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第3章 心が繋がる時
閑話 冒険者ギルドガルダ支部ギルマスの部屋にて〜辺境伯と魔法に関する依頼
しおりを挟む「これを見てください」
ルドヴィックは懐から絹のハンカチ…エリーナの手による刺繍入り…に包んだシャーレを取り出して、机の上に置いた。中には、青々とした小さな肉厚の葉っぱのようなものが真っ白な綿に包まれて厳重に保管されている。
「なんだこれ?」
ジェイガンはシャーレを無造作に掴み上げ、カラカラと振ろうとしたのでルドヴィックが慌てて止めさせた。
「精霊草です」
「へ?」
「マジか?」
一呼吸おいて、ジェイガンが大声を出した。
「はあああぁぁ⁉︎ エリクサーの材料だって言う、アレか?」
「……へー、生えてるんだなー…」
ジェイガンの大声を受け流して、アーバンは自分の分のマグカップを傾けた。
「アーバン、冷静ですね」
「どーせリッカさんが持って来たんだろ?俺はもう悩むのをやめたんだ」
悩むのをやめた割にはボリボリと頭を掻いている。
「そして、娘のメリーベルが妖精連れになりました」
「それは先週聞いたぜ」
「私と同じ鑑定魔法を覚えました」
「優秀じゃねぇか」
ジェイガンは務めて落ち着き払っているフリをした。
「次に、エリーナの方が、私より魔力が多いと言われました」
「なんかそんな事言ってたな?」
「実際、リッカさんに教えられたほぼ同程度の消費の魔法を持続して使用したところ、私の方が先に魔力切れを起こすところでした」
「あれ?エリーナちゃんは中級魔法使えなかっただろ?」
「隠者曰く『一度に出せる魔力の放出量が小さいから、今使われている魔法は使いにくいのだろう』と言う事でした」
「…うーん。それはまた…」
部屋の中を沈黙が支配しようとして…し切れないようで、アーバンが茶を注ぐ音がよく響いた。
「ん?…と言うことは、だ…」
ジェイガンは、鍵付きの引き出しの中に入っている箱を取り出す。魔力で施錠されたそれを開けて、依頼書を取り出した。
「例の辺境伯閣下からのご依頼ですね」
実は、現辺境伯は魔力はあるはずなのに身体強化の魔法もほとんど使えない。それを補うべくとことんまで自力で身体を鍛えているもののそれ以上は望めず、身体強化のできる騎士と試合をすると不利になりがちで、その事でずっと悩んでいるのだと言う。これはジェイガン達がギルドの役職に就いたときに契約魔法まで交わしてギルマス案件として先代から継続して受けた依頼だった。辺境伯が青年の頃からもうそろそろ壮年の域に達する今に至るまで、ずっと達成されていない。辺境伯の言葉から察するに、どうやら嫡男と二男も同じ状態であるようで、毎年依頼は継続更新されている。
「多分、隠者様ならなんとかできるんじゃねぇか?」
「…万が一できなくても、手がかりくらいは分かるかもしれないよな」
「おそらく、解決できる可能性が高いかと」
解決するのは容易いかもしれない。しかし、ジェイガンとルドヴィックはあれやこれやとその後のことまで考えを巡らせてしまって、黙り込んでしまう。
「おい、2人とも」
もはや何番煎じか分からないお茶を注いで、アーバンは声をかけた。
「小細工は無しで行こうぜ。そう決めたろ?」
2人はお互いの顔を見合わせて、思わず苦笑してしまった。
「そうだな、うん、そうだ!」
「はい。素直に包み隠さずリッカさんに頼んでみましょう」
かくして、包み隠さず頼まれたリッカが「とりあえず現状を見てから」と承諾し、辺境伯邸に招かれて辺境伯自身と夫人による土下座の勢いで依頼され……紋様術による辺境伯の鑑定の後、辺境伯と嫡男次男が魔力の巡りが『他の人とは逆に巡っている』という事実に気が付き、リッカの指導を受けて多少の時間はかかったものの無事に身体強化や魔法がある程度普通に使えるようになった。
その半年後、3年に一度行われるという国1番の騎士を決める武闘大会に於いて、辺境伯が5位、辺境伯二男が3位、辺境伯の嫡男が優勝するに至ったのは、また別の話である。
結果として、ガルダを含む北の辺境に充てられる軍費が増強されたことで防壁の修復や街道の整備が進み、北の辺境は穏やかに、かつ賑やかに発展して行く事になる。
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