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第4章 この手の届くところ
2.結晶魔石
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森の幻影という言葉がよく分からなくて聞き返す。
「ギルマス、森の幻影というのは何ですか?」
ギルマスはそれが意外だったようで、キョトンとした顔をする。
「知らねえのか?大きな魔物の頭ん中に稀に出来る魔石のことだ」
「こちらです」
サブマスが高そうな布張りの箱をパカリと開けて私の前に差し出す。箱の中には、トゲトゲとした黄緑の水晶のような素材の、何かの結晶のような物が鎮座している。
「これが…」
「鑑定してもいいですよ」
サブマスにお礼を言って鑑定する。
ーーーーーー
結晶魔石〈森の幻影〉
純度 98パーセント
素体 巨大角鹿(雌)
討伐者 リッカ
冒険者ギルド ガルダ支部預かり
ーーーーーー
「え?これは先月の鹿から出たんですか?」
「そうだ。こういう緑のやつとか、多少緑でなくても森の魔物から出ると、森の幻影って呼ばれるんだよ」
「そうなんですね」
私は結晶魔石を繁々と眺める。
(透明度は純度によるのかな…)
「ええとな、一生に一回獲れるかどうかだからな?」
「なるほど…」
「私たちもかつて一度だけ獲った事がありますが、こんなに透明度は高くありませんでした」
「そうだったな。赤のやつだったが…これより形もなんか丸かったはずだ」
「地竜の赤だったよな」
地竜…頭の中で本の情報を思い出す。巨大な…それこそサイクロプスよりも大きなトカゲタイプの魔獣だった筈だ。
「不思議なのは、これが巨大角鹿から出たという事ですね。もちろん大きな個体ではありましたが…それほど珍しい魔獣とは言いがたい。調べましたが、巨大角鹿から出たのは初めてだそうですよ」
「そんでよ、これなんだが…ギルド本部で買取たいらしいんだが、どうする?」
「そうですね…記念にしばらく持っておきたいのですが、いいですか?」
特に必要ではないとは思ったが、なんとなく即答はやめた。少しだけ調べたくなったのだ。
「もちろん、好きにしてくれていいんだぜ。俺らだって冒険者辞めるまでは手元に持ってたしな」
ギルマスが良い顔で笑い、サブマスは高価なので盗まれないように気をつけて下さいねと何度も良い、キョトンとしている私に、アーバンさんがこれくらいの純度だと王都に豪邸が買えると教えてくれた。必ず空間収納に入れておくように言われたのは言うまでもない。
◇◇◇
帰宅して、まずは精霊達と今日もらった魔獣鹿の肉を料理した。とても食べきれそうにないので、残りはアイテムボックスに仕舞っておく。ミリィさんにだいぶお裾分けしたのだが、それでも大きい肉の塊だった。
赤身肉は精霊達と一緒に、ローストビーフならぬローストディアーに。あと少しだけ、レシピの紙に書いてあった干し肉を作ってみることにした。ハーブをすり込んだり、塩をすり込んだりするのはローストディアーも一緒なのでさほど手間はかからない。レバーはレシピにあったレバーパテと、鑑定と浄化をアレンジして寄生虫などを探索したが、特に何も無かったので少しだけハーブ塩とハーブオイルで生食にした。
「主様は、転生する前はお料理されていたんですか?」
カルラの問いに苦笑する。こちらでは気が向いた時くらいしか料理はしない。
「うん。ほぼ毎日やってたと思うよ」
先日、私が転生してこの世界に来た事や、私にしか見えないアイテムボックスをもらった事を精霊達に話した時は、彼らはそれほど驚かなかった。寧ろ、ああやっぱりと言った風情で後はちょくちょくこうした質問をされるくらいだ。
食後、片付けをして落ち着いた所で結晶魔石を取り出して眺めてみた。
「キラキラですね」
「魔物から出た割には良い魔力です」
「形も整ってるの」
「精霊王様が誰か代替わりするのかもね」
「怒ってるのかもしれないよ?」
「困ってたり?」
精霊達が口々に喋り出す。
「精霊王…?」
結晶魔石とは結びつかなかった単語に、思わず反応してしまった。
「結晶魔石と、精霊王は何か関係があるの?」
「あるかもしれないし、無いかもしれない、くらいの感じです」
カルラが代表して答えてくれた。
「精霊王が代替わりをする時は、その最後の力が世界に溢れてしまうので、何処かで魔力が多すぎる状態になるせいで、魔獣が増えたりダンジョンが増えたりする事があるかもしれない…と言われるらしいです」
「らしい、なのね?」
「はい。1番最近でも代替わりは、ホントに大昔らしいですよ」
「なるほど。ありがとう」
精霊達は、実は本来は時間の概念があまり無いらしいのだが、ホントに大昔というからにはかなり古い話と仮定した方が良い気がする。
「精霊王が困っているとか、怒っているとか言うのは?」
「それはねぇ…」
水闇精霊のファイとファーナがおっとりと答えてくれた。
「精霊王が司る力が、なんらかの原因でバランスが崩れると、濃い力が時々一箇所にたくさん流れ出るんだよ」
「時々困って助けを求めていたりすると、そうやって結晶魔石がたくさん出来るくらいの魔力を世界に流して、それに気づいた者が精霊王の手助けをして宝物をもらった、というお話が人間の世界にもありますのよ」
