【完結】皇太子殿下!あなたの思い描く「理想の女性」はこの世にはいません!

つくも茄子

文字の大きさ
9 / 20

第9話 騎士の頭痛の種1

しおりを挟む

「レイモンド!!」

 騎士団の部下達に稽古を付けていた処に、皇太子殿下に声を掛けられた。それと同時に振り下ろされる木刀をすれすれでよけ、持っていた木刀を構え直した。

「ちぇっ、よけたか」

 悪戯を失敗して拗ねる処は昔と変わらない。
 もっとも、悪戯にしては度が過ぎるが。

「いきなり何ですか。危ないでしょう」

 下手をすれば大怪我ではすまない。

「そんなにカッカッすんなよ。ちょっとした挨拶だろ?」

「でしたらしてください。いきなり攻撃を仕掛けてくるのは挨拶とはいいません」

「え~~、それじゃあ面白くないじゃん。つまらん!」

「……挨拶に面白いも何もないでしょう」

 今年で十六歳になったとは思えない言葉だ。
 何しろ、この皇太子殿下は隙あらば攻撃してくる。まるでそれが「挨拶」とでも言わんばかりに。あれで手加減しているようだが、皇太子殿下の手加減は他の者にとっては脅威以外の何物でもない。
 
 何度、叱責しても態度を改める様子もなく言うに事を欠いて……。

『不意打ちに対処できるように訓練してやってんだ!有難くおもえ!』

『そのような事は不要です』

『だってさ~、近衛の連中弱すぎじゃね?護衛対象の俺よりも弱いって何だよ?この前、街でぶらついていた時に通り魔に遭遇したら近衛の連中ビビっちまって動かねぇの。で、結局俺が退治したんだぜ?護衛対象に守れらる近衛隊ってなんだよ?』

『ぐっ』

 確かに報告を聞いて呆れかえったものだ。

『俺、護衛いらねぇんだけど』

『そうは参りません。殿下をお守りするのが近衛の仕事でございます』

『いや……寧ろ邪魔なんだよ。足手まといって意味で』

『う!』

 そう言われると立つ瀬がない。
 護衛対象の守られる近衛……情けない。

『近衛隊って軍人と違って見栄え重視だから、ある程度仕方ないっちゃあ、仕方ねぇところがあるけど……アレ酷すぎねぇ?弱すぎ。いっその事、顔と腕っぷしのいい平民を雇いいてた方が効率いいぜ?』

 言い返せない。

『ま、俺様直々に“抜き打ちテスト”してやるよ!』


 そうして始まった一方的な暴力の嵐に近衛騎士団はなすすべも無かった。
 各騎士団団長が束になっても勝てない相手、それが皇太子殿下だった。

 一応、私は皇太子殿下の幼馴染で側近だ。
 そのせいもあってか、皇太子殿下は私の職場でもある近衛の第三騎士団に突進してくることが多い。いつの間にか当然のように居座っている始末。第三騎士団を拠点に他の騎士団の底上げを勝手に始めている。それに抗う術がなかった。


 
 それは今も続いている。
 
「久しぶりに近衛の稽古をつけてやる!」

 そう言うや否や、皇太子殿下は私の部下を勝手に稽古をつけ始めた。


 一時間後。
 そこには倒れ伏した部下の屍の山が積み上がっていた。

「いや~~、前よりも腕を上げていやがるな。これは俺も油断できないぜ!」
 
 ……油断も何も数十人を相手取って圧勝してるんですよ? 嫌味ですか!
 そもそも、第三騎士団は主に皇太子殿下をお守りする近衛なんですよ?
 どうして皇太子殿下の方が強いんですか!
 これでは我々の面目が立ちません!!
 

「レイモンド、明日から避暑にいくからついてこい」
 
「はっ?」
 
「朝の九時に出発だから遅れんなよ!」

「え?」

「じゃ、またな~~」

 いうだけ言うと手を振りながら去って行った。

 皇太子殿下に扱かれ気絶している部下の姿を眺めながら、言われた言葉を頭で復唱した。

 ……避暑に明日の朝九時に出発する。

 今の時期に?
 避暑に行くには些か遅すぎないか?
 いや、その前に皇太子殿下は避暑に行く事なんて滅多にない。
 

『暑けりゃ、魔力を放出して国中を冷たくすれば良いだけだろ?』

『夏に雪降らせれば涼しくなるぞ!』


 自然環境を一切無視した暴挙に出るようなお方だ。「高位精霊の怒りを買う」と叱責しても「それ位で怒る精霊はたかが知れてるぜ!」と鼻で笑う始末。

 そんな方が避暑、だと?
 
 あの皇太子殿下は、一体何を考えているんだ?
 もしかして……何かやらかすつもりか?
 避暑地で?

 理由は不明だが、第三騎士団の主人は皇太子殿下だ。命令とあらば従う他ない。それが理不尽極まりない傍迷惑な命令でもだ。
 




 
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

元平民の義妹は私の婚約者を狙っている

カレイ
恋愛
 伯爵令嬢エミーヌは父親の再婚によって義母とその娘、つまり義妹であるヴィヴィと暮らすこととなった。  最初のうちは仲良く暮らしていたはずなのに、気づけばエミーヌの居場所はなくなっていた。その理由は単純。 「エミーヌお嬢様は平民がお嫌い」だから。  そんな噂が広まったのは、おそらく義母が陰で「あの子が私を母親だと認めてくれないの!やっぱり平民の私じゃ……」とか、義妹が「時々エミーヌに睨まれてる気がするの。私は仲良くしたいのに……」とか言っているからだろう。  そして学園に入学すると義妹はエミーヌの婚約者ロバートへと近づいていくのだった……。

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

悪女と呼ばれた令嬢は、親友の幸せのために婚約者を捨てた

由香
恋愛
婚約者である王太子を、親友のために手放した令嬢リュシエンヌ。 彼女はすべての非難を一身に受け、「悪女」と呼ばれる道を選ぶ。 真実を語らぬまま、親友である騎士カイルとも距離を置き、 ただ一人、守るべきものを守り抜いた。 それは、愛する人の未来のための選択。 誤解と孤独の果てで、彼女が手にした本当の結末とは――。 悪女と呼ばれた令嬢が、自ら選び取る静かな幸福の物語。

【完結】陛下、花園のために私と離縁なさるのですね?

ファンタジー
ルスダン王国の王、ギルバートは今日も執務を妻である王妃に押し付け後宮へと足繁く通う。ご自慢の後宮には3人の側室がいてギルバートは美しくて愛らしい彼女たちにのめり込んでいった。 世継ぎとなる子供たちも生まれ、あとは彼女たちと後宮でのんびり過ごそう。だがある日うるさい妻は後宮を取り壊すと言い出した。ならばいっそ、お前がいなくなれば……。 ざまぁ必須、微ファンタジーです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...