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第2章 繋がりは繋がっていく
15.呪いの正体とは
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結果的に言うと、サブマスは7時間かけて所有者鑑定が出来るようになった。とは言っても、1時間半おきに30分ずつの休憩を挟んで、魔力の回復を見ながらだったのだが、それでもちょっとキツそうだった。何度か治癒をかけたり、目眩を感じたときには自分で懐から魔力薬を出して一気飲みしたりしていた。
途中で、キツイならまた明日以降教えるから、と提案してみたのだが、現侯爵から息子を留め置くなという抗議のお手紙を持った伝信鳥が再三来ていたらしく、なんと辺境伯の所にも使いの者が押し掛けているとのことで、辺境伯のところからも、何か証拠は無いのかと尋ねられていたらしい。
「アイツら、どうやら娼館だけじゃ飽き足らずに、酒場の娘やら食堂の娘やらにも手を出そうとしてたらしくてさ。たまらずに店側が娘を隠したら、店でもネチネチやらかしたらしいんだよ」
「辺境伯閣下も注意したらしいんだが、そしたら家名を出してやりたい放題さ」
「閣下の騎士団の武器の購入と運搬にかかる税を引き上げたり、自領で停めていたりしているようです」
思っていたよりも『親も親』だった…。
「伝信鳥の費用だけでもいくらになるんだろうな。冒険者の稼ぎなんざ、小遣いにもならんだろうよ」
「ですから」
サブマスが苦笑した。
「私も、私のためにこれを身につけたいのです。バルガの平和のために、隣接する我が領地のために、大切な家族のためにも。私の我儘です」
そして、久しぶりに楽しいのです。そう言って笑うサブマスの頭を、カイムとイシュが撫で撫でしていた。
サブマスが1番つまづいていたのは、紋様から情報を翻訳する際に、情報に集中すると紋様が消えてしまう所だった。
「何でだろう…」
魔力の操作は私よりも上手いくらいのサブマスなのに。考えていて、思い当たった。
「サブマス、本のページを捲るような感覚で情報を見ていませんか?」
「え、ええ。いつもの鑑定だとその感覚で…」
「では、こんな感じで…」
私は、手元の紙束に、図鑑の説明ページのように真ん中の絵から吹き出しが出ているような図を書いてみせた。
「常に紋様がある事を意識すればどうでしょう?」
「ああ…!」
要領を掴んで仕舞えば、本当に早かった。もともとサブマスは魔法の適性が本当に高いのだろう。
「…見えました。アーバン、マッジ工房の剣なんて、いつ手に入れたんです?」
ギルマスとアーバンがよっしゃぁ!と拳を握りしめていた。
(男の人って、いつまでも一部男の子だよね)
その後、暗器の使用者の名前が鑑定された。侯爵子息の従者で……彼こそが、本来はランスロット・ヤクドルだったはずの、エドガー・トリル。
それからナナリーさんの衣服の麻痺毒魔法、ダンさんの背中から検出された矢毒用の麻痺薬は、もう1人の従者のパトリック・ダクワーズの物だった。
◇◇◇
サブマスはどうやら昨晩作れる限りの書類をもう作っていたらしい。ギルド本部に緊急用伝信鳥を数羽送り、急ぎ辺境伯に証拠をまとめた書類を持っていくと言って走っていった。
「ギルマスは行かなくて良いのですか?」
「アイツらがギルドの中にいるからな。俺の魔力で外からドアを施錠してるから、ちょっと出られないんだわ」
そう言ってどっかりとソファに座った。
「なあ」
「はい」
「それで、お前さんの疑問は解消出来たのか?」
アーバンさんがマグカップに入れたお茶と素朴な見た目のお菓子を運んできてくれた。アーバンさんが腰掛けるのを待って、口を開く。
「あまり、気持ちの良い話ではなくて…」
「それ、自分の中だけで収める気か?どうしてもそっちが良いってなら止めねぇけどな。話してくれれば、俺でも何か役に立てるかもしれねぇぞ」
その気持ちが素直に嬉しかった。
「…ランスロット・ヤクドルの鑑定にあった『呪3』。お前さんはこれが最初から気になってたんだろ?」
「……はい」
「で、解ったのか?」
「……出来ることなら、この呪をうまく解ければと思っていたんです。呪いに巻き込まれているのが、赤ちゃんの魂だったので」
それに最初に気づいたのは、水闇の精霊たちだった。死者の魂だ、と教えてくれた。
「亡くなった人の魂だけが関わっているのなら、浄化魔法で呪いを解くことが出来ると思って」
「そんな危ない事、1人でやろうとしてたのか?…まったく……」
アーバンさんにため息をつかれてしまう。
「…すみません」
「リッカさんが強いのは分かってるが…」
「そうだぜ?みんな心配してるんだからな」
「…はい。ありがとうございます」
ふわふわ、とカルラが私の肩に乗る。カルラも心配してくれているのだろう。
(ありがとう、カルラ)
私は、自覚せずに震え出した指先を誤魔化すために、ぎゅっと手を握りしめた。
「この呪いは、生者3人が関わっています。
