子育ては難しい~廃嫡した息子が想像の斜め上にアホだった件~

つくも茄子

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6.執事長side

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「執事長」

 後ろから声をかけられ、振り向くと侍女頭が立っていた。
 この侍女頭は、彼をよく知る人物の一人だ。
 奥様同様に口煩いと、彼が苦手にしている人物だった。

「旦那様がそちらの方とお会いになるそうです」
「……本当か?」

 意外な言葉に、私は驚いて聞き返した。
 旦那様が自発的に彼と会うと言い出すとは、どんな風の吹き回しだろう?

「はい。玄関先で喚く方です。また外で騒がれては困るとおっしゃっております」
「そうか」

 侍女頭の言葉に納得した。
 なるほど、そういうことか。
 旦那様が何を考えているのかは、概ね理解した。
 彼は、玄関に居座る前に門番を殴り倒している。
 理由は、屋敷内に入ることを拒否されたからだ。
 旦那様は彼が今度は私に危害を与えると、そう思っているようだ。
 私でなくとも屋敷の使用人に暴行する恐れもあると考えているのかもしれない。
 違うといえないところが物悲しい。

「旦那様からは、執務室に通すよう承っております」
「わかった」

 私は頷くと、振り返って彼を見た。
 ショックに打ちひしがれたまま固まっていたが、私の視線に気が付いたのか、我に返ると、慌てて姿勢を正したのだった。

「執事長、私がご案内いたします」
「……すまないが頼む」
「はい、お任せください」

 旦那様の許可がでたと知ると、彼は満足そうな顔をして侍女頭について行った。
 きっと、「許された」と感じたのだろう。
 それとも「やっぱり切り捨てられたのは間違いだった」とでも思っているのかもしれない。

「はぁ……」

 とんでもなくポジティブな思考に、私は溜息をついた。
 よほど自分に自信があるのか。
 それとも思考回路が常人の理解を超えているのか。
 多分、両方だろう。

「旦那様は大丈夫だろうか?」

 廃嫡したご長男が斜め上に成長なさってしまったことを受け止められるのでしょうか?
 ショックでお倒れになられるのでは……?

「気付け薬をご用意した方がよいだろうか」

 私は、侍女頭達が去った方角を見つめながら、そんな心配をせずにはいられなかったのだった。
 まったく話が通じないのだ。
 いっそのこと、頭を打っておかしくなったと言われた方が納得しただろう。

「奥様がいらっしゃらなくて本当に良かった」

 ご子息の変わり果てた姿を見たらどうなっていたことか。
 怒り狂って罵倒されたに違いない。
 それとも、卒倒したかもしれないな……。
 
「本当にどうしてこんなことになったのか……」

 どこで間違えてしまわれたのか。
 そう考えているのは何も私だけではない。
 屋敷の者なら誰もが自問自答 したことだろう。
 答えはいまだに分からないままだ。
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