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13.七年前3
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王太子付きの使用人は全員持ち回りとなった。
専属を誰一人としてやりたがらなかったからだ。
『新人には荷が重くて……』
『殿下付きはちょっと……』
『貴族出身ではありませんので、王太子殿下付きには相応しくないかと』
などなど。
引き受けたくない理由に「庶民だから」と言い切った強者もいた。
身元が確かなら平民でも王宮の使用人になれる。
だがまぁ、そういう「庶民」は裕福な出だ。商家の娘が結婚前に箔を付けるために王宮の侍女をする者は多い。
それか片方が貴族の出身かだ。
この場合は、いわゆる庶子というやつだが。
そういったワケアリですら「王太子付きは地雷」だと嫌がる始末だ。まあ、気持ちは分かる。
こちらが細心の注意を払っても王太子自身がやらかしてくるのだ。
しかも責任は全て自分達になる。
彼らが「やってられない」と判断しても致し方なかった。
「責任を追及されないための処置とはいえ……彼らには悪いことをしたな」
持ち回りの仕事だ。
当然、やる気など出るはずもない。
「出世するわけでもない。スキルを磨けるわけでもない。王太子の尻拭いをするだけだからな」
そんな状況では、仕事へのモチベーションも下がる。
もっとも一番の理由はアレだ。
「王太子殿下がそれらを理解していないことだろう」
王太子殿下だけではない。
殿下に近しい者達はまったく気付いていなかった。
学生だからか?
若いからか?
「最悪に最悪が重なるとはな」
一年後、王太子殿下の婚約者であるアーガイル公爵令嬢は、殿下に見切りをつけた。
アーガイル公爵令嬢による「婚約白紙」は国王夫妻を驚愕させた。
世間では、双方の性格の不一致と公表したが、理由は明らかだった。
早々に王太子殿下を切り捨てたアーガイル公爵家は正しかった。
公爵家の後見を得ることができなかった王太子殿下は、他の二家。つまり、アーガイル公爵家以外の二つの公爵家に後見を請わなければならなくなった。
国王に即位する前に、少なくとも二家から後見を取り付けなければならない。
それを怠るとは誰も思わなかった。
真摯に頼めば、私も無碍にはしなかった。仮にも王太子殿下だ。
だというのに……。
セオドラが傍にいたから勘違いをしたのだろうか。
バークロッド公爵家が後見になると――
おかしな話だ。
たとえ、セオドラがバークロッド公爵家の跡取りであっても、次期公爵だとしても、今のバークロッド公爵は私だ。
セオドラではない。
いや、そもそも王太子殿下は間違えたのだ。
媚びを売る相手を――
ガーデン学園の三年間。
大学での二年間。
計、五年間。
自由な時間を満喫していた彼らは判断を誤った。
指摘しなかった周囲も悪いのかもしれないが、自分で判断できる年齢だろう。
民衆から「身分を超えた愛」「平民からの王妃」と言われ、王家に対する人気は増えた。
愚息は「新しい時代の到来だ!」と浮かれていた。
だが、それは「身分を超えた愛」ではない。
王太子の「我が儘」だ。
そして、それを諫めなかった周囲の者達も同罪だ。
愚息とその友人達は「平民が王妃になるぞ!」と声高に叫んで好き勝手振る舞っていた。
大学で知り合った優秀な平民達を味方につけて。
愚息達の考えは半分正しい。
民の声は我々が思っている以上に大きい。
だが、民とは貴族以上に気まぐれだ。
熱しやすく冷めやすい。
今は目新しいものに熱狂的になっているだけにすぎない。
少しでも自分達の理想にあわなければ、すぐにそっぽをむく。
手のひら返しは商人よりも早い。
そのことを理解していなかった。
恐らく、今も理解していないのだろう。
その理解力のなさが今を物語っているというのに。
愚息よ。
民はもうお前達のことなど過去の遺物としている。
もう誰も王太子の話題をださないのが何よりの証拠だ。
熱狂は去った。
残ったものは何もない。
民は、お前達に興味すらない。
いや、それは愚息もどうようか。
目の前にいる愚息にとって市井の民は「自分とは違う生き物」だ。
本人は、自分を「身分制度を良しとしない進歩的思考の持ち主」と思っている節があるし、それを口に出してきた。
『古臭い考えにとらわれない』
『貴族も平民もない』
『人は皆平等だ!』
などと宣っていた。
恐らく、誰かからの入れ知恵だろう。
つるんでいた悪友のうちの誰か。
バカげている。
愚息達がああまで好き放題で来たのは貴族だからだ。
王太子を頂点とし、高位貴族の愚息達が口にしている時点で平等も何もない。
彼らがやりたい放題できたのも、それをぎりぎりまで許されてきたのも王家や公爵家の後ろ盾があったからこそだ。
それがなければ、とっくに潰されていた。
愚息はそんなことも気付いていないのだろう。
無意識で他者を下に見ているということにも……。
専属を誰一人としてやりたがらなかったからだ。
『新人には荷が重くて……』
『殿下付きはちょっと……』
『貴族出身ではありませんので、王太子殿下付きには相応しくないかと』
などなど。
引き受けたくない理由に「庶民だから」と言い切った強者もいた。
身元が確かなら平民でも王宮の使用人になれる。
だがまぁ、そういう「庶民」は裕福な出だ。商家の娘が結婚前に箔を付けるために王宮の侍女をする者は多い。
それか片方が貴族の出身かだ。
この場合は、いわゆる庶子というやつだが。
そういったワケアリですら「王太子付きは地雷」だと嫌がる始末だ。まあ、気持ちは分かる。
こちらが細心の注意を払っても王太子自身がやらかしてくるのだ。
しかも責任は全て自分達になる。
彼らが「やってられない」と判断しても致し方なかった。
「責任を追及されないための処置とはいえ……彼らには悪いことをしたな」
持ち回りの仕事だ。
当然、やる気など出るはずもない。
「出世するわけでもない。スキルを磨けるわけでもない。王太子の尻拭いをするだけだからな」
そんな状況では、仕事へのモチベーションも下がる。
もっとも一番の理由はアレだ。
「王太子殿下がそれらを理解していないことだろう」
王太子殿下だけではない。
殿下に近しい者達はまったく気付いていなかった。
学生だからか?
