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第1章 諸事情により冒険者になりました
3.いつものセットと気まぐれ
しおりを挟む(そうだ、今日はセカイさんの所に行くかな?)
もともと、何日に行くと決めているわけではない。ただ、だいたい1ヶ月に1回で良いと言われているのでそうしているだけだし、あとは冒険者証が失効しないように気をつけているだけだし。失効して受付で余計な時間を取られたくない。本音を言えば、身分証の問題さえなければ冒険者証は要らないんだけどな。先日思い出したので神棚作戦を敢行したのだが、敢えなく失敗に終わったので(やっぱりとか思ったり思わなかったり)、ここはやはり出かけるべきなのだろう。
最近は捕獲術と魔法の呪文の研究に夢中になってしまって、ついつい街まで行くのが面倒くさく思えていた。
(たまには体を動かしたほうがいい気もするし)
つらつらと自分に言い聞かせて、アイテムボックスから外出用の服を出して支度をした。とは言っても、服の上から、街に行く時のための灰色のローブを羽織るだけだ。
◇◇◇
光虫たちに「行ってきます」を言ったのだが、何匹かはついてきたがったので許可を出した。5匹の光虫のうち1匹は私が羽を治してやった子だと思う…何故か治療後に体が2回りくらい大きくなってきて、もう他の光虫よりも大きめなくらい。あの儚げな雰囲気は全く無い。むしろ1番元気で光が強い。いいことだ。本来は夜行性の光虫だが、私が捕獲したことでその辺りの生活リズムは私と変わらなくなっている気がする。体調不良はないようなので、しばらく様子見だ。
出発後は、しばらくは徒歩でいつもの売り物を探しながら歩く。最近探索術と鑑定術を組み合わせて、ソナーのようにして目当てのものを探す方法を見つけたので、こんなやり方が可能になった。キノコの群生から、必要な分だけを採取する。実はアイテムボックス内に最初から同じものがあることはあるのだが、それらは何故か寸分違わず同じ形。味はとても良いのだが、大量に出して並べると…天然物と比べてあまりにも不自然すぎる。だから、できる限りこうして直に集めることにしているのだ。
「あら、珍しいキノコだ」
群生地の外れの方、苔に覆われた倒木から、白っぽいキノコが生えている。近づいてみると、レースのスカートのように丸く傘を広げた綺麗な形だ。前世で似たような形のキノコは見た気がするが…鑑定してみるかな。
【ギンダケ】食用可。美味。大変珍しい。薬の材料としても貴重。
「ふうん。アイテムボックスにもあるのかな?」
アイテムボックス内を検索すると…ある。と言うことは、珍しいとはいえそれなりに流通しているのだろう。
「まあいいか。たまには」
私はそれも採取して、とりあえずアイテムボックスに入れておく。道々薬草も採って、その辺のヒバに似た葉もキノコの緩衝材に採取する。光虫がふよふよと葉っぱの場所を教えてくれたので助かった。
「ありがとう」
お礼を言うと、光虫たちがクルクルと回る。最近嬉しい時はそうするようになった。それを眺めながら、アイテムボックスからキノコ用のカゴをいくつか出して、葉っぱをつめてから丁寧にキノコを詰める。ちなみに、葉っぱを入れるとキノコに傷が入らなくていいよと教えてくれたのはアーバンさんだ。お陰で良い値段で取引してくれるようになった。正直お金は要らないのだけど、その気遣いが嬉しかったので以後そうしている。背負い籠を出して、キノコのカゴをつめて、1番上に薬草用の籠を入れて…準備完了だ。
「ガルダまで転移するけど…一緒に行く?」
光虫たちに問いかけると、彼らはそれぞれローブの中に潜り込んで来た。
「それじゃ、行くよー」
ガルダから1キロほど離れた、街道からも程よく離れた場所、転移の目印をマップ上につけて、その辺りには軽く認識を阻害する半径1メートルほどの空間を作ってある。そこを正確にイメージすればするほど、転移は楽になる。私が認識した物と、その場を流れる空気を繋げるイメージをすると良い気がする。
「転移…バルガまで」
多分言葉に出さなくても良いのだろうけど、言葉に出した方が具合がいい。
(呪文って、そういうことなのかな…)
口に出した瞬間に一瞬だけ浮遊感に襲われるが、慣れてしまえばなんてことはない。問題は光虫たちだが…
「あなたたちは大丈夫?」
ローブの広い袖口に捕まっていた子に話しかけると、問題なし!と光った。
「私も出来るだけ気をつけるけど、念のためにあなた達にも小さく結界を張っとくね」
問題なし!と光虫達が小さく光った。まるで、かくれんぼをする子供のように思えて、ちょっと笑ってしまった。
「じゃ、街まで歩くよ」
今日もいい天気だ。
(用事はさっさと済ませて、市場とか商店街を眺めてから帰るかな)
今日は珍しく、まだ朝早い。市場で光虫達の好きな物を探してみるのも良いかもしれない。森の中の冷たい空気をすうっと吸い込んで、私は通いなれた道を歩き始めた。
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