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第12話八年前~ユリウス王子side~
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僕はこのアダマント王国の第一王子に生まれた。
父である国王の子供は僕一人。他に子供はおらず、いずれ、僕が次期国王になる事は決まっていた。立太子こそなされていなかったが、王太子としての自覚はあった。
王太子に決まったと同時に婚約も決定した。
婚約者は、父上の弟であるシャイン公爵の一人娘。
政治的理由で決められた婚約だった。
顔合わせという名のパーティー会場でシャイン公爵に連れられたブリリアントを初めて見た時、「気持ち悪い」と感じた。なにしろ、彼女は真っ黒なのだ。髪も目も黒一色。この国の人間にはない色合い。幼い頃、母上に読んでもらった物語の魔物のようだと思った。
だからという訳ではないが、僕はブリリアントに好意を持てなかった。
彼女と婚約するにあたって母上から引き離された事も原因だ。
何故か、父上から王妃の猶子になるよう命じられた。
『家格的にシャイン公爵令嬢に合わせるためだ』
そういう父上はシャイン公爵夫妻の御機嫌を取るような言動が目立つ。何故、国王である父上が臣下に過ぎない公爵家に頭を下げる必要があるんだ!しかも、それを当然のように受け取る公爵一家にも腹が立つ。一体何様のつもりだ!
『シャイン公爵夫人は帝国の皇女殿下だ。失礼があってはならん』
『ブリリアント嬢と上手くやれ』
『公爵家が後ろ盾になればお前の治世は安泰だ』
父上の言い分も分からなくもない。
帝国の血を王家に取り込む意味も理解している。
シャイン公爵夫人が我が物顔で社交界に君臨しているのも癪に障った。如何に、帝国皇女だとしても嫁いだからには臣下の妻に過ぎない存在ではないか!
しかも、今日はやっと母上とお会いできる日だったというのに――
何故、あんな小娘の主催する音楽会に参加せねばならないのか!
婚約者同士の親交? 貴族との交友? ふざけるな!!
時間の無駄だ!!!
「もう帰るか?」
「ユリウス様、まだ始まったばかりでございます」
「……まだ、あるのか」
「はい」
「こんなもの聴いて何になる? ……招待状には自由参加とあったではないか。もう義理は果たしただろう」
「せめて、もう一曲だけ聴いてからに致しましょう」
「お前は本当に真面目だな。分かったよ、仕方ないな。後、一曲で我慢してやる」
「ありがとうございます」
ジークフリードが言うからな。仕方ない。
母上が心配されて御自分の護衛騎士であるジークフリードを一緒に連れて行くように仰られたのだ。彼の顔を立てるためにも午前中までは聴いてやろう。昼前に帰れば、母上と一緒に昼餉を食べられる。それまでの暇つぶし、と考えればまだ我慢できそうだ。
延々と聴かせられた。
何なんだ!?
あの「少年合唱団」というのは!!
僕と変わらない年齢の……いや、中には明らかに年下の男子もいたぞ!?
同じ男だというのにヒラヒラとした衣装を着せられ女のように甲高い声で歌い踊る。どこから声をだしているんだ?恥ずかしくないのか!女ではないのだぞ!?
「まぁ、愛らしいこと」
「何処の御子息たちかしら?」
「あら、彼らは貴族ではないようですよ。シャイン公爵領の孤児院出身だとか……。なんでも、公爵家の事業の一環らしいですわよ」
「才能ある子供を育てていらっしゃるのね」
「素晴らしいわ」
貴族の会話で詳細が分かった。
ようは、孤児たちを「道化」としているのだ。見世物小屋と一緒だ。珍しい物で客寄せをする。実に貴族的な趣味だ。反吐がでる!
「そういえば、御存知? 陛下が新しい寵妃を作られたようですわ」
「あら、また? 今度は何年持つかしら」
「嫌ですわ。お言葉が悪い」
「気まぐれな陛下の事ですもの、直ぐに飽きられますわよ」
「ふふっ。今度のお相手は今までになく毛色が違っておりますのよ。陛下も何時になく夢中のようで近々『公式愛妾』としてお披露目が催されるようですわ」
「まあ!公式愛妾と言う事は伯爵家以下の家柄ですわね。マオ子爵家の御令嬢が美しいと評判ですけど、その方かしら?」
「いいえ、お相手はベリー子爵夫人ですわ」
「子爵夫人……」
「只の人妻ではありませんわよ。名前はルース・ベリー子爵夫人。旧姓はルース・ヘレ」
「まぁ!あの人気女優の!!ベリー子爵と結婚していたとは知りませんでしたわ」
「嫌ですわ、偽装結婚に決まっていますわよ。流石に国王陛下も平民出身の女優を愛妾にできませんもの」
「納得ですわ」
煩い貴族夫人が。
音楽を聴きにきているのか噂話をしに来ているのか分からんな。
それにしても今度の父上の『気に入り』は市井の出か。物好きなことだ。国王である父上は艶福家として知られている。特に気に入った女性は『公式愛妾』や『側妃』に据えている。それでも後宮に長く居続けているのは王妃を除けば母上だけだ。夫人達が噂するように父上は飽きやすい。興味を失った女性達を次々臣下に降嫁させているのがいい例だ。王家との繋がりの薄い家は例え、王の寵愛を無くした女でも太いパイプになると嬉々として嫁に貰う。
まるで人身売買ではないか!
