【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……

ひらえす

文字の大きさ
78 / 115
第5章 廻る世界

22.質問と精霊王たちの会話

しおりを挟む

(さて…とりあえずこの聖地がこうなったのは、とにかくマナの循環システムに異常があるから……ということが裏付けられた、だけか…)
 本来ならば原因をとことん探るべきだろう。でも、世界樹はほぼ枯れているような状態だ。枯れてしまうのは絶対に不味いだろう。今元気にするだけならば、多分出来る。しかしその後はどうなるのだろう。急に環境が変わって仕舞えば、それによって悪影響が出ないとも限らない。
(圧倒的に情報不足……)
「主様、独り言が出ちゃってるよ」
「主様は考え中なのですわ」
「とりあえず座りましょう、主様。疲れてしまいますよ」
 カルラ達に促されて、私も敷物と座布団の上に座る。精霊王たちも、うちの精霊たちにもみくちゃにされながら座っている。
「主様、どうぞ!」
「こっちもどうぞ!」
 精霊草を差し出されるがままに受け取って、お礼を言って口に入れた。
「ありがとう。美味しいね」
 コーヒーの香りに振り向くと、カルビンとカルドが温かいコーヒーを持って来てくれた。最近、この子達はコーヒーを淹れてくれることが多い。
「砂糖とミルクを入れました。ちょっとだけ」
「主様、主様…」
 カルドは黙り込んでしまった。しばらく言葉を待った。
「あのね、主様が心配」
(ああ……)
 カルビンの言葉に、胸の中に温かい漣が生まれた。漣は指先までじんわりと暖かさを伝えていく。元はと言えば私が勝手にテイムして付き合わせているのに、この子達は私を心配してくれている。
「ありがとうね。無理はしないよ。大丈夫」
 2人を軽く撫でた。
 2人は私が甘めに作ってくれたコーヒーに口をつけたのを確認してから、他の精霊達と一緒にお菓子を食べ始めた。カルビンは麦チョコ、カルドはマーブルチョコが気に入ったようだ。
 
「隠者よ」
 土の精霊王は私を隠者と呼ぶことにしたようだ。
「何か聞きたいことがあるのではなかったか?」
 土の精霊王は、闇の精霊王の背中をぽんぽんと叩きながら、精霊草を勧めつつ、自分もさりげなく口に運んで行く。しばらくすると彼等の魔力の不安定な揺らぎが落ち着いたように見えた。それは闇の精霊王も似たようなものだった。やはり思っているより彼らは疲弊しているのかもしれない。流石に治癒術で完全に回復させるというのは、無理をすれば出来なくも無いだろうが、今後のことを考えると最善手では無いと思う。そんなことを考えながら、私はいくつか質問をすることにした。

「魔法を使えば、澱のようなものが生まれる、という認識で良いのですか?」
「そうだ」
「どんな魔法でもですか?」
「量は違う気がするけどなー」
 火の精霊王が話に入って来た。どかりと座ると、精霊草に手を伸ばす。
「それに澱の量自体は、本当に微々たるものだぜ」
「量は違う、という事は…魔法の使い方や例えば精霊魔法や、今主流で使われている魔法、紋様術等によって違うという事でしょうか?」
「その通りだ。ただ…」
 土の精霊王はいかつい顎に手を当てた。
「魔法を使用した事で出る澱の量は、ここ数十年は、多分ほぼ変わっていないはずだ」
「それは、どういう…」
「世界樹が新しく生み出すマナの量は、使用された分だけが生み出される筈だ。多少増減があるとしても、それほど変わらない。マナの量が一定ならば、魔法を使った時に消費される量も一定、澱の量も一定だと言っても良いだろう」
(急に澱…とりあえずあの不純物がそれだろう…が増えたわけじゃない、と。誰かが特殊な魔法を影響が出るほど使った可能性は低い、と)
 さらさらとメモを取る。
「ちなみに、魔法の使い方による澱の量は、どれくらい違うのでしょうか?」
「倍くらいかなあ? でも、澱って言ったって、魔力を100で魔法使った時にそのうちの2か3が澱になるくらいのモンだぞ」
 炎の精霊王は、カルビンからチョコレートを受け取って、見様見真似で銀紙を剥がし、ポイと口に入れ…次の瞬間目を見開いた。
「美味い!」
 ナッツ入り、ミルク味、ヌガー入り、次々とチョコレートを口に入れていく炎の精霊王。魔力の回復傾向が見られるので、好きなだけ食べてもらおう。
「世界樹以外に、マナの浄化が出来るものは存在しないのですか?」
「世界樹以上に澱を浄化するものなど、聞いたことがないな…」
 闇の精霊王の言葉に、土の精霊王も頷いて何やら考えている。
「あら、わずかですが、地上の草木や水も浄化の力がありますわよ」
 水の精霊王はハーブティーに蜂蜜をたっぷり注ぎ、スプーンで優雅にかき混ぜた。
「そうだよね」
 その蜂蜜ピッチャーを受け継いで、風の精霊王も自分のコップに蜂蜜を注ぎ入れた。中身はミルクティーのようだ。
「魔の森の木は意外と浄化能力が高いんじゃないかな? 南の海の真珠も、海のマナを浄化した結果、真珠が出来るようになってるでしょ?」
「真珠はマナの浄化が無くとも条件が合えば出来るだろう」
「それはそうですけれど、マナの浄化をしたものは魔力を帯びて照りが良く、大きくなるようですわ」
(……もしかして、水の幻影はそういう物のことだったりして…)
 精霊王達の話はどうしようもなく私の好奇心を掻き立てるが、今は思考の中心に世界樹のことを置かなければ…メモには、真珠について調べる、と書き足しておいた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

処理中です...