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5.執事side
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随分と面変わりなさったものだ。
昔と変わらない美貌。
それなのに纏う雰囲気はまったく違う。
嘗ての高貴さは失われてしまった。
彼はいつまで公爵家の一員のつもりでいるのだろうか……。
とうの昔に、バークロッド公爵家との縁は切れているというのに。
当たり前のようにバークロッド公爵家の人間だと名乗る彼に失望をするしかなかった。
貴男に、公爵家の名を名乗る資格はもうないのですよ?
平民になったという自覚は果たしてあるのだろうか。きっとないだろう。今は名乗る姓すらない。ただの「セオドラ」だというのに。
「そうですな、私も随分と歳を取りました」
「ブレイク……?」
「これは、そんな年寄りの独り言なのですが、当家には『セオドラ』とおっしゃる若君が嘗ていらっしゃいました」
「お、おい……?」
「美しく、賢く、武芸に秀で、およそ天から愛されたかのように素晴らしい才能を与えられておりました。ご両親を始め、一族の方々は若君に大きな期待をしていらっしゃったのです。我々もいずれは若君が立派な当主になる日をそれは楽しみにしていたものでございます」
「……」
「ですが、月日というのは残酷なものでございますね。若君は才に溺れ、身分に溺れ、女に溺れ、酒と暴力に溺れ、当家の次期当主としての自覚と誇りすらなくしてしまったのですから」
「……」
彼は言い返すこともせずに、ただ黙って聞いている。
私の言葉に少しは己を振り返ることができればいいのですが。
「才能豊かな若君は、当家のみならず、貴族社会の恥さらしまで転落してしまわれました。そんな若君を当主に据えることなどできません。そんなことをすれば、バークロッド公爵家は〝愚か者〟の誹りを受けることでしょう。バークロッド公爵を、そして公爵家に仕え従う者達を守るために、若君を除籍いたしました。除籍された若君が『バークロッド』の名を名乗ることは許されません。万が一、名乗りを上げる者がいたとしたら、それは罪人です。三大公爵家の名をかたる不届き者として、私は警察に突き出さねばなりません」
真っ青な顔で立ち尽くす彼は、まるで迷子の子供のようだ。
衝撃を受けているのがよく分かる。
素直なのか、鈍いのか……。
ここまで言わなければ分からないのかと、脱力感さえ覚えてしまう。
三年前の説明では理解できなかったのだと、今更ながらに思い知った。
貴族社会に衝撃と醜聞をまき散らした原因の一人だというのに。
本人からすれば、「ちょっとした放逐状態である」としか思っていないのだろう。
彼の言動からはそういう類の認識が読み取れた。
まさか本当に実家から縁切りされていたとは、考えもしていなかったに違いない。
「お、おれ……は……」
言葉が続かないでいる。
彼のショックははかり知れない。
いかに反りが合わないといっても血の繋がった家族が、「自分を捨てる」という選択をするとは、夢にも思っていなかったことが窺えた。
彼は貴族としてあり得ないほどの甘い考えの持ち主だ。
貴族の、それも公爵家の元嫡男とは思えないほどに甘い。
実の親子とはいえ、一族に有害と判断されれば当主は我が子を切り捨てる、場合によっては処理するということを、想像できなかったのでしょうか?
想像力が著しく欠如しているとしか思えない。
もしかすると理解力も乏しいのかも……。
それは貴族として致命的だった。
わずかな哀愁と、それ以上の呆れを胸に私は彼を見つめていた。
昔と変わらない美貌。
それなのに纏う雰囲気はまったく違う。
嘗ての高貴さは失われてしまった。
彼はいつまで公爵家の一員のつもりでいるのだろうか……。
とうの昔に、バークロッド公爵家との縁は切れているというのに。
当たり前のようにバークロッド公爵家の人間だと名乗る彼に失望をするしかなかった。
貴男に、公爵家の名を名乗る資格はもうないのですよ?
平民になったという自覚は果たしてあるのだろうか。きっとないだろう。今は名乗る姓すらない。ただの「セオドラ」だというのに。
「そうですな、私も随分と歳を取りました」
「ブレイク……?」
「これは、そんな年寄りの独り言なのですが、当家には『セオドラ』とおっしゃる若君が嘗ていらっしゃいました」
「お、おい……?」
「美しく、賢く、武芸に秀で、およそ天から愛されたかのように素晴らしい才能を与えられておりました。ご両親を始め、一族の方々は若君に大きな期待をしていらっしゃったのです。我々もいずれは若君が立派な当主になる日をそれは楽しみにしていたものでございます」
「……」
「ですが、月日というのは残酷なものでございますね。若君は才に溺れ、身分に溺れ、女に溺れ、酒と暴力に溺れ、当家の次期当主としての自覚と誇りすらなくしてしまったのですから」
「……」
彼は言い返すこともせずに、ただ黙って聞いている。
私の言葉に少しは己を振り返ることができればいいのですが。
「才能豊かな若君は、当家のみならず、貴族社会の恥さらしまで転落してしまわれました。そんな若君を当主に据えることなどできません。そんなことをすれば、バークロッド公爵家は〝愚か者〟の誹りを受けることでしょう。バークロッド公爵を、そして公爵家に仕え従う者達を守るために、若君を除籍いたしました。除籍された若君が『バークロッド』の名を名乗ることは許されません。万が一、名乗りを上げる者がいたとしたら、それは罪人です。三大公爵家の名をかたる不届き者として、私は警察に突き出さねばなりません」
真っ青な顔で立ち尽くす彼は、まるで迷子の子供のようだ。
衝撃を受けているのがよく分かる。
素直なのか、鈍いのか……。
ここまで言わなければ分からないのかと、脱力感さえ覚えてしまう。
三年前の説明では理解できなかったのだと、今更ながらに思い知った。
貴族社会に衝撃と醜聞をまき散らした原因の一人だというのに。
本人からすれば、「ちょっとした放逐状態である」としか思っていないのだろう。
彼の言動からはそういう類の認識が読み取れた。
まさか本当に実家から縁切りされていたとは、考えもしていなかったに違いない。
「お、おれ……は……」
言葉が続かないでいる。
彼のショックははかり知れない。
いかに反りが合わないといっても血の繋がった家族が、「自分を捨てる」という選択をするとは、夢にも思っていなかったことが窺えた。
彼は貴族としてあり得ないほどの甘い考えの持ち主だ。
貴族の、それも公爵家の元嫡男とは思えないほどに甘い。
実の親子とはいえ、一族に有害と判断されれば当主は我が子を切り捨てる、場合によっては処理するということを、想像できなかったのでしょうか?
想像力が著しく欠如しているとしか思えない。
もしかすると理解力も乏しいのかも……。
それは貴族として致命的だった。
わずかな哀愁と、それ以上の呆れを胸に私は彼を見つめていた。
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