恋愛の醍醐味

凛子

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「別れよう」

 積もり積もった不満が、萌々香を暴走させた。瑛大は別れたくないと言ったが、萌々香は聞く耳を持たなかった。
 その後も何度か着信があったが無視し続けた結果、瑛大からの連絡は途絶え、その後どうしているのかはわからなかった。

 それから一ヶ月もしないうちに、新しい恋人が出来た。自分はモテるほうだ、と萌々香は思う。

 新しい恋人は優太といい、文字通り優しい男だった。デート中に他の女に目を向けるようなこともなく、萌々香しか眼中にないような男だった。そしてデートの行き先はいつも彼が決めてくれたが、行く先々で問題が発生した。
 人気のテーマパークへ行けば、年に一度の休園日だったり、初めてのドライブデートは、高速道路でエンストを起こした。予約のとれない隠れ家レストランの予約が奇跡的にとれたと思えば、当日車が大渋滞に巻き込まれて時間に間に合わず、せっかくとれた予約をキャンセルする羽目になった。

『持ってない男』なのかもしれない。

 萌々香の話には手を止めて耳を傾けるが、いつの間にか話がすり替わっていて、逆に萌々香のほうが彼の話を延々と聞かされていることがよくある。
『聞いて欲しがり男』なのだ。口数が多いというより、四六時中喋っていて全く落ち着きがない。これが女友達ならば問題ないのだけれど……。
 恋人とは毎日でも会いたい、と萌々香は思う。会って癒されたい。
 女友達に癒しは求めない。時々会って、着地点のない話を好き勝手喋って各々のストレスを発散する。話の中身なんてなくても、女は共感しながら会話を繋げていく。それでいいのだ。

 ある日、いつものようにいつの間にか話題がすり替えられ、彼の話を聞かされていた萌々香は、ふとショーウィンドウに映る自分の姿を目にして愕然とした。楽しいはずのデート中なのに、酷く疲れているように見えたからだ。
 彼は確かに優しいが、全てを受け止めてくれる器の大きさや男らしさを感じたことはなく、癒し効果もないようだった。
 
 何かが違う。

 結局彼との交際は一ヶ月も持たなかった。

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