【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……

ひらえす

文字の大きさ
44 / 115
第3章 心が繋がる時

7.妖精と精霊

しおりを挟む

 ふと部屋のドアが開いたのでそちらを見ると、サブマスが入って来た。サブマスはエリーナさんの隣に座る。私は目礼をして先生の話に耳を澄ませた。
「こうして、人間は生活魔法の他に、属性に特化した魔法を光、闇、火、水、風、土、空間など、系統立てて扱うようになったと言われています。複数系統を扱える人があまり居なかったことも、このやり方を促進させる一因となったようです」
(うーん……)
 私の中で違和感が溢れ出して来て止まらなくなった。アイテムボックスのなかの書籍達と、この話。噛み合うようで微妙に噛み合わない。と言うより、書籍に書かれている内容も、先生の話とはズレているものが多い気がする。
(レコーダー欲しい…あ、蓄音術とか作れば良いのか…)
 今はとにかく先生の話をメモしていく。
「魔法の歴史は、この世界の歴史と言っても過言ありません。おそらく、種族の歴史にも密接に関わってくることでしょう」
 先生はそこまで言うと、メリーベルさんをじっと見つめる。
「魔法は、使い方によっては他人を傷つけることも出来るものです。人によって力の量に差があるだけに、悪意を持って使えば、力の弱い人を容易に傷つける事ができる。戦争に使われることもあります。あなた方貴族は、魔力が強い人が生まれやすいと言われています。だから、余計にこの力について学ばなければなりません」
 メリーベルさんはゆっくりと頷いていた。歳のわりに聡明な女の子だと思う。そして。魔法の適性もあるだろう。だからこそ、こんなに幼いうちから学んでいるのだ。
「メリーベルさんは、魔法の何を学んでみたいですか?」
 先生の問いに、メリーベルさんはちょっとモジモジとしてから、小さく声を出した。
「あの……精霊魔法を見てみたいです」
 ぴくっとカルラが反応した。
「精霊魔法ですか。私も学園と本で学んだだけですが…お話しかできませんが、よろしいですかな?」
「はい!」
ツインテールに結われた髪が跳ねた。

「精霊魔法は、文字通り精霊を使役して魔法を発動させる方法です。使い方には2通りあると言われています。1つは、魔獣を捕獲、契約するようにして隷属させる方法。2つ目は、精霊を都度召喚して魔法の使用をお願いする方法です。この方法は、一説によると契約したものの、精霊を側にとどまらせるのは常に魔力を消費するため、必要な時にのみ顕現してもらう為だったとも言われますが…現在王宮にいる精霊魔法の使い手は、2つ目の方法を使っていると言われています」
(……うん?)
 やっぱり、色々違う。
「元々は、エルフ族がこの魔法に長けていると言いますね。精霊は自然の多いところを好み、あまり姿を表しませんが、自分の気に入った者には姿を表し、力を貸したり、条件が合えば契約もするそうですが…エルフ族でもそこまで行き着くのは稀だと言う話も漏れ聞こえて来ます。
 もう一つ、精霊は妖精が進化した物だと言う説がありまして…妖精がよく出現する場所は、精霊も多く存在するのでは無いかと言われていますね」
(カルラ…光虫って、妖精?)
(うーん…)
 カルラは、うーんうーんと唸っていたが、やがてぽんと手を叩いて言った。
(主様に捕獲されて魔力の供給を受けるようになって、やれる事がぐんと増えました。その時に羽の紋様が変化したらしいので、もしかしたらそれが『妖精』になったということかもしれません!)
(なるほどね。羽の紋様…あとで見せてね)
(はい!)
(属性によって、模様違うよ)
(私達のも見てみて!ですの!)
 他の子達の念話に、是非よく見せてねとお願いすると、はーい!と元気な返事が返って来た。当たり前のように一緒にいてくれる彼等に、改めて感謝と愛情を感じていると、ふと先程の先生の思い出す。
『気に入った相手には姿を表す』
 もしかしたら、メリーベルさんはどこかで他の妖精なり精霊なりをみた事があるのではないだろうか。そして…
(悩んでいるのかな……?)
 だからこそ、8歳なのにこんな難しい内容を学んでいるのだろうか。先ほどチラリと聞いたところによると、この勉強のレベル自体は、いつもと同程度であり、メリーベルさんの希望でもあったのだと言う。
「先生、他に精霊や妖精に関する魔法を使える方は、サントリアナにはいらっしゃらないのですか?」
 メリーベルさんの問いに、先生は頷いた。
「サントリアナにはその方1人と聞いています。他の方は、魔導国に移住してそちらで研究をなさっているらしいですね」
「魔導国には、精霊魔法を使える方が多いのでしょうか?」
「いえ、研究者は多いそうですが…精霊魔法として使用できる方は数人と聞いています」
「そうなんですね」
 メリーベルさんはゆっくりとノートに書き込んでいる。
(おかしいな)
 私のアイテムボックスの中の精霊の書には、精霊に祈願して召喚して使う魔法は、起動と魔法が終了するまでの召喚陣の維持が出来るだけの魔力があれば、それなりに使える人はいるような事を書いてあった筈だ。
(まあ、調べるのは後回しね…)
 とりあえず精霊魔法を調べる、とメモに書いておいて、私はメリーベルさんの背中を見る。ふと視線を感じてそちらに目をやると、エリーナさんと目が合った。
「あの子、昔領地の花畑に妖精がいる!って言ってたんですのよ。だから憧れがあるのかもしれませんわね」
「可愛らしいですね。本当に見たんでしょうか?」
「見たのはそれ一度きりだったみたいですけど…本人は見たと言い張ってましたわ」
 おそらく、彼女は本当に妖精が精霊を見たのだ。先ほどカルラも見たのだと言うからには、きっとその時も本当に見たのだろう。
(主様ー!いたよー!)
(紅花の妖精さんでしたわよ)
(……へ⁉︎)

 思わず大声をだして立ち上がらなかった私を、誰か褒めて欲しい。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

処理中です...