【完結】元妃は多くを望まない

つくも茄子

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9.後宮7

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 お茶会を欠席した腹いせか、それとも別の意図があるのかは分からないけれど、どうやら私は後宮の妃たちから無視されているらしい。
 まあ、侍女長から教えてもらうまで全く気付かなかったけど。気が付けというほうが無茶というものだわ。後宮入りした新参者の妃にそれを理解しろと言うのも難しい。

 だって、私、上級妃よ?
 離宮で暮らしているのよ?

 他の妃たちから無視されているといわれても、だからなに?って感じだった。

 中級妃や下級妃とは違う。
 彼女達はある意味で共同生活だから無視されたら辛いのかもしれない。
 個別の宮殿持ちの妃は言われるまで気付かないと思う。そういうものだもの。



 後宮入りして二週間。
 当たり前のようにグーシャ陛下が離宮を訪れた。夜伽にだ。

 ……
 …………沈黙がいたい。

 陛下はさっきから黙ったまま。
 寝室に入ったあとは、寝酒のワインを飲み続けている。
 この人なにしに来たのかしら?

「陛下、私、先に休ませていただきます」

「え!?」

「おやすみなさいませ」

「ま、待て待て、シャーロット」

 さっさと寝てしまおうとベッドに向かう私をグーシャ国王陛下が慌てて止めた。

「なんですか?」

「いや……その……」

「……なにか?」

「そなたは、私に抱かれたくないのか?」

 なにを言っているんだか。
 夜伽にきて酒だけ飲んでいる男のいうセリフではない。
 嫌々きてやったといわんばかりの態度で、好き好んで来ているわけではないことをアピールされてどうしろというのか。それともあれかな?嫌な女を相手にしても縋られたいタイプ?めんどうな……。

「特に抱かれたいとは思いません」

「!!」

 私の返答がショックだったのか、国王陛下は手に持っていたグラスを落とした。
 ワインが絨毯に染みを作る。
 ……明日、洗濯係の侍女たちが悲鳴を上げそうね。

「陛下と閨を共にして懐妊などした日にはローズ妃が黙ってはいないでしょう。私もローズ妃の不興を買ってまで陛下の寵愛を欲しいとは思いません」

「……なにを言っている?ローズはそんな狭量な女ではない」

「そうでしょうか。ローズ妃はです。順序を間違えてはならぬと私に教えてくださったのはローズ妃ですよ?」

「…‥そうか」

 いまいち納得できないといった表情を浮かべていますが、事実なんだから仕方ない。
 まあ、ポッと出の妃よりも、長い付き合いで王女を産んでいるローズの方に信をおいている陛下の気持ちも分かる。

 彼女は陛下が思っているような女性ではない。

 陛下は後宮の噂を知らないのかしら?

 陛下の子供を産むのはローズ妃のみ。
 彼女以外の妃は何故か子をなさない。
 正確には死産や流産が相次いでいる。それが全て偶然なわけがない。


 その後も陛下は夜伽に訪れるものの、私に指一本触れることはなかった。



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