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第38話四年前~ユリウス王子side~
しおりを挟む学園生活にもようやく慣れてきた頃に父上から舞台の招待状が届いた。新しい公式愛妾が主演するものだった。それだけでも忌々しいと言うのに、舞台作品は小娘が手掛けたものだというではないか!父上からの手紙では「ブリリアント嬢がわざわざ招待状を送ってくれたのだから、必ず参加するように」と締めくくられていた!
まったく、余計な事を!!
あの小娘と女狐の為に僕の貴重な時間を削って劇場に赴かねばならないとは!
だが、これには父上と王妃も観に行くと書かれている。欠席はできない。二人に劇の感想など聞かれでもしたら厄介だからな。
…………やっと終わった。
なんだあの、芝居だか歌だか分からんものは!
しかも途中で踊りだす始末だ!
役者の衣装も露出が高くひらひらしている! なんなのだ!? あれは? 男優など上半身が裸も同然ではないか!!
女は、へ、へそが見えているぞ!?
なんて破廉恥な衣装なんだ!
その上、なんだ?あのダンスは?腰を振りまくっているではないか!!
精神的に疲れたところで小娘に会った。
言うに事を欠いて、女狐に会いにいこうだと!?ふざけるな!!あの女も母上を愚弄した者の一人だ!
小娘に振り返ることなく馬車に乗った。
ジークフリートが心配そうに僕を見る。そんな目で見るんじゃない! ジークフリートが何か言い出す前に「疲れたから寝る。王宮についたら起こしてくれ」と言って瞼を閉じた。
とんだ一日だった。
小娘の事もそうだが。なによりも、あの女狐がチヤホヤとされているのを見るのは不愉快極まりない! あの女が視界に入るだけで吐き気がする。同じ空気すら吸いたくないのだ!身の程知らずの女優上がりの公式愛妾は随分と強かだ。マイナスにも等しい立場から一気に社交界にのし上がった。その背景には小娘の存在がある事は否めない。シャイン公爵家の事業に一枚噛んでいるという話を聞いた。その手腕は認めざるを得ない。だからこそ、腹立たしいのだ! たかが愛妾如きの為に、なぜあそこまでする必要があるのか?全く理解できない。周囲は「ブリリアント嬢はベリー伯爵夫人の才覚を正しく評価している」などと口を揃えて言っているが、貴族どもが小娘と女狐に媚びを売るための方便に過ぎないと劇を観てつくづく感じる。
あんな下賤な女を褒め称える言葉には何の価値もない。女優だと威張っているが娼婦と大して変わらんだろうに。そう考えていると、女狐との会話を思い出した。
『あら?ユリウス殿下は女優と娼婦の区別ができないほど無知なのですね』
『なに!?』
『まあ!何故怒るのですか?私は本当の事を申しただけですわ。確かに、娼婦まがいの事をする役者もおりますけど。もしかして、ユリウス殿下は三文芝居の女優しか御存知ないのかしら?今まで安っぽい芝居しか観た事がないのではありませんか?だからそのような馬鹿げたセリフを臆面もなく言えるんですわ。お気の毒に。今度、私の舞台を観にいらしてくださいな。三流と一流の違いが分かるという者ですわ。宜しいですか、殿下。一流の女優は“芸”を売りますのよ。覚えておいてくださいね。そうでなければ、婚約者のブリリアント様まで殿下のせいで恥をかいてしまいますもの。芸事を嫌うのは結構ですが、その価値を正確に把握しておかなければ後悔なさいますわよ。ユリウス殿下もせっかく良いモノを持っていらっしゃいますのに。ソレを活用しないなんて。なんとも勿体ない話ですわ。殿下、ソレを使えるのは“若さ”という限られた時間の間だけですわ。もて囃されている今のうちにドンドン活用なさいませ』
あの女狐は、僕に顔を使って貴族共に取り入るように言ってきた。
確かに外見は人並み以上に整っている事は自覚している。母上によく似ていると皆が言うからな。だが、それ以上に。いや、男であるため母上よりも叔父に似ているとも言われてきた。恥知らずの男。叔父とすら呼びたくなかった男。女狐が言うのは、この僕にあの男と同じ真似をしろと言っているに等しいものだった。
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