若いからか?
「最悪に最悪が重なるとはな」
一年後、王太子殿下の婚約者であるアーガイル公爵令嬢は、殿下に見切りをつけた。
アーガイル公爵令嬢による「婚約白紙」は国王夫妻を驚愕させた。
世間では、双方の性格の不一致と公表したが、理由は明らかだった。
早々に王太子殿下を切り捨てたアーガイル公爵家は正しかった。
公爵家の後見を得ることができなかった王太子殿下は、他の二家。つまり、アーガイル公爵家以外の二つの公爵家に後見を請わなければならなくなった。
国王に即位する前に、少なくとも二家から後見を取り付けなければならない。
それを怠るとは誰も思わなかった。
真摯に頼めば、私も無碍にはしなかった。仮にも王太子殿下だ。
だというのに……。
セオドラが傍にいたから勘違いをしたのだろうか。
バークロッド公爵家が後見になると――
おかしな話だ。
たとえ、セオドラがバークロッド公爵家の跡取りであっても、次期公爵だとしても、今のバークロッド公爵は私だ。
セオドラではない。
いや、そもそも王太子殿下は間違えたのだ。
媚びを売る相手を――
ガーデン学園の三年間。
大学での二年間。
計、五年間。
自由な時間を満喫していた彼らは判断を誤った。
指摘しなかった周囲も悪いのかもしれないが、自分で判断できる年齢だろう。
民衆から「身分を超えた愛」「平民からの王妃」と言われ、王家に対する人気は増えた。
愚息は「新しい時代の到来だ!」と浮かれていた。
だが、それは「身分を超えた愛」ではない。
王太子の「我が儘」だ。
そして、それを諫めなかった周囲の者達も同罪だ。
愚息とその友人達は「平民が王妃になるぞ!」と声高に叫んで好き勝手振る舞っていた。
大学で知り合った優秀な平民達を味方につけて。
愚息達の考えは半分正しい。
民の声は我々が思っている以上に大きい。
だが、民とは貴族以上に気まぐれだ。
熱しやすく冷めやすい。
今は目新しいものに熱狂的になっているだけにすぎない。
少しでも自分達の理想にあわなければ、すぐにそっぽをむく。
手のひら返しは商人よりも早い。
そのことを理解していなかった。
恐らく、今も理解していないのだろう。
その理解力のなさが今を物語っているというのに。
愚息よ。
民はもうお前達のことなど過去の遺物としている。
もう誰も王太子の話題をださないのが何よりの証拠だ。
熱狂は去った。
残ったものは何もない。
民は、お前達に興味すらない。
いや、それは愚息もどうようか。
目の前にいる愚息にとって市井の民は「自分とは違う生き物」だ。
本人は、自分を「身分制度を良しとしない進歩的思考の持ち主」と思っている節があるし、それを口に出してきた。
『古臭い考えにとらわれない』
『貴族も平民もない』
『人は皆平等だ!』
などと宣っていた。
恐らく、誰かからの入れ知恵だろう。
つるんでいた悪友のうちの誰か。
バカげている。
愚息達がああまで好き放題で来たのは貴族だからだ。
王太子を頂点とし、高位貴族の愚息達が口にしている時点で平等も何もない。
彼らがやりたい放題できたのも、それをぎりぎりまで許されてきたのも王家や公爵家の後ろ盾があったからこそだ。
それがなければ、とっくに潰されていた。
愚息はそんなことも気付いていないのだろう。
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