初恋の人

凛子

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七話

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「康ちゃん、好き……」

 結愛は呟くように言った。

「どうした? 俺も大好きだよ。生まれた時からずっとだ。もしあいつが被害届でも出せば、俺は暴行罪か傷害罪で刑罰受けるかもしれないけど、それでも構わない。結愛を傷付ける奴は絶対に許さない。でも……俺の好きは結愛のそれとは違う」

 康史はきっぱりと言い放った。
 結愛は俯いて唇を噛み締めた。
 勿論わかってはいたけれど、はっきりと口にされると胸が苦しくなった。

「康ちゃんは私のこと、恋愛対象としては見れない?」

「今まで一度もそんな風に見たことはないよ」

「……それでもいいから」

「え?」

 康史が戸惑いの表情を見せた。

「それでも康ちゃんと一緒にいたいの。康ちゃんの好きが、親心でも兄心でも何でも構わない。私を思ってくれる気持ちには変わりないから」

「結愛……」

「康ちゃんは、あの人と……年末に一緒にいたあの人と結婚しちゃうの? 康ちゃんが誰かのものになっちゃうのは絶対に嫌なの!」

 結愛は正直な気持ちをぶつけた。

「嫌なのって言ったって……」

「康ちゃんのお嫁さんにしてください」

「……」

 康史はこめかみに指を当て困惑しているようだった。
 しばらく黙り込んでいた康史は大きな溜め息を吐き、半ば呆れたような表情を見せた。

「そんなこと言う奴いないだろ。……結愛をそんな風にしてしまったのは、俺のせいなのかな」

 康史は微苦笑しながら続けた。

「彼女とはあの後すぐに別れたよ。自立したしっかりとした女性でね、彼女には俺は必要ないと思ったんだ。一人で何でも出来る人だったからね」

「私には康ちゃんが必要だよ……」

「勿論、俺も大切に思ってる。結愛はかけがえのない存在だよ」

「……うん」

 康史がそう言うであろうことはわかっていた。

「結愛? 俺がもし結愛と一緒になったら、絶対に結愛を手離すことはないよ。今さら、結愛のどんなことを知ったって嫌いになるなんてことはないから。ただ、俺は結愛が幸せになるのをどうしても見届けたいんだ。言ってる意味、わかるかい?」

 結愛は小首を傾げた。

「俺と結愛が一緒になるってことは、何があっても絶対に別れることが出来ないってことなんだよ。やっぱり無理でした、では済まないんだ。もしも別れることになった時は、もう元の関係には戻れないだろうし、二度と会えなくなるかもしれない。それは絶対に困るんだ。結愛にそこまでの覚悟があるかい?」

 結愛は涙を堪え、はっきりと答えた。

「勿論。それが、ずっと私の望んでいたことだから」

 結愛はバッグの中からポーチを取り出すと、中に入っていた小さな紙袋の中身を丁寧に取り出した。
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