「御伽噺みたいな話ね…」
聞かせてくれてありがとうね、と2人の頭を撫でた。
「ギルマス、森の幻影というのは何ですか?」
ギルマスはそれが意外だったようで、キョトンとした顔をする。
「知らねえのか?大きな魔物の頭ん中に稀に出来る魔石のことだ」
「こちらです」
サブマスが高そうな布張りの箱をパカリと開けて私の前に差し出す。箱の中には、トゲトゲとした黄緑の水晶のような素材の、何かの結晶のような物が鎮座している。
「これが…」
「鑑定してもいいですよ」
サブマスにお礼を言って鑑定する。
ーーーーーー
結晶魔石〈森の幻影〉
純度 98パーセント
素体 巨大角鹿(雌)
討伐者 リッカ
冒険者ギルド ガルダ支部預かり
ーーーーーー
「え?これは先月の鹿から出たんですか?」
「そうだ。こういう緑のやつとか、多少緑でなくても森の魔物から出ると、森の幻影って呼ばれるんだよ」
「そうなんですね」
私は結晶魔石を繁々と眺める。
(透明度は純度によるのかな…)
「ええとな、一生に一回獲れるかどうかだからな?」
「なるほど…」
「私たちもかつて一度だけ獲った事がありますが、こんなに透明度は高くありませんでした」
「そうだったな。赤のやつだったが…これより形もなんか丸かったはずだ」
「地竜の赤だったよな」
地竜…頭の中で本の情報を思い出す。巨大な…それこそサイクロプスよりも大きなトカゲタイプの魔獣だった筈だ。
「不思議なのは、これが巨大角鹿から出たという事ですね。もちろん大きな個体ではありましたが…それほど珍しい魔獣とは言いがたい。調べましたが、巨大角鹿から出たのは初めてだそうですよ」
「そんでよ、これなんだが…ギルド本部で買取たいらしいんだが、どうする?」
「そうですね…記念にしばらく持っておきたいのですが、いいですか?」
特に必要ではないとは思ったが、なんとなく即答はやめた。少しだけ調べたくなったのだ。
「もちろん、好きにしてくれていいんだぜ。俺らだって冒険者辞めるまでは手元に持ってたしな」
ギルマスが良い顔で笑い、サブマスは高価なので盗まれないように気をつけて下さいねと何度も良い、キョトンとしている私に、アーバンさんがこれくらいの純度だと王都に豪邸が買えると教えてくれた。必ず空間収納に入れておくように言われたのは言うまでもない。
◇◇◇
帰宅して、まずは精霊達と今日もらった魔獣鹿の肉を料理した。とても食べきれそうにないので、残りはアイテムボックスに仕舞っておく。ミリィさんにだいぶお裾分けしたのだが、それでも大きい肉の塊だった。
赤身肉は精霊達と一緒に、ローストビーフならぬローストディアーに。あと少しだけ、レシピの紙に書いてあった干し肉を作ってみることにした。ハーブをすり込んだり、塩をすり込んだりするのはローストディアーも一緒なのでさほど手間はかからない。レバーはレシピにあったレバーパテと、鑑定と浄化をアレンジして寄生虫などを探索したが、特に何も無かったので少しだけハーブ塩とハーブオイルで生食にした。
「主様は、転生する前はお料理されていたんですか?」
カルラの問いに苦笑する。こちらでは気が向いた時くらいしか料理はしない。
「うん。ほぼ毎日やってたと思うよ」
先日、私が転生してこの世界に来た事や、私にしか見えないアイテムボックスをもらった事を精霊達に話した時は、彼らはそれほど驚かなかった。寧ろ、ああやっぱりと言った風情で後はちょくちょくこうした質問をされるくらいだ。
食後、片付けをして落ち着いた所で結晶魔石を取り出して眺めてみた。
「キラキラですね」
「魔物から出た割には良い魔力です」
「形も整ってるの」
「精霊王様が誰か代替わりするのかもね」
「怒ってるのかもしれないよ?」
「困ってたり?」
精霊達が口々に喋り出す。
「精霊王…?」
結晶魔石とは結びつかなかった単語に、思わず反応してしまった。
「結晶魔石と、精霊王は何か関係があるの?」
「あるかもしれないし、無いかもしれない、くらいの感じです」
カルラが代表して答えてくれた。
「精霊王が代替わりをする時は、その最後の力が世界に溢れてしまうので、何処かで魔力が多すぎる状態になるせいで、魔獣が増えたりダンジョンが増えたりする事があるかもしれない…と言われるらしいです」
「らしい、なのね?」
「はい。1番最近でも代替わりは、ホントに大昔らしいですよ」
「なるほど。ありがとう」
精霊達は、実は本来は時間の概念があまり無いらしいのだが、ホントに大昔というからにはかなり古い話と仮定した方が良い気がする。
「精霊王が困っているとか、怒っているとか言うのは?」
「それはねぇ…」
水闇精霊のファイとファーナがおっとりと答えてくれた。
「精霊王が司る力が、なんらかの原因でバランスが崩れると、濃い力が時々一箇所にたくさん流れ出るんだよ」
「時々困って助けを求めていたりすると、そうやって結晶魔石がたくさん出来るくらいの魔力を世界に流して、それに気づいた者が精霊王の手助けをして宝物をもらった、というお話が人間の世界にもありますのよ」
「御伽噺みたいな話ね…」
聞かせてくれてありがとうね、と2人の頭を撫でた。
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