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1.ブラック辞退からのブラックアウト
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売り手市場と言われ続けて早数年。
実際は一部の有名大学を出た子の中でも選ばれし者のみが複数の会社から内定をもらっているだけ。
そんなこと大学一年生の時からサークルの先輩に何度聞かされたことか。
耳にたこが出来るほどのそれを、私は分かった気でいた。
インターンシップにも行ったし、OB・OG訪問だって何社も足を運んだ。早めに就活を始めたつもりだったし、何十何百もの履歴書を書いてきた。字は綺麗なつもりだし、自己PRに志望理由だって就活支援センターの方からお墨付きをもらっていた。
それでも最終選考まで進めたのは両手の指で足りる程度。
わずかではあるが内定がもらえた会社はあまりのブラックさに辞退せざるを得ないものだったりする。
さすがに最終選考が終わった直後、頬のこけた女性に無理矢理手を引かれて路地裏に連れ込まれた時には死を意識したほどだ。そこからこんこんとあの会社だけは止めておけ、死ぬと諭され恐怖のあまり辞退した。その数ヶ月後に不渡りや過労死などが問題となり、一時期のワイドショーや新聞の一面を飾っていたからそのまま入社を決めなくて良かったのかもしれない。
けれど貴重な内定を辞退し続けた結果、卒業後に私を待ち受けていたのは無職の称号だけだった。
まぁブラック企業で人格否定され続けたり、自分の限界値を越え続けて過労死させられるマシ! と考え直してパートを探すことにした。
けれど両親は不服そうに顔を歪めていた。
「せっかく4大出したのに……」
授業は真面目に通っていたから無駄ではないのだが、良いところに就職して、老後の心配を少しでも無くして欲しかったのだろう。
今時、生涯雇用とボーナスと年に応じての昇給を約束してくれる会社なんてほとんどないけれど。
代わりにメンタル破壊保証会社ならうなるほどある。
けれど高い学費を出したのに、ってその気持ちはよく分かる。
自宅のパソコンで求人情報を探すのもなんだか居心地が悪くて、気分転換も兼ねてカフェで探すことにした。財布とスマホだけポシェットに入れて、少し遠くのオシャレなカフェに向かう。けれど店の前までたどり着いて止めた。だってオシャレすぎてとてもじゃないけれど一人で入れるような店ではなかったから。
今思うとここで止めておけば良かったんだと思う。
けれどすぐに家に帰りたくなかった私はその足で駅に向かって、喫茶店散策を始めた。
――そして暴走トラックに轢かれた。
痛みも苦しみもない。
気づけばコスプレで使うウィッグみたいなパッションピンクの髪の少女、ロザリア=リリアンタールになっていた。これぞトラック転生というやつである。若干古いような気もするが、死亡理由に古いも新しいもないだろう。
さて、いきなり5歳児に転生してしまった私だが困ったことがある。
「ひっ……ご飯はもうあげたでしょう! 足りないなら追加の分持って行くからこっち来ないで!」
村の人から怖がられている。
転生前? 記憶を取り戻す前? の記憶はしっかりある。
なので彼女達が怖がる理由も知ってはいるのだが、10歳の少女を小屋に軟禁って人としてどうなのだろう。ちなみに軟禁歴は約5年。筆頭者は家族ではあるが、協力者は村人ほぼ全員である。ネグレクトもいいところである。
人権問題どうなっているんだ! と突っ込みたいところだが、あいにくとこの世界は私がいた世界とルールが違うらしい。
すぐに小屋に戻るように言われてしまったためよく見ることが出来なかったが、今世の知識とパッと見た感じで判断すると生活レベルは低い。アジア系ではなく西洋系の顔立ちの方ばかりで、髪の色はロザリアほどではないけれどアニメのような色が揃っていた。
それに最たる違いはこの世界に魔法があるということだろうか。
けれどこの世界の住人全てが使えるという訳ではないらしい。ロザリアが恐れられる理由こそ彼女が幼少期に発動させた魔法なのだ。無意識で発動させた魔法があまりに強大すぎた。
それは人に恐怖を抱かせるほどのものだった……と。
今なら転生チート奮発しすぎでしょ~と笑い飛ばせるけれど、何も知らない少女にとってはトラウマものだったのだろう。
そこから軟禁されて数年。
