子育ては難しい~廃嫡した息子が想像の斜め上にアホだった件~

つくも茄子

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7.変わらない長男1

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 コンコン。
 執務室の扉を叩く音が響いた。
 昼下がりの静謐を破るその音に、私は顔を上げる。
 ついに来たか。

「入れ」

 重い声で命じると、扉が静かに開いた。

「旦那様、例のお方をお連れ致しました」

 侍女頭が恭しく告げ、背後に若者の姿を伴っていた。
 その姿を見た瞬間、胸の奥に冷たいものが走る。
 セオドラ。
 廃嫡されたというのに、彼はまるで何事もなかったかのように胸を張り、執務室に足を踏み入れてくる。
 その無自覚さが滑稽で、同時に私の怒りを呼び覚ました。

「用件はなんだ?散々、玄関に居座っていたのだ。大した用件でないならさっさと去れ。用件があるなら手短に言え」
「……それが聞く態度かよ」

 セオドラは不貞腐れた表情を隠さない。
 それは昔からだった。
 激情家というべきか。
 感情をコントロールすることを学ばなかった。
 いや、違うな。する必要がなかったのだ。

 セオドラのことだ。
 私の態度が気に食わないのだろう。
 久しぶりに会った息子に対する父親の態度ではない――そう思っているに違いない。

『セオドラは天邪鬼な子だわ』
『しかも、飛び切りめんどくさい類のね』
『図体の大きな子供のままなのよ』

 いつだったか、オリビアがセオドラのことをそう言っていたのを思い出した。
 彼女が今の光景を見たら「ほら、めんどうでしょう?」と、冷めた目をして言うに違いない。
 セオドラは、別に親子の感動の再会を望んだわけではないはずだ。それでも、ここまで無関心でいられるのは面白くない、と感じているのだろう。
 確かに。我が子ながら面倒くさいな。
 オリビア、君の評価は正しい。

「こちらは貴様と違って忙しいんだ。一分一秒も無駄にはできない」
「相変わらず仕事中毒かよ? 息子が家に帰って来たっていうのに」
「なにが『帰って来た』だ。お前が勝手に居座っていただけだろう。門番を殴りつけて入ってきたそうではないか」
「あ、あれは……」
「すぐ暴力を振るうのはよせ。門番の中には、あばらを何本も折られた者だっていたのだぞ。お前のやっていることは犯罪だ」

 最初、門番達を殴りつけて突破したとの報告を聞いた時は卒倒しそうになった。
 何かの間違いではないのかと思った。
 まあ、間違いでも何でもなく事実だったのだが。
 それにしても門番から「ここから先は入れられない」と言われたくらいで暴力を振るう。その神経が理解できない。

「な、なんだよ。俺を家に入れなかった奴らが悪いんだけだろ?そ、それに、門番の癖に弱すぎだぜ。あの程度の実力で公爵家の門番だとはな。公爵家の名折れだぜ!」
「彼らは職務をまっとうしただけだ」
「弱いあいつらが悪いだけだろ!」

 癇癪を起こした子供のような反応に、息子の成長のなさを実感した。
 三年前よりも精悍さは増しているが、心は少年のままだ。慣れない市井での暮らしに苦労しているはずなのだが。これはどういうことだ?
 言動そのものが三年前から変わっていない。
 どうなっているんだ?
 とても二十三歳になる大人の男の振る舞いとは思えん。

「貴様を傷害罪で訴えてやろうか」
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