恋愛の醍醐味

凛子

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「ちょっと、瑛大えいた君! 今、あの女見てたでしょ!」
「はあ!? 見てないよ!」
「絶対見てたよ!」
「見てないって!」

 女に目がいってしまうのは、男の本能だということを、萌々香ももかはわかっていた。オスには子孫をより多く残そうとする本能が備わっていて、ほぼ無意識にそのような行動をとるらしい。
 けれど、わかっていても腹が立つ。


「瑛大君、次の休み何処か出かけようよ」
「うん」
「瑛大君は何処か行きたいところある?」
「僕は何処でもいいよ」

 何処でもいい、何でもいいと、いつも決定権を委ねてくる男は嫌いだ。

「じゃあ……フランス!」
「うん」
「いいの?」
「……いいよ」
「ちょっとぉ! 何が『いいよ』だよ! 全然聞いてないじゃん! スマホ置いてよ」

 片手間で話を聞く男も嫌いだ。


「真由ちゃんがさぁ、彼氏に手料理を作りたいと思って、ネットの質問コーナーに『男性が喜ぶ手料理は何ですか?』って書き込んだらね、『そんなの好みによるのでは?』って回答されたんだってー」
「そりゃあそうだろ」
「えーっ、酷くない!?」
「だって、結局食べるのは真由ちゃんの彼氏なんだろ? それなら、彼氏に聞くのが一番早いって話だよ」

 全くわかっていない。女はそんな答えを求めていないのだ。出会った頃は、しっかり者な彼に惹かれたけれど、会話や思考が論理的な男は面白みがない。


「萌々香、ごめん! 土曜のデート駄目になった」
「そうなんだぁ……仕事入っちゃった?」
「いやぁ……実は、釣りに誘われてさぁ。最近ずっと断ってばっかりだったからさぁ。たまには行きたくて」
「えーっ、だって私の方が先に約束してたじゃん!」
「そうなんだけど……ごめん!」

 そのくせ、平気で友達を優先したりする。自分勝手な男だ。
 けれど、そんなことで怒っている訳ではなかった。萌々香が許せなかったのは、その日が萌々香の誕生日だということを瑛大が完全に忘れていたことだ。
 付き合いが長くなると仕方ないことなのかもしれない。いや、でも彼女の誕生日を忘れるなんて致命的だ。ここ最近は、当たり前の存在に成り下がっていて、自分の優先順位がどんどん下がってきているように思う。女の子扱いもしてくれなくなったし、『好き』なんて言葉も長らく聞いていない。そろそろ潮時だろうか。

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