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江戸の大食い対決
しおりを挟む大食いの伊之助
むかしむかし、江戸の浅草、仲見世の裏手に大盛りで有名な蕎麦屋があった。そこにフラリと現れたのが、町で噂の大食い男、伊之助だ。こいつぁ、ガリガリに痩せてんのに、腹ん中に黒い穴でもあんのかってくらい食う。朝から晩まで何かしら口に入れてるのに、まるで風が吹き抜けるように、食い物が消えちまう。天下一品の食いっぷりよ!
伊之助、暖簾くぐってドッカリ座る。「おやじ、この店の蕎麦、全部くれや! 」
店主のおやじ、目をパチクリ。「全部!? 伊之助さん、うちの蕎麦は一杯でも腹にたまるぜ?」
「ハハッ、余計なお世話だ! さっさと持ってきてくれ!」
おやじ、仕方ねえとばかりに蕎麦を茹で始める。ざる蕎麦一枚、ツルツルッと長兵衛の前へ。長兵衛、箸を持つやいなや、まるで龍が雲を飲み込む勢いで、ズズズッ! 一瞬で平らげる。「おやじ、次!」
2杯、3杯、10杯……。伊之助、風が吹くように蕎麦を吸い込む。店ん中の客、ポカンと口開けて見てる。子供が「母ちゃん、あの人、大食いの鬼だよ!」と叫べば、親父衆が「いや、鬼もビックリだ!」と笑う。
十杯目あたりで、おやじが汗だくで言う。「長兵衛さん、蕎麦、そろそろ底つくよ。どうする?」
そこへ、暖簾をガバッとくぐって、ドスドス入ってきたのが、町一番の大食い自慢、力蔵だ。牛もビックリな巨漢で、飯屋で釜ごと飯を平らげたなんて噂の男。「おや! 長兵衛、てめえが大食いの噂の野郎か! 俺の腹は底なしだ。力蔵に敵う奴はいねえ! ここで勝負だ!」
長兵衛、ニヤリと笑う。「へえ、力蔵か。見かけ倒しかどうか、試してみな! 俺の腹も負けちゃいねえ!」
見物人、ワッと沸く。「伊之助、すげえ!」「力蔵、負けるな!」と大騒ぎ。客の一人が「どっちが勝つかな? 賭けようぜ!」と盛り上がる。
おやじ、たまげつつも「こりゃ商売繁盛だ!」とばかりに蕎麦を茹でまくる。まずは両者にざる蕎麦五杯ずつ、ドン! 長兵衛、ズズズッ! まるで嵐が吹くように一瞬で平らげる。力蔵も負けじとガツガツ食うが、ちょっとモタモタ。「おい、力蔵、蕎麦が逃げるぞ!」と客が野次る。力蔵、ムキになって「うるせえ! 俺の腹はまだまだだ!」と返す。
おやじが叫ぶ。「お、おい、伊之助さん、力蔵さん、蕎麦がもうねえ! どうする!?」
伊之助、目を光らせて言う。「なんでもいい。次は何だ?」
おやじ、ニヤリと笑う。「よし、こいつはどうだ! うどんだ! 讃岐の国から伝わった、太くてコシのある麺だぜ!」
うどんがドンと出てくる。伊之助、ズルズルッ! まるで大蛇が獲物を呑む勢い。力蔵も頑張るが、だんだん顔が真っ赤に。「力蔵、顔がうどんより白くなってるぞ!」と客が囃す。力蔵、「まだまだだ!」と強がるが、息が上がってる。
うどんも底をつき、おやじが奥から秘密兵器を引っ張り出す。「お前ら、こいつを食ってみな!」 ドン! と出てきたのは、近頃江戸で噂の「支那そば」、つまりラーメンだ! 丼からモリモリ溢れるヤサイ、ニンニクの匂いがプンプン、油ギトギトのスープ、麺は太くてゴワゴワ。しかも「ヤサイニンニクマシマシ」だ! 客が鼻を摘まんで「何だ、この匂い! 支那の国から来た化け物か!?」と騒ぐ。
おやじ、ニヤリと笑う。「これ食えたら、ただでいいぜ!」
力蔵、丼見てビビる。「お、おい、こんな山みてえな麺、食えるかよ!」 だが伊之助、目をキラキラさせて「こりゃいいや! 麺も人生も、マシマシが一番だ!」と箸を突っ込む。ズズズッ! ヤサイが飛び散り、ニンニクが宙を舞う。スープまでグビグビ飲み干し、丼を空にするたび「おやじ、次!」と叫ぶ。一杯、二杯、三杯……。
力蔵、とうとうラーメン一杯で箸がピタリと止まる。腹パンパンで「うう……こんな大食いがいるなんて…」と座り込む。
伊之助はラーメン五杯目もペロリと平らげると、力増に向かってニヤリと笑って言う。「もう食わねぇのか?」
力蔵は諦めたように一言。
「あぁ、もう十分、面食らっちまった」
(おしまい)
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