【完結】「めでたし めでたし」から始まる物語

つくも茄子

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22.王妃side

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 息子が何を考えているのか分からない。

 息子の選んだ少女。
 何処にでもいる普通の少女。

 あの程度の者と不貞を行ったせいで、アリエノール・ラヌルフ公爵令嬢を失う羽目になったというのに。息子はそのことに危機感すら覚えていなかった。

 感情を表に出さないように必死に自分を抑え込んだわ。
 腸が煮えくり返りそうだけれど、やっぱり息子は愛しい。バカな息子だと思っているのに愛しくてたまらないのだから母親とは不思議なものだわ。

 夫である国王は息子の選んだ少女を新しい婚約者に据えた。
 息子が選んだからだと言う。息子は暢気に喜んでいたけれど、貴男のお父様はそんな甘い人ではないのよ。陛下は確実に息子と少女を破滅に追いやるでしょう。もしかすると二人に近づいて甘い汁を吸おうと考える不埒者たちを一掃しようと目論んでいてもおかしくない。そしてそれは間違っていなかった。

 素行不良の少女が王太子妃になれるはずもない。
 それでも最低限のマナーは必要だわ。

『人は過ちを犯すものだ。間違いを犯さない人間などいやしない。だからこそ過ちを犯した後の行動は大事だ。それによって人は人を正しく評価できる。レーモンは王太子だが国王ではない。挽回のチャンスはある』

 陛下のその言葉の意味が私には分からない。息子を破滅させようとしながら救済処置はあると仰るのだから。矛盾しているとしか思えない。それでも挽回のチャンスに縋りつかなければ息子は破滅の道を知らずに歩かされる。

 王妃として愚かな息子を切り捨てなければならない。
 けれど、母親としての自分がそれを拒否している。可哀想なレーモン。なんて愚かな息子なのだろう。あのような少女を選んだばかりに……。




 ソニア・キューレ。
 彼女は実に分かり易いタイプだった。
 理性よりも本能に忠実。
 欲望に素直なまでに忠実。
 考えるよりも前に行動するタイプ。その行動の結果がどうなるかなど全く考慮していない。そもそも考えが足りない。自分の行為の愚考さに全く気付かない。
 もっとも、至極まともな思考回路を持つ令嬢なら婚約者持ちの男性に言い寄ったりなどしないでしょうね。ましてや、男性を身体で籠絡しようなどとはしないでしょう。貴族令嬢でなくとも有りえない貞操観念の低さだわ。
 残念でしかないでしょうけれど、それがあのソニアという少女なのでしょう。


 正妃になど出来る訳がない。
 側妃や愛妾ですら本来なれない娘である事は誰の目から見ても明らかだった。
 レーモンの妃になったとして、果たして彼女が産むのは本当にレーモンの子供なのか……。誰の種を孕むか分かったものではない少女だった。

 後宮に閉じ込めるしか方法がなかった。



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