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第17話 公爵の心配の種2
しおりを挟む皇后の許しを得て国境に向かった。
少年二人組は目立つようでいて目立たない。貴族の格好なら兎も角、冒険者に擬態されたらそれこそ埋没してしまう。皇太子殿下は知恵が回る分厄介だ。
案の定、冒険者の格好で普通の馬に乗った二人組が検問されていた。
「見つけましたよ」
「あっれ~。もう見つかっちまったか」
全く悪びれすことも無く笑っている姿は悪戯に成功した子供の様だ。
「困った方だ」
「へへ」
「お忘れ物ですよ」
「え?」
不思議そうに顔を傾ける皇太子に帝国皇太子の証であるペンダントを渡す。
「いざという時にお使いください」
「ありがとう! やっぱり持つべきものは頼りになる叔父上だ!!」
屈託なく笑う甥っ子には申し訳ないがそれは身分を保証するためだけの物ではない。皇太子の魔力と連鎖反応を起こして居場所が特定できる魔道具である。
その気になれば皇太子が今何処にいるかも解ってしまう優れものだ。この優秀な皇太子に知られないように細工をするのは中々に大変だった。細微に至るまでこりに凝った魔方陣を幾重にも配列し、魔力が漏れないように特殊加工まで施したのだ。そこまでしなければ直ぐにバレてしまう。「心配だから身に付けておくように」と言った処で素直に頷くとも思えない。別の理由付けがいるのだ。
何しろ神出鬼没の皇太子殿下。
転移の術を使われたら追跡は不可能。
だからこそこのアイテムが有効となる。
「アレウス皇太子殿下の気持ちは理解しています。国外にでる許可も皇后陛下から貰って参りました。……ただし危ないことはなさいませんように」
そう告げると私は皇太子の同行者であるレイモンドに視線を向けた。
「殿下を頼む」
その一言だけでレイモンドには通じるだろう。彼は優秀で聡い。きっと役に立ってくれる筈だ。
若干、顔色が悪いが緊張しているという事にしておこう。あの皇太子と長年付き合えるのはレイモンドだけなのだ。幼少から我の強い皇太子は苛烈な性格も含めてレイモンドしか親しい友がいない。誰も皇太子についていけなかったというのもあるが。ここは諦めてもらう他ないのだ。安心するといい。帰国後は出世する。彼は皇太子の右腕になる存在だからな。
こうして私は二人を見送った。
いつの間にか抜かれた背丈が小さくなっていくのを見届けると、死角になって見えない場所に移動してから通信用の魔道具で連絡を取る。
「対象の出国を確認しました。これより尾行を開始してください。……ええ、承知しました。そちらは引き続き調査をお願いします。何か分かり次第、知らせてください。では、また後程……」
魔道具をしまうと、私は踵を返した。
「さて、そろそろ時間ですね」
そう呟くと、私は皇太子達が向かった先とは別の方向に向かって歩き出した。
皇后が報告を待っている。
全てにおいて恵まれた生まれでありながら実はそうでない皇太子。
その甥に幾つかの感情が欠落していると気付いたのは何時だったか。
聡い皇太子は早々に察したのだろう。祖父と父と母親の複雑な関係を、兄弟達との奇妙な関係を。歳を追うごとに狡猾になっていく皇太子。皇后に叱られて、私に褒められて、何処か安堵したような表情を見せる。子供の時から変わらない姿だ。
この旅で皇太子に欠けた部分を埋めるなにかを得られればいいが。
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