出してもらえる見込みもなく、誰と会話をする訳でもなく、与えられるご飯だけを食べて生活を送る日々。辛い。常人、それも10歳ともなれば耐えられるはずもない。私が記憶を取り戻したきっかけはそんなロザリアの絶望だったのだからなんとも悲しい話だ。
だが周りの大人達が100%悪いかと聞かれるとちょっと困ってしまう。
なにせ一人っきりの小屋の中でいろいろと試した結果見つけたステータス欄は異常としかいいようがなかったのだから。
――――――――――――――――――――
名前:ロザリア=リリアンタール
レベル:99
ジョブ:なし
HP:999
MP:999
筋力:999
耐久:999
敏捷:999
器用:999
耐魔力:999
【スキル】
獄炎 Lv.10
強奪 Lv.10
コピー Lv.10
錬金術 Lv.10
身体強化 Lv.10
回復 Lv.10
状態回復 Lv.10
鑑定 Lv.10
解錠 Lv.10
認識阻害 Lv.10
鑑定阻害 Lv.10
【称号】
聖女
強成長者
忌み子
強奪者
*以下、鑑定阻害事項
転生者
前世記憶持ち
運命を歪めし者
――――――――――――――――――――
基礎ステータスの基準が分からなかったから、小屋の隙間から外の大人達を鑑定してみた。10人ほどではあるが、平均は10前後。
レベルは5~20と幅広く分布している。スキルも一つか二つ持っていればいいくらいだった。それも男性なら剣や弓系などの戦闘スキル、女性なら裁縫や料理などの家事系のスキル。レベルも高くてLv.3がMAXだった。
ステータスとレベルの天井がどこだかは分からないけど、私のそれは明らかなるぶっ壊れステ―タス。恐れられるのも仕方ないのかな、って思えてならない。
だがこのまま一生周りの人たちに恐れられて、小屋に軟禁されたまま暮らすかと言われればNOだ。
何が悲しくて第二の人生を小屋で過ごさなければならないんだ。
確かに3食きっちり食事は出るし、労働の義務もない。楽な人生だ。だがそれだけ。人との会話もなければ、人生の楽しみすらない。
だから逃げることにした。
小屋の中でひたすら自分の状況を考えて、ステータス欄以外に使える機能はないか調べてみた。
そして小屋生活もとい転生3日目にしてようやく糸口を見つけた。それが『ポイント交換ページ』だ。見えるもの全てを鑑定し続けていたらステータス欄の下部に『オプション』ボタンが発生したのだ。いきなり発生したボタンをおそるおそる指先で突けば『ポイント100を消費して、ポイント交換システムを取得しますか?』なんてゲームっぽい表示が出てきた。初日にゲームシステムっぽい『チャットシステム』なるものを発見してなければなんだこれと数日は頭を抱えていたことだろう。だが前例があり、かつ小屋生活に嫌気がさしていた私は消費するのが何のポイントなのかを大して考えもせずに『YES』のボタンを押したのだった。
そして表示された『交換可能物一覧』にようやく驚きがやってきた。
食べ物や武器はもちろん、ステータスまでもポイントで取得出来てしまうのだから。右上に表示されていたポイントは100も消費してしまったばかりだからか、残りは19とわずかではあった。これでは交換出来るものは一部の食べ物かナイフと限定されてしまう。それでもこの機能を試すために交換を決めた。選んだのはダガーナイフ。交換に必要なポイントは15と少ない手持ちポイントから見ると痛い出費ではある。だがここで一番ポイントの低いミネラルウォーターを交換したところで、食事と水が一定量運ばれてくるこの場所では不要でしかない。一方でナイフはこの小屋から出た際に必要になってくるアイテムだと考えたのだ。
こうしてポイントがしっかりと15引かれたのを確認してから、現状では手の届きそうもないスキルを眺めることにした。数日かけてスクロールしては、ポチポチとスキルの内容を確認していく。
当面の大きな目標は交換ポイント1000の『攻略ガイド』だろうか。
必要ポイントは低いのか高いのか微妙なところだ。一覧で一番高いものは100万ポイントもするから案外すぐ手に入るものなのかもしれない。すぐ溜まるか時間がかかるかはさておき、生き抜くためには先に低ポイントの攻撃スキルを取ることも視野にいれなければならないだろう。
例えばナイフと同じくらいで交換出来る魔法のボールシリーズ。ファイヤーボールとかウォーターボールとか、ゲーム関係にあまり詳しくない私でも聞いたことがある定番魔法だ。Lv.1だと小さな球が出てきて飛んでいくのだろう。すでに取得しており、恐れられる原因となったらしい『獄炎』が火系の魔法っぽいから火以外の魔法を優先して全魔法コンプリートするところから始めようかな。
実際は一部の有名大学を出た子の中でも選ばれし者のみが複数の会社から内定をもらっているだけ。
そんなこと大学一年生の時からサークルの先輩に何度聞かされたことか。
耳にたこが出来るほどのそれを、私は分かった気でいた。
インターンシップにも行ったし、OB・OG訪問だって何社も足を運んだ。早めに就活を始めたつもりだったし、何十何百もの履歴書を書いてきた。字は綺麗なつもりだし、自己PRに志望理由だって就活支援センターの方からお墨付きをもらっていた。
それでも最終選考まで進めたのは両手の指で足りる程度。
わずかではあるが内定がもらえた会社はあまりのブラックさに辞退せざるを得ないものだったりする。
さすがに最終選考が終わった直後、頬のこけた女性に無理矢理手を引かれて路地裏に連れ込まれた時には死を意識したほどだ。そこからこんこんとあの会社だけは止めておけ、死ぬと諭され恐怖のあまり辞退した。その数ヶ月後に不渡りや過労死などが問題となり、一時期のワイドショーや新聞の一面を飾っていたからそのまま入社を決めなくて良かったのかもしれない。
けれど貴重な内定を辞退し続けた結果、卒業後に私を待ち受けていたのは無職の称号だけだった。
まぁブラック企業で人格否定され続けたり、自分の限界値を越え続けて過労死させられるマシ! と考え直してパートを探すことにした。
けれど両親は不服そうに顔を歪めていた。
「せっかく4大出したのに……」
授業は真面目に通っていたから無駄ではないのだが、良いところに就職して、老後の心配を少しでも無くして欲しかったのだろう。
今時、生涯雇用とボーナスと年に応じての昇給を約束してくれる会社なんてほとんどないけれど。
代わりにメンタル破壊保証会社ならうなるほどある。
けれど高い学費を出したのに、ってその気持ちはよく分かる。
自宅のパソコンで求人情報を探すのもなんだか居心地が悪くて、気分転換も兼ねてカフェで探すことにした。財布とスマホだけポシェットに入れて、少し遠くのオシャレなカフェに向かう。けれど店の前までたどり着いて止めた。だってオシャレすぎてとてもじゃないけれど一人で入れるような店ではなかったから。
今思うとここで止めておけば良かったんだと思う。
けれどすぐに家に帰りたくなかった私はその足で駅に向かって、喫茶店散策を始めた。
――そして暴走トラックに轢かれた。
痛みも苦しみもない。
気づけばコスプレで使うウィッグみたいなパッションピンクの髪の少女、ロザリア=リリアンタールになっていた。これぞトラック転生というやつである。若干古いような気もするが、死亡理由に古いも新しいもないだろう。
さて、いきなり5歳児に転生してしまった私だが困ったことがある。
「ひっ……ご飯はもうあげたでしょう! 足りないなら追加の分持って行くからこっち来ないで!」
村の人から怖がられている。
転生前? 記憶を取り戻す前? の記憶はしっかりある。
なので彼女達が怖がる理由も知ってはいるのだが、10歳の少女を小屋に軟禁って人としてどうなのだろう。ちなみに軟禁歴は約5年。筆頭者は家族ではあるが、協力者は村人ほぼ全員である。ネグレクトもいいところである。
人権問題どうなっているんだ! と突っ込みたいところだが、あいにくとこの世界は私がいた世界とルールが違うらしい。
すぐに小屋に戻るように言われてしまったためよく見ることが出来なかったが、今世の知識とパッと見た感じで判断すると生活レベルは低い。アジア系ではなく西洋系の顔立ちの方ばかりで、髪の色はロザリアほどではないけれどアニメのような色が揃っていた。
それに最たる違いはこの世界に魔法があるということだろうか。
けれどこの世界の住人全てが使えるという訳ではないらしい。ロザリアが恐れられる理由こそ彼女が幼少期に発動させた魔法なのだ。無意識で発動させた魔法があまりに強大すぎた。
それは人に恐怖を抱かせるほどのものだった……と。
今なら転生チート奮発しすぎでしょ~と笑い飛ばせるけれど、何も知らない少女にとってはトラウマものだったのだろう。
そこから軟禁されて数年。
出してもらえる見込みもなく、誰と会話をする訳でもなく、与えられるご飯だけを食べて生活を送る日々。辛い。常人、それも10歳ともなれば耐えられるはずもない。私が記憶を取り戻したきっかけはそんなロザリアの絶望だったのだからなんとも悲しい話だ。