吐き気がする!!!
父である国王の子供は僕一人。他に子供はおらず、いずれ、僕が次期国王になる事は決まっていた。立太子こそなされていなかったが、王太子としての自覚はあった。
王太子に決まったと同時に婚約も決定した。
婚約者は、父上の弟であるシャイン公爵の一人娘。
政治的理由で決められた婚約だった。
顔合わせという名のパーティー会場でシャイン公爵に連れられたブリリアントを初めて見た時、「気持ち悪い」と感じた。なにしろ、彼女は真っ黒なのだ。髪も目も黒一色。この国の人間にはない色合い。幼い頃、母上に読んでもらった物語の魔物のようだと思った。
だからという訳ではないが、僕はブリリアントに好意を持てなかった。
彼女と婚約するにあたって母上から引き離された事も原因だ。
何故か、父上から王妃の猶子になるよう命じられた。
『家格的にシャイン公爵令嬢に合わせるためだ』
そういう父上はシャイン公爵夫妻の御機嫌を取るような言動が目立つ。何故、国王である父上が臣下に過ぎない公爵家に頭を下げる必要があるんだ!しかも、それを当然のように受け取る公爵一家にも腹が立つ。一体何様のつもりだ!
『シャイン公爵夫人は帝国の皇女殿下だ。失礼があってはならん』
『ブリリアント嬢と上手くやれ』
『公爵家が後ろ盾になればお前の治世は安泰だ』
父上の言い分も分からなくもない。
帝国の血を王家に取り込む意味も理解している。
シャイン公爵夫人が我が物顔で社交界に君臨しているのも癪に障った。如何に、帝国皇女だとしても嫁いだからには臣下の妻に過ぎない存在ではないか!
しかも、今日はやっと母上とお会いできる日だったというのに――
何故、あんな小娘の主催する音楽会に参加せねばならないのか!
婚約者同士の親交? 貴族との交友? ふざけるな!!
時間の無駄だ!!!
「もう帰るか?」
「ユリウス様、まだ始まったばかりでございます」
「……まだ、あるのか」
「はい」
「こんなもの聴いて何になる? ……招待状には自由参加とあったではないか。もう義理は果たしただろう」
「せめて、もう一曲だけ聴いてからに致しましょう」
「お前は本当に真面目だな。分かったよ、仕方ないな。後、一曲で我慢してやる」
「ありがとうございます」
ジークフリードが言うからな。仕方ない。
母上が心配されて御自分の護衛騎士であるジークフリードを一緒に連れて行くように仰られたのだ。彼の顔を立てるためにも午前中までは聴いてやろう。昼前に帰れば、母上と一緒に昼餉を食べられる。それまでの暇つぶし、と考えればまだ我慢できそうだ。
延々と聴かせられた。
何なんだ!?
あの「少年合唱団」というのは!!
僕と変わらない年齢の……いや、中には明らかに年下の男子もいたぞ!?
同じ男だというのにヒラヒラとした衣装を着せられ女のように甲高い声で歌い踊る。どこから声をだしているんだ?恥ずかしくないのか!女ではないのだぞ!?
「まぁ、愛らしいこと」
「何処の御子息たちかしら?」
「あら、彼らは貴族ではないようですよ。シャイン公爵領の孤児院出身だとか……。なんでも、公爵家の事業の一環らしいですわよ」
「才能ある子供を育てていらっしゃるのね」
「素晴らしいわ」
貴族の会話で詳細が分かった。
ようは、孤児たちを「道化」としているのだ。見世物小屋と一緒だ。珍しい物で客寄せをする。実に貴族的な趣味だ。反吐がでる!
「そういえば、御存知? 陛下が新しい寵妃を作られたようですわ」
「あら、また? 今度は何年持つかしら」
「嫌ですわ。お言葉が悪い」
「気まぐれな陛下の事ですもの、直ぐに飽きられますわよ」
「ふふっ。今度のお相手は今までになく毛色が違っておりますのよ。陛下も何時になく夢中のようで近々『公式愛妾』としてお披露目が催されるようですわ」
「まあ!公式愛妾と言う事は伯爵家以下の家柄ですわね。マオ子爵家の御令嬢が美しいと評判ですけど、その方かしら?」
「いいえ、お相手はベリー子爵夫人ですわ」
「子爵夫人……」
「只の人妻ではありませんわよ。名前はルース・ベリー子爵夫人。旧姓はルース・ヘレ」
「まぁ!あの人気女優の!!ベリー子爵と結婚していたとは知りませんでしたわ」
「嫌ですわ、偽装結婚に決まっていますわよ。流石に国王陛下も平民出身の女優を愛妾にできませんもの」
「納得ですわ」
煩い貴族夫人が。
音楽を聴きにきているのか噂話をしに来ているのか分からんな。
それにしても今度の父上の『気に入り』は市井の出か。物好きなことだ。国王である父上は艶福家として知られている。特に気に入った女性は『公式愛妾』や『側妃』に据えている。それでも後宮に長く居続けているのは王妃を除けば母上だけだ。夫人達が噂するように父上は飽きやすい。興味を失った女性達を次々臣下に降嫁させているのがいい例だ。王家との繋がりの薄い家は例え、王の寵愛を無くした女でも太いパイプになると嬉々として嫁に貰う。
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