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九話
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到着したのは、ホテルの最上階にある夜景の見える高級レストランだった。
窓際の席に案内され、腰を下ろす。
「このお店知ってます。すごく人気のお店ですよね。よく予約取れましたね」
「そうなんです。普段居酒屋しか行かない俺でも知ってる有名な店ですから、めちゃくちゃ頑張りましたよ! てのは嘘で……今日景子さんと約束した後に、ダメ元で電話してみたら、『たまたま今キャンセルが出た』って言われたんですよ。すげぇラッキー!」
「えー! そうなんですか!? じゃあ私もすごいラッキーなんですね」
窓の外には溜め息が出るほどの絶景が広がり、景子の気分を高揚させた。
運ばれてくる料理は芸術作品のように見た目も美しく、味にも感動した。美味しいワインと雰囲気に酔って心地よい気分になり、煌めく夜景が贅沢な気分をより一層盛り上げてくれた。
景子はふと、先程のことを思い出して聞いてみる。
「さっきコンビニの前で『その気がなければ、今日はこれで解散しましょう』って言ってたけど、もしそうなってたら、どうしてたんですか?」
「そりゃもう……泣きながら二人分食べて帰りますよ。デザートまでしっかり。こんなとこ、もう来れるかわかんないし……あれはほんと、命がけの賭けでした」
隼人は苦笑いしていた。
「命がけ……」
景子は呟いた。
「ん?」
「あの時もそうでしたよね。男の子抱きかかえた時……」
「ああ……あの時、景子さん近くにいたんですよね?」
「ええ、すぐ横に」
「あの日、あの時間に、あんなことなかったら、景子さんは俺に気付いてなかったってことですよね?」
「……多分」
言ってからしばらく黙ったまま、また二人で夜景を眺めた。
「今井様」
ウェイターから声が掛かった。
「そろそろデザートお持ち致しましょうか?」
「ああ……はい。お願いします」
隼人が答える。
「わあ、楽しみー!」
言った景子は、今日一番の笑顔だったかもしれない。
「景子さん、笑うと堪んないっす」
「え?」
「最初、すげぇクールな人だと思ってたから」
「ああ……私、人見知り酷いんですよね」
景子は苦笑いした。
「そのギャップが堪んないっす」
どう答えていいのかわからず俯くと、「そういうところもです」と言われ、景子の身体は一気に熱くなり、心臓が早鐘のように打つ。
「お待たせ致しました」
デザートがテーブルに並べられる。
「わーあ! 可愛いー!! 食べるの勿体無いですね……食べるけど!」
言ってから、褒められた笑顔を隼人に向けた。
景子のデザートプレートにはチョコレートソースで文字が書かれていた。
「何て書いてあるんだろう。レ……? リ……? 英語?」
隼人に尋ねてみる。
「フランス語……じゃないかな。俺は読めないけど」
「あ、そっか。ちょっと調べてみますね」
景子はバッグからスマホを取り出した。
「……あ」
恥ずかしさで顔を上げれず上目遣いでチラッと見ると、優しく微笑む隼人と目が合った。
Rencontre miraculeuse "奇跡の出会い"
Je t'aime. "好きです"
「そういうことです」
店を出て、駅に向かって歩く。
景子の手は、しっかりと隼人に握られていた。
隼人の気持ちが手の平から伝わってくる。
ふと景子は足を止めた。
「どうしたんで――」
言いかけた隼人の唇を景子が塞いだ。
ゆっくりと唇を離すと、隼人は薄く唇を開いたまま固まっていた。
「そういうこと……です」
景子が口にすると、隼人は安堵の表情を浮かべてから笑顔を零した。
「本当は、私が先に一目惚れしたんです。恥ずかしくてなかなか言い出せなくて。あの日見た隼人くんの笑顔に惚れちゃいま――」
今度は隼人から優しいキスが落とされた。
【完】
窓際の席に案内され、腰を下ろす。
「このお店知ってます。すごく人気のお店ですよね。よく予約取れましたね」
「そうなんです。普段居酒屋しか行かない俺でも知ってる有名な店ですから、めちゃくちゃ頑張りましたよ! てのは嘘で……今日景子さんと約束した後に、ダメ元で電話してみたら、『たまたま今キャンセルが出た』って言われたんですよ。すげぇラッキー!」
「えー! そうなんですか!? じゃあ私もすごいラッキーなんですね」
窓の外には溜め息が出るほどの絶景が広がり、景子の気分を高揚させた。
運ばれてくる料理は芸術作品のように見た目も美しく、味にも感動した。美味しいワインと雰囲気に酔って心地よい気分になり、煌めく夜景が贅沢な気分をより一層盛り上げてくれた。
景子はふと、先程のことを思い出して聞いてみる。
「さっきコンビニの前で『その気がなければ、今日はこれで解散しましょう』って言ってたけど、もしそうなってたら、どうしてたんですか?」
「そりゃもう……泣きながら二人分食べて帰りますよ。デザートまでしっかり。こんなとこ、もう来れるかわかんないし……あれはほんと、命がけの賭けでした」
隼人は苦笑いしていた。
「命がけ……」
景子は呟いた。
「ん?」
「あの時もそうでしたよね。男の子抱きかかえた時……」
「ああ……あの時、景子さん近くにいたんですよね?」
「ええ、すぐ横に」
「あの日、あの時間に、あんなことなかったら、景子さんは俺に気付いてなかったってことですよね?」
「……多分」
言ってからしばらく黙ったまま、また二人で夜景を眺めた。
「今井様」
ウェイターから声が掛かった。
「そろそろデザートお持ち致しましょうか?」
「ああ……はい。お願いします」
隼人が答える。
「わあ、楽しみー!」
言った景子は、今日一番の笑顔だったかもしれない。
「景子さん、笑うと堪んないっす」
「え?」
「最初、すげぇクールな人だと思ってたから」
「ああ……私、人見知り酷いんですよね」
景子は苦笑いした。
「そのギャップが堪んないっす」
どう答えていいのかわからず俯くと、「そういうところもです」と言われ、景子の身体は一気に熱くなり、心臓が早鐘のように打つ。
「お待たせ致しました」
デザートがテーブルに並べられる。
「わーあ! 可愛いー!! 食べるの勿体無いですね……食べるけど!」
言ってから、褒められた笑顔を隼人に向けた。
景子のデザートプレートにはチョコレートソースで文字が書かれていた。
「何て書いてあるんだろう。レ……? リ……? 英語?」
隼人に尋ねてみる。
「フランス語……じゃないかな。俺は読めないけど」
「あ、そっか。ちょっと調べてみますね」
景子はバッグからスマホを取り出した。
「……あ」
恥ずかしさで顔を上げれず上目遣いでチラッと見ると、優しく微笑む隼人と目が合った。
Rencontre miraculeuse "奇跡の出会い"
Je t'aime. "好きです"
「そういうことです」
店を出て、駅に向かって歩く。
景子の手は、しっかりと隼人に握られていた。
隼人の気持ちが手の平から伝わってくる。
ふと景子は足を止めた。
「どうしたんで――」
言いかけた隼人の唇を景子が塞いだ。
ゆっくりと唇を離すと、隼人は薄く唇を開いたまま固まっていた。
「そういうこと……です」
景子が口にすると、隼人は安堵の表情を浮かべてから笑顔を零した。
「本当は、私が先に一目惚れしたんです。恥ずかしくてなかなか言い出せなくて。あの日見た隼人くんの笑顔に惚れちゃいま――」
今度は隼人から優しいキスが落とされた。
【完】
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