい性格で、何を考えているのか分からないところがあった。今思えばもう少し踏み込むべきだったと思う。
レーモン殿下は王太子ではあるものの、その地位は不安定で盤石では無かった。
きっと殿下は幼いながらにその事を無意識に理解していたのだろう。
自分の周囲が悪意に塗れている事も……。
周囲は確かに殿下を王太子として敬っていた。
でもそれは、どこか腫れものに触るような距離感。「未来の国王」という曖昧な言葉に人々の期待、困惑があった。私達が考える以上に殿下はそのことを感じ取っていたのだろう。
欲に目が眩んだ者。
名誉に目が眩んだ者。
殿下に気に入られて甘い汁を吸おうとする愚か者。
そんな輩達が悪意をもって殿下に近づくことを牽制するのが私達側近の仕事でもあった。
まさか殿下が、あんな女に惹かれるとは……。
評判の悪い女子生徒だった。
何のために学園に通っているのか分からないような女だった。
あの女のせいで不幸になった学生すらいたほどだ。
私には理解できない。
何故、殿下があんな女に心惹かれたのか。
多分、私がそのことを理解できる日は来ないだろう。
それでも殿下が目を覚ましてくれればいい、そう思った。
492
あなたにおすすめの小説
あなたが捨てた花冠と后の愛
小鳥遊 れいら
恋愛
幼き頃から皇后になるために育てられた公爵令嬢のリリィは婚約者であるレオナルド皇太子と相思相愛であった。
順調に愛を育み合った2人は結婚したが、なかなか子宝に恵まれなかった。。。
そんなある日、隣国から王女であるルチア様が側妃として嫁いでくることを相談なしに伝えられる。
リリィは強引に話をしてくるレオナルドに嫌悪感を抱くようになる。追い打ちをかけるような出来事が起き、愛ではなく未来の皇后として国を守っていくことに自分の人生をかけることをしていく。
そのためにリリィが取った行動とは何なのか。
リリィの心が離れてしまったレオナルドはどうしていくのか。
2人の未来はいかに···
【完結】偽者扱いされた令嬢は、元婚約者たちがどうなろうと知ったことではない
風見ゆうみ
恋愛
クックルー伯爵家の長女ファリミナは、家族とはうまくいっていないものの、婚約者であり、若き侯爵のメイフとはうまくいっていると思っていた。
メイフとの結婚が近づいてきたある日、彼がファリミナの前に一人の女性を連れてきた。メイフに寄り添う可憐な女性は、こう名乗った。
「わたくし、クックルー伯爵家の長女、ファリミナと申します」
この女性は平民だが、メイフの命の恩人だった。メイフは自分との結婚を望む彼女のためにファリミナの身分を与えるという暴挙に出たのだ。
家族や友人たちは買収されており、本当のファリミナを偽者だと訴える。
メイフが用意したボロ家に追いやられたファリミナだったが、メイフの世話にはならず、平民のファリとして新しい生活を送ることに決める。
ファリとして新しい生活の基盤を整えた頃、元家族はファリミナがいたことにより、自分たちの生活が楽だったことを知る。そして、メイフは自分が馬鹿だったと後悔し始め、自分を愛しているはずのファリミナに会いに行くのだが――。
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
【完結】高嶺の花がいなくなった日。
紺
恋愛
侯爵令嬢ルノア=ダリッジは誰もが認める高嶺の花。
清く、正しく、美しくーーそんな彼女がある日忽然と姿を消した。
婚約者である王太子、友人の子爵令嬢、教師や使用人たちは彼女の失踪を機に大きく人生が変わることとなった。
※ざまぁ展開多め、後半に恋愛要素あり。
恩知らずの婚約破棄とその顛末
みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。
それも、婚約披露宴の前日に。
さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという!
家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが……
好奇にさらされる彼女を助けた人は。
前後編+おまけ、執筆済みです。
【続編開始しました】
執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。
矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる