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第3章 心が繋がる時
15.光
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ガルダの神殿は、今日はそれなりに人がいた。どうやら半年に一度の大きな市が立つ日だったらしい。神殿に入る前に、ミリィさんが出店を出しているのを見かけたので、挨拶がてら立ち話をした。息子のリッカくんは、今日はアーバンさんが見ているらしい。
「その髪の編み方いいわね。リッカさんに似合ってる!」
両耳の上辺りから編み込まれ、前髪が邪魔にならないように結った髪型を誉められて、ライラが得意げにふふんと笑っていた。お礼を言って髪結い用の紐を買ってから別れ、神殿に入る。
「……」
神殿の中に進んで行くと、ふと気になったので上を見上げた。神殿の尖塔の先や、高い天井の天窓は採光を考えた作りになっていて、光が降り注いでいる。しばしそのまま上を眺めていると、光がふわり落ちて来て、私の頬を撫でて行くような感覚を覚えた。頬に、額に、唇に…羽根の綿毛のように何かが触れるような微かな感覚だった。
後ろから次の人が入ってきたので、慌てて進んで空いている椅子に座った。今は特に神官が祈りの言葉を唱える時間では無いので、階段状になっている講壇のあたりは誰もいない。
(セカイさん、私は元気に過ごしています。ありがとうございます)
目を閉じて、手を組んで祈る。ふわり、と何かに包み込まれる気がした。
(セカイさんが、このアイテムボックスを持つ事に難色を示していたのが、少しわかった気がします。今更だけど、ごめんなさい)
ふわり、ふわり。
何かが髪を撫でる気がした。気がしただけかもしれないけれど。
(私は、これからも多分悩んだり迷ったりすると思います)
手にいれた力の価値が、なんとなくわかって来た今だからこそ、これだけはセカイさんに言っておきたい。
(私、これからも好きに生きます。1日を存分に過ごして、気づいたことを調べたり、考えたり、観察したり…そして、守りたいものを守りたいと思います)
ふわふわ、ふわふわ、ふふふ。
(決して、この力を使って誰かに意図的に理不尽な事をしないことを、お約束します)
柔らかい光の中に、優しい笑い声が重なった気がしたのは、気のせいだろうか。
(セカイさん、セカイさんは…)
レイヴァーンというこの世界を、どんな風に見つめて来たんだろう。そんなふうに呼びかけようとしてやめた。もし、私の仮説が正しかった場合、そんな言葉では足りない気がしたからだ。
(…どうか、見守っていてください)
暖かい何かが、ふわりと身体を満たした。
そして、なぜか涙がひとしずく、私の頬を伝って……ローブに落ちるはずだった涙は、どこかに消えた。
(主様!主様!)
(大丈夫ですか?)
(主様ー!)
口々に私を呼ぶ念話に、我に返った。
(…え?どうかした?)
姿勢を崩さずに念話を返すと、精霊達がまた口々に答える。
(すっごい神気でしたよ!)
(主様が神様になったかと思いましたの!)
(あのね、多分みんな見てるよ)
(えっ⁉︎…なんで?)
はっとして顔を上げて左右を見ると、そこそこの人数と目があったり、視線を逸らされたりした。本当に物凄く注目されている。自然と顔に熱が集まって行く。
(…出るよ)
そそくさと神殿を後にした。隠蔽と認識阻害をかけ直す。雑踏に紛れ込んで、ようやくほっとした。
(なんであんな事に…私そんなに変だった?)
(主様…変というか、多分あれくらいなら普通に人でも神気を感じたと思いますよ?)
(神様の降臨レベルだよ)
(たぶん精霊の聖地なら、新しい子がたくさん生まれてたくらいでしたの!)
(…精霊の聖地?)
(はい、それぞれの精霊王様がいるところです!)
(綺麗なとこだよ!)
(…行ったことがあるの?)
この精霊達は、元光虫のはずだ。
(精霊になると、わかるのです!)
(不思議ね…教えてもらえる?)
(はい!)
(はーい!)
