【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……

ひらえす

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第6章 転生隠者の望む暮らし

18.冒険の日々と最後の報告

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 このレイヴァーンのあちこちへ、調べ物というか探し物をするようになってしばらく経った。
(あえて言うなら、探し場所というべきかしらね)
 この手順で探していて良いのかもわからない……そんな場所。
(それで良いの。それくらいで……)
 これは、私のライフワークなのだから。
「2年なんてあっという間だよね……」
 バルガの市場をゆっくりと歩きながら、精霊達とギルドの方へ歩く。
 昨年サブマスことルドウィッグさんはアスター子爵となり、どうやら今年伯爵に陞爵されるらしい。それに伴って春から秋までは王都に暮らすことになったらしく、王都は賑やかだが自然な花畑が無くて妖精もどうやらいないようだ……というような、日常のことなども書き綴った折々の手紙が届く。封筒が分厚いときは、エリーナさんやルドウィッグさんのものも入っている事が多い。そして、その手紙をこの一年ギルドで私に手渡してくれていたギルマスとアーバンさんは……。

「おう! 今日もありがとな。そんで……」
 買取カウンターでアーバンさんはニカリと笑った。
「今後ともぼちぼちよろしくな」
「はい」
 上でギルマスが待ってるぜ、と促されたのでメリルさんとギルマス室へ向かう。
「メリルさん、メリルさんは……」
「うふふ、私も今日までなんですよ。これからはゆっくりしようと思って」
 話しかけた私に、メリルさんは振り返り、立ち止まって笑いかけてくれた。
「リッカさん。絶対、絶対に!遊びに来てくださいね。待ってるわ」
「ありがとうございます。メルクの実を沢山摘んで行きますから」
 そう伝えると、メリルさんは私を軽く抱きしめた。
「ええ。ジェイガンがいなくても、気軽に遊びにきてね」
 メリルさんはギルマス室の扉を叩き、私を中に案内する。
「よう!」
 部屋の中には、いつものギルマスと……昨年サブマスに着任したマウロさんがいる。マウロさんは29歳。元王都の支部を拠点にしていた冒険者で、ギルマス曰く「ここで修行して多分一代貴族とかになっていずれギルマスに出世する」のだそうだ。
「こんにちは! お元気でした?」
 年齢よりは幾分若く見え、ハキハキした人好きのする笑顔のマウロさんは、私をソファに座らせて、ささっとお茶とお菓子を出してくれた。目端が効いて、気配りも出来るオールラウンダーだなと思っていたら、ギルマスが『コイツは動物を短時間で捕獲する斥候タイプなんだよ。魔法も剣もそこそこ行けるぜ』とネタバラシのように言っていた。マウロさんは『酷いです!俺みたいなのは仕事しにくくなるんでネタバレ厳禁です!』なんて笑っていたっけ……。
(暗器も使えるオールラウンダー……なんだろうなぁ)
 以前ブラドが付いてきてくれた時に、マウロさんは袖口に針のようなものを仕込んでいると教えてくれた事がある。
「今日は……ハル草を納品してくれたんですね!助かりますー!」
 いつの間にか端末をチェックしていたようで、先月頼まれていた薬草を納品していたことのお礼を言われた。
「いえ、偶然手に入ったので」
「これだけあれば、ギルマスの腰痛用にも買い取れますね、ギルマス!」
「うるせぇなぁ、もう」
 マウロさんは、新人だった頃にギルマスの指導を受けた事があるそうだ。ギルマスの後任になるのは帝国の支部で長くギルマスをしていた50代の男性だそうで、マウロさん曰く『老眼を理由に書類を貯めがち』らしいが、おっとりした良い人らしいのでよろしくと言われている。

 アーバンさんもギルマス室に合流し、マウロさんが部屋を出た所で、私は2人にそれぞれ護石を渡した。
「今まで、本当にありがとうございました。そして、お疲れ様でした。私からの気持ちです。お2人と、そのご家族や大切な場所を守ってくれると思います」
 ギルマス改めジェイガンさんには透明感のある黒曜石の護石を、アーバンさんには精霊殻が中に入り込んだ琥珀で護石を作った。ちなみに2つとも聖地で採れた原石を使っている。
「なんでぇ、嫁に行くみたいな言い方じゃねぇか」
「ありがとな、リッカさん」
 2人はそれぞれ笑顔で受け取ってくれた。

「最近はどこかに行ってるのか?」
「ええ」
「はい、お茶のお代わりですよー」
 軽食を抱えて戻って来たマウロさんも合流して、地図を指しながら最近行ったところの話をする。最近の世の中の流れなどを交えながら、そのうち世間話になっていく。私にとっては、とても貴重な情報源であるし、この世界にやって来てから初めて誰かと密にコミュニケーションを取るようになった場所だ。おそらく、来月からはこういう事もあまりなくなるのだろう。

 ———来週が、正式なギルマスの退任の日だ。
 アーバンさんも、今はギルドは午前中のみの勤務になっていて、来週から本格的に道場をひらくのだそうだ。

「あ、リッカさん専用カップ、ちゃーんと残してますんで!たまには俺ともお茶してください。むさ苦しいのが嫌ならスージーとか呼びますから」

 マウロさんが去り際にニコニコとそう付け加えていた。スージーさんは、どうやら最近、おしゃべりしながら冒険者達から情報を引き出す腕を買われて、メリルさんの後任候補として鍛えられ始めたらしい。本人は嫌がっていた気がするのだが、メリルさんも笑顔で頑張っていると言っていたので、まあそうなのだろう。

 とてもなごやかに……本当にいつも通りに、私はこの日ギルドから帰宅した。その時はまだ、今後どうしようか等は、全く考えていなかった。いや考えられなかった。

 なんだかとても、寂しくなったから。

 その気持ちに気づいた時、私の意志はより固まったのだろう———もう一度、セカイさんに会いに行く、と。
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