【完結】皇太子殿下!あなたの思い描く「理想の女性」はこの世にはいません!

つくも茄子

文字の大きさ
11 / 20

第11話 騎士の頭痛の種3

しおりを挟む


「シルヴィア様、愛しています!貴女様さえてくだされば他に何も望みません!!」

「トリスタン!」


 目の前で抱きしめ合う男女。
 その光景を見ながら驚く……ことは無かった。寧ろ、「ああ、やっぱり」としか感じなかった。ただただ驚きに固まっている列席者達とは違って私は落ち着いていた。

 まるで今流行りの恋愛小説を舞台にした光景を繰り広げられ、相手の女性が今日の主役である花嫁であったとしても。花嫁を強く抱きしめている男が花婿の皇太子殿下でない別の男であっても。驚きはしない。

 それもそのはず。

 全ては優雅に微笑んでいる皇太子殿下の仕業に他ないからだった。
 半年前のあの日、バレッタ公国に密入国した時から計画を立てていたのだろう。繰り広げられる芝居を眺めながら過去に思いを馳せた。


 

『どこの女性ですか?』

『あ?』

『でん……旦那様のです』

『あれ? 言わなかったか?』

『聞いていません』

『すまんすまん。そう怒るな。折角のが台無しだぞ。相手はバレッタ公国の公女、シルヴィアだ。数日前に母上からシルヴィア公女との婚姻を半年後に命じられたからな』

『……は? それは一体……?』

 結婚相手の顔を拝みにきたという事だろうか?
 だが……何故?

『俺は公女と結婚したくない!だからシルヴィア公女には出奔してもらう!』

『は? 出奔? 公女が……ですか?』
 
『ああ、駆け落ちという名目だな!』

『……もしや、その……公女を誘拐なさるおつもりですか?』

『はぁ!? それは犯罪じゃねぇか! さっきから駆け落ちしてもらうって言ってんだろ?』

 
 これ以上にないムチャクチャな理論を言われた。とりあえず、分かった事は皇太子殿下は公女との婚姻を阻止するためにバレッタ公国に向かっている。その方法が公女を「駆け落ち」させる事らしい。

 だが、問題がある。

『旦那様、駆け落ちは一人ではできない事はご存知ですか? 通常は“恋人”という存在が不可欠だという事を』

『何言ってんだ。当たり前だろう』

 どうやら相手が必要な事は理解しているようだ。
 しかし、公女をどうやって「駆け落ち」させる気なんだ?
 相手の男はどうするんだ?
 その前に、どうやって公女に会う?

 分からない。
 滅茶苦茶の事を言い出した皇太子殿下に私はもう何も言わなかった。
 どう考えても私の手に負えない。



『俺の仕入れた情報じゃ、シルヴィア公女は噂通り美人のようだ。だが、頭の中身は随分とタイプらしい。ちょっと仕込めばすぐに餌に食いつくぞ。ああ、いっそのこと結婚式に盛大にやらかすよう誘導するのも面白いかもな! ババア母上共が腰抜かすぜ! ククッ。そうなれば公国も只ではすまない。小国が大国に逆らばどうなるか身をもって知る事になるだろう。周辺国家にも良い薬になるだろうぜ。ハハハハハ』


 高笑いする殿下を止めなかった私も共犯だろう。

 まさか……。
 まさか、皇太子殿下の作戦がこうも上手くいくとは思いもしなかった!
 あんな現実味のない作戦だったというのに!

 


 

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

元平民の義妹は私の婚約者を狙っている

カレイ
恋愛
 伯爵令嬢エミーヌは父親の再婚によって義母とその娘、つまり義妹であるヴィヴィと暮らすこととなった。  最初のうちは仲良く暮らしていたはずなのに、気づけばエミーヌの居場所はなくなっていた。その理由は単純。 「エミーヌお嬢様は平民がお嫌い」だから。  そんな噂が広まったのは、おそらく義母が陰で「あの子が私を母親だと認めてくれないの!やっぱり平民の私じゃ……」とか、義妹が「時々エミーヌに睨まれてる気がするの。私は仲良くしたいのに……」とか言っているからだろう。  そして学園に入学すると義妹はエミーヌの婚約者ロバートへと近づいていくのだった……。

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

悪女と呼ばれた令嬢は、親友の幸せのために婚約者を捨てた

由香
恋愛
婚約者である王太子を、親友のために手放した令嬢リュシエンヌ。 彼女はすべての非難を一身に受け、「悪女」と呼ばれる道を選ぶ。 真実を語らぬまま、親友である騎士カイルとも距離を置き、 ただ一人、守るべきものを守り抜いた。 それは、愛する人の未来のための選択。 誤解と孤独の果てで、彼女が手にした本当の結末とは――。 悪女と呼ばれた令嬢が、自ら選び取る静かな幸福の物語。

【完結】陛下、花園のために私と離縁なさるのですね?

ファンタジー
ルスダン王国の王、ギルバートは今日も執務を妻である王妃に押し付け後宮へと足繁く通う。ご自慢の後宮には3人の側室がいてギルバートは美しくて愛らしい彼女たちにのめり込んでいった。 世継ぎとなる子供たちも生まれ、あとは彼女たちと後宮でのんびり過ごそう。だがある日うるさい妻は後宮を取り壊すと言い出した。ならばいっそ、お前がいなくなれば……。 ざまぁ必須、微ファンタジーです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...