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第4話婚約破棄4
しおりを挟む本気でブリリアントは王都を捨てる気だと王太子と二人の側近以外の者達は理解した。
シャイン公爵家の事業は多岐に亘っている。その本拠地は自領。王都で幾ら事業を拡大し成功を収めようとも本拠地を移す事だけはしなかった。この場合、痛手を被るのは王都の方である。ユリウスはその事にすら気が付かないほど愚かな人間になってしまったのかと貴族達は思うと同時に王太子への落胆が隠しきれないでいた。それは王家への失望でもあり、王太子を支える王家派閥への不信にも繋がるからだ。
そもそも、シャイン公爵家の後ろ盾で即位できる立場であるにも拘わらず、それを無視して婚約破棄を申し出てきた時点で王太子失格であった。
「随分な言われようですわ」
「貴様の今までの行いを考えれば当然だ。他にも証拠は数多くある。何か申し開きはあるか。もっとも、あればの話だがな」
(証拠は揃えている。証言する者も多い。貴族の者達もこれで目を覚ますだろう。シャイン公爵家、ブリリアント、貴様たちは終わりだ!)
完全なる勝利を確信しているユリウスは周囲が自分をどのような目で見ているかが分からなかった。それは二人の側近も同じだった。少しでも周囲を見渡せば自分達の状況を理解できただろう。参加者の中には親の仇とでも言わんばかりに自分達を睨みつけている者もいたということを。だがしかし、そんな彼らだからこそ王族の威光が通用すると勘違いしてしまう。彼らは知らない。今この場に居る貴族たちの大半はブリリアント側の陣営だということを。何より、この場で誰よりも強い権力を有しているのがユリウスではなく目の前にいる少女だという事を。
「ほほほ。本当に殿下もお戯れが過ぎますこと」
「なに?!」
「殿下のお言葉だけでは証明できませんわよ。今持ってらっしゃる紙も王家の公用紙ではないようですし……お調べになったのは、そちらに控えている側近の方々かしら?あら?これはおかしなこと。側近の方は殿下と同学年の学友、調査のプロではございませんわ。そんな素人が調べた物を証拠品として提出なさっても何の効力もありませんわよ?それに、陛下の許可無く勝手に公爵家を処罰するなど許されませんわ。そもそもこの場で婚約破棄を宣言するなんて前代未聞のこと。私と殿下の婚約は国王陛下の願いの下で結ばれたものです。それを殿下からの一方的な宣言で無くなるものではありません。これは国王陛下への謀反でしょうか?それとも国王陛下も御存知なのでしょうか?それならば、この婚約破棄は王家の有責でのものと判断させていただきますわ」
「ぐっ……そ、それは……。だが!貴様の悪事は明白だ!この場にいる誰たちも証人となる筈だ!」
「あら、そうなのですか?皆さま」
くるりと周囲に首を巡らせ、ブリリアントが招待客たちに訊ねると、あちこちから王太子への非難の声が上がった。
「ブリリアント様に対してなんと失礼な……」
「いくら王太子殿下とはいえ、このような場で一方的に婚約破棄とは横暴すぎる」
「しかも、冤罪を着せようなどと言語道断!」
「婚約者である令嬢に対してこのような酷い仕打ちをなさるなんて……王家はどのような教育を王太子殿下に施されたのかしら」
「全くです。教育係は何をしていたのやら。この国の将来が不安になるわ」
「この様子では留学先でもナニカやらかしていたのではないか?」
「確かに……」
「三年は長い。だから王家のある国がいいとあれほど……」
「今更言っても仕方あるまい。留学先は一応友好国だ。反対する理由も無かった」
「殿下達は留学先で一体ナニを学んできた事やら」
「側近たちは何をやっているんだ。何故殿下をお止めしない!」
「そうだ!そうだ!」
次々と湧き上がる王太子を非難する声の数々。
ユリウスは予想外な周囲の反応に目を見開いた。それは二人の側近も同じであった。
(こ、こんな馬鹿な事があるか!!?)
ユリウスの計画は完璧なものであった筈だった。だが、実際には完璧どころか、ブリリアントに味方する者ばかり。
(あり得ない!?)
思い描く展開にならずに焦るユリウスと余裕綽々のブリリアントとの温度差は一目瞭然であった。
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