だが周りの大人達が100%悪いかと聞かれるとちょっと困ってしまう。
なにせ一人っきりの小屋の中でいろいろと試した結果見つけたステータス欄は異常としかいいようがなかったのだから。
――――――――――――――――――――
名前:ロザリア=リリアンタール
レベル:99
ジョブ:なし
HP:999
MP:999
筋力:999
耐久:999
敏捷:999
器用:999
耐魔力:999
【スキル】
獄炎 Lv.10
強奪 Lv.10
コピー Lv.10
錬金術 Lv.10
身体強化 Lv.10
回復 Lv.10
状態回復 Lv.10
鑑定 Lv.10
解錠 Lv.10
認識阻害 Lv.10
鑑定阻害 Lv.10
【称号】
聖女
強成長者
忌み子
強奪者
*以下、鑑定阻害事項
転生者
前世記憶持ち
運命を歪めし者
――――――――――――――――――――
基礎ステータスの基準が分からなかったから、小屋の隙間から外の大人達を鑑定してみた。10人ほどではあるが、平均は10前後。
レベルは5~20と幅広く分布している。スキルも一つか二つ持っていればいいくらいだった。それも男性なら剣や弓系などの戦闘スキル、女性なら裁縫や料理などの家事系のスキル。レベルも高くてLv.3がMAXだった。
ステータスとレベルの天井がどこだかは分からないけど、私のそれは明らかなるぶっ壊れステ―タス。恐れられるのも仕方ないのかな、って思えてならない。
だがこのまま一生周りの人たちに恐れられて、小屋に軟禁されたまま暮らすかと言われればNOだ。
何が悲しくて第二の人生を小屋で過ごさなければならないんだ。
確かに3食きっちり食事は出るし、労働の義務もない。楽な人生だ。だがそれだけ。人との会話もなければ、人生の楽しみすらない。
だから逃げることにした。
小屋の中でひたすら自分の状況を考えて、ステータス欄以外に使える機能はないか調べてみた。
そして小屋生活もとい転生3日目にしてようやく糸口を見つけた。それが『ポイント交換ページ』だ。見えるもの全てを鑑定し続けていたらステータス欄の下部に『オプション』ボタンが発生したのだ。いきなり発生したボタンをおそるおそる指先で突けば『ポイント100を消費して、ポイント交換システムを取得しますか?』なんてゲームっぽい表示が出てきた。初日にゲームシステムっぽい『チャットシステム』なるものを発見してなければなんだこれと数日は頭を抱えていたことだろう。だが前例があり、かつ小屋生活に嫌気がさしていた私は消費するのが何のポイントなのかを大して考えもせずに『YES』のボタンを押したのだった。
そして表示された『交換可能物一覧』にようやく驚きがやってきた。
食べ物や武器はもちろん、ステータスまでもポイントで取得出来てしまうのだから。右上に表示されていたポイントは100も消費してしまったばかりだからか、残りは19とわずかではあった。これでは交換出来るものは一部の食べ物かナイフと限定されてしまう。それでもこの機能を試すために交換を決めた。選んだのはダガーナイフ。交換に必要なポイントは15と少ない手持ちポイントから見ると痛い出費ではある。だがここで一番ポイントの低いミネラルウォーターを交換したところで、食事と水が一定量運ばれてくるこの場所では不要でしかない。一方でナイフはこの小屋から出た際に必要になってくるアイテムだと考えたのだ。
こうしてポイントがしっかりと15引かれたのを確認してから、現状では手の届きそうもないスキルを眺めることにした。数日かけてスクロールしては、ポチポチとスキルの内容を確認していく。
当面の大きな目標は交換ポイント1000の『攻略ガイド』だろうか。
必要ポイントは低いのか高いのか微妙なところだ。一覧で一番高いものは100万ポイントもするから案外すぐ手に入るものなのかもしれない。すぐ溜まるか時間がかかるかはさておき、生き抜くためには先に低ポイントの攻撃スキルを取ることも視野にいれなければならないだろう。
例えばナイフと同じくらいで交換出来る魔法のボールシリーズ。ファイヤーボールとかウォーターボールとか、ゲーム関係にあまり詳しくない私でも聞いたことがある定番魔法だ。Lv.1だと小さな球が出てきて飛んでいくのだろう。すでに取得しており、恐れられる原因となったらしい『獄炎』が火系の魔法っぽいから火以外の魔法を優先して全魔法コンプリートするところから始めようかな。
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