1人目は、おそらくはプロの呪術の専門家。2人目は、使用人だった女性の夫で、暗器を使用したエドガー・トリルの育ての父、ハンス・トリル男爵」
ギルマスが目を細め、アーバンさんは逆に目を見開いた。
「3人目は、ランスロット・ヤクドルの内縁の妻と出ていた、エメリア・マーゴー・ジェッタ伯爵令嬢です」
途中で、キツイならまた明日以降教えるから、と提案してみたのだが、現侯爵から息子を留め置くなという抗議のお手紙を持った伝信鳥が再三来ていたらしく、なんと辺境伯の所にも使いの者が押し掛けているとのことで、辺境伯のところからも、何か証拠は無いのかと尋ねられていたらしい。
「アイツら、どうやら娼館だけじゃ飽き足らずに、酒場の娘やら食堂の娘やらにも手を出そうとしてたらしくてさ。たまらずに店側が娘を隠したら、店でもネチネチやらかしたらしいんだよ」
「辺境伯閣下も注意したらしいんだが、そしたら家名を出してやりたい放題さ」
「閣下の騎士団の武器の購入と運搬にかかる税を引き上げたり、自領で停めていたりしているようです」
思っていたよりも『親も親』だった…。
「伝信鳥の費用だけでもいくらになるんだろうな。冒険者の稼ぎなんざ、小遣いにもならんだろうよ」
「ですから」
サブマスが苦笑した。
「私も、私のためにこれを身につけたいのです。バルガの平和のために、隣接する我が領地のために、大切な家族のためにも。私の我儘です」
そして、久しぶりに楽しいのです。そう言って笑うサブマスの頭を、カイムとイシュが撫で撫でしていた。
サブマスが1番つまづいていたのは、紋様から情報を翻訳する際に、情報に集中すると紋様が消えてしまう所だった。
「何でだろう…」
魔力の操作は私よりも上手いくらいのサブマスなのに。考えていて、思い当たった。
「サブマス、本のページを捲るような感覚で情報を見ていませんか?」
「え、ええ。いつもの鑑定だとその感覚で…」
「では、こんな感じで…」
私は、手元の紙束に、図鑑の説明ページのように真ん中の絵から吹き出しが出ているような図を書いてみせた。
「常に紋様がある事を意識すればどうでしょう?」
「ああ…!」
要領を掴んで仕舞えば、本当に早かった。もともとサブマスは魔法の適性が本当に高いのだろう。
「…見えました。アーバン、マッジ工房の剣なんて、いつ手に入れたんです?」
ギルマスとアーバンがよっしゃぁ!と拳を握りしめていた。
(男の人って、いつまでも一部男の子だよね)
その後、暗器の使用者の名前が鑑定された。侯爵子息の従者で……彼こそが、本来はランスロット・ヤクドルだったはずの、エドガー・トリル。
それからナナリーさんの衣服の麻痺毒魔法、ダンさんの背中から検出された矢毒用の麻痺薬は、もう1人の従者のパトリック・ダクワーズの物だった。
◇◇◇
サブマスはどうやら昨晩作れる限りの書類をもう作っていたらしい。ギルド本部に緊急用伝信鳥を数羽送り、急ぎ辺境伯に証拠をまとめた書類を持っていくと言って走っていった。
「ギルマスは行かなくて良いのですか?」
「アイツらがギルドの中にいるからな。俺の魔力で外からドアを施錠してるから、ちょっと出られないんだわ」
そう言ってどっかりとソファに座った。
「なあ」
「はい」
「それで、お前さんの疑問は解消出来たのか?」
アーバンさんがマグカップに入れたお茶と素朴な見た目のお菓子を運んできてくれた。アーバンさんが腰掛けるのを待って、口を開く。
「あまり、気持ちの良い話ではなくて…」
「それ、自分の中だけで収める気か?どうしてもそっちが良いってなら止めねぇけどな。話してくれれば、俺でも何か役に立てるかもしれねぇぞ」
その気持ちが素直に嬉しかった。
「…ランスロット・ヤクドルの鑑定にあった『呪3』。お前さんはこれが最初から気になってたんだろ?」
「……はい」
「で、解ったのか?」
「……出来ることなら、この呪をうまく解ければと思っていたんです。呪いに巻き込まれているのが、赤ちゃんの魂だったので」
それに最初に気づいたのは、水闇の精霊たちだった。死者の魂だ、と教えてくれた。
「亡くなった人の魂だけが関わっているのなら、浄化魔法で呪いを解くことが出来ると思って」
「そんな危ない事、1人でやろうとしてたのか?…まったく……」
アーバンさんにため息をつかれてしまう。
「…すみません」
「リッカさんが強いのは分かってるが…」
「そうだぜ?みんな心配してるんだからな」
「…はい。ありがとうございます」
ふわふわ、とカルラが私の肩に乗る。カルラも心配してくれているのだろう。
(ありがとう、カルラ)
私は、自覚せずに震え出した指先を誤魔化すために、ぎゅっと手を握りしめた。
「この呪いは、生者3人が関わっています。
1人目は、おそらくはプロの呪術の専門家。2人目は、使用人だった女性の夫で、暗器を使用したエドガー・トリルの育ての父、ハンス・トリル男爵」
ギルマスが目を細め、アーバンさんは逆に目を見開いた。
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