はーい!という鈴を打ち振るような声が重なる。
(あのね…私からも、お話ししたいことがあるのよ。家に帰ったら、聞いてちょうだいね)
また、精霊達の声が重なった。
私は、帰ったら精霊達に私が他の世界から来たこと、アイテムボックスのことを話そうと決めていた。
「さあ、まずはギルドに行ってから、サブマスのお家に行くよ」
空は青く高く、太陽と銀の月が浮かんでいる。今日は、ルールーの様子を見たり、念話の調子を確認したりする予定だ。
ルールーの栄養補給代わりに精霊草を出してサブマス以外のみんなで食べた後、少し遅れてやって来たサブマスにも差し出したらどうやらとても希少な素材になっているらしく、卒倒されかけたりするのは、また別の話だ……。
「その髪の編み方いいわね。リッカさんに似合ってる!」
両耳の上辺りから編み込まれ、前髪が邪魔にならないように結った髪型を誉められて、ライラが得意げにふふんと笑っていた。お礼を言って髪結い用の紐を買ってから別れ、神殿に入る。
「……」
神殿の中に進んで行くと、ふと気になったので上を見上げた。神殿の尖塔の先や、高い天井の天窓は採光を考えた作りになっていて、光が降り注いでいる。しばしそのまま上を眺めていると、光がふわり落ちて来て、私の頬を撫でて行くような感覚を覚えた。頬に、額に、唇に…羽根の綿毛のように何かが触れるような微かな感覚だった。
後ろから次の人が入ってきたので、慌てて進んで空いている椅子に座った。今は特に神官が祈りの言葉を唱える時間では無いので、階段状になっている講壇のあたりは誰もいない。
(セカイさん、私は元気に過ごしています。ありがとうございます)
目を閉じて、手を組んで祈る。ふわり、と何かに包み込まれる気がした。
(セカイさんが、このアイテムボックスを持つ事に難色を示していたのが、少しわかった気がします。今更だけど、ごめんなさい)
ふわり、ふわり。
何かが髪を撫でる気がした。気がしただけかもしれないけれど。
(私は、これからも多分悩んだり迷ったりすると思います)
手にいれた力の価値が、なんとなくわかって来た今だからこそ、これだけはセカイさんに言っておきたい。
(私、これからも好きに生きます。1日を存分に過ごして、気づいたことを調べたり、考えたり、観察したり…そして、守りたいものを守りたいと思います)
ふわふわ、ふわふわ、ふふふ。
(決して、この力を使って誰かに意図的に理不尽な事をしないことを、お約束します)
柔らかい光の中に、優しい笑い声が重なった気がしたのは、気のせいだろうか。
(セカイさん、セカイさんは…)
レイヴァーンというこの世界を、どんな風に見つめて来たんだろう。そんなふうに呼びかけようとしてやめた。もし、私の仮説が正しかった場合、そんな言葉では足りない気がしたからだ。
(…どうか、見守っていてください)
暖かい何かが、ふわりと身体を満たした。
そして、なぜか涙がひとしずく、私の頬を伝って……ローブに落ちるはずだった涙は、どこかに消えた。
(主様!主様!)
(大丈夫ですか?)
(主様ー!)
口々に私を呼ぶ念話に、我に返った。
(…え?どうかした?)
姿勢を崩さずに念話を返すと、精霊達がまた口々に答える。
(すっごい神気でしたよ!)
(主様が神様になったかと思いましたの!)
(あのね、多分みんな見てるよ)
(えっ⁉︎…なんで?)
はっとして顔を上げて左右を見ると、そこそこの人数と目があったり、視線を逸らされたりした。本当に物凄く注目されている。自然と顔に熱が集まって行く。
(…出るよ)
そそくさと神殿を後にした。隠蔽と認識阻害をかけ直す。雑踏に紛れ込んで、ようやくほっとした。
(なんであんな事に…私そんなに変だった?)
(主様…変というか、多分あれくらいなら普通に人でも神気を感じたと思いますよ?)
(神様の降臨レベルだよ)
(たぶん精霊の聖地なら、新しい子がたくさん生まれてたくらいでしたの!)
(…精霊の聖地?)
(はい、それぞれの精霊王様がいるところです!)
(綺麗なとこだよ!)
(…行ったことがあるの?)
この精霊達は、元光虫のはずだ。
(精霊になると、わかるのです!)
(不思議ね…教えてもらえる?)
(はい!)
(はーい!)
はーい!という鈴を打ち振るような声が重なる。
(あのね…私からも、お話ししたいことがあるのよ。家に帰ったら、聞いてちょうだいね)
また、精霊達の声が重なった。
私は、帰ったら精霊達に私が他の世界から来たこと、アイテムボックスのことを話そうと決めていた。
「さあ、まずはギルドに行ってから、サブマスのお家に行くよ」
空は青く高く、太陽と銀の月が浮かんでいる。今日は、ルールーの様子を見たり、念話の調子を確認したりする予定だ。
ルールーの栄養補給代わりに精霊草を出してサブマス以外のみんなで食べた後、少し遅れてやって来たサブマスにも差し出したらどうやらとても希少な素材になっているらしく、卒倒されかけたりするのは、また別の話だ……。
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