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2.雑草スープ
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小屋からの脱出を目指し、早速ポイントが溜め始めることにした。
――といってもどうすればポイントが溜まるかは分からない。
だがオプション機能が発生したのが突然だったことを考えると、私が行ってきた『何か』でポイントが溜まるか、毎日少しずつ溜まる可能性が高い。
交換したナイフで床に『4』と数字を書き、そして小屋の隙間から外の物の鑑定を開始した。夕飯を鑑定して、ひとまず一覧を開く。ポイントは『23』と上昇していた。つまり時間の経過か鑑定を使うことによってポイントを稼ぐことが可能らしい。
床に『23』と記してから運ばれたパンとスープを食す。
パンは乾燥しすぎていて、このままではかみ切るのも一苦労だ。葉っぱがわずかに浮いただけの味がほぼないスープにつけてふやかしてやっと食べられるくらい。
ちなみにこの葉っぱは以前鑑定してみたところ『名無し草(雑草)』と表示された。忌み子なんだから食事を出してもらってるだけありがたいと思えということなのだろう。望まぬ軟禁状態とはいえ、村の役に全く立っていないから仕方ないのだろう。
だが私の前世は食に困ったことのない日本人。加えて薄味よりも濃い味派だった。はっきり言ってまずい食事をとり続けるのも辛い……。それでも空腹よりはマシだと自分に言い聞かせて食べきる。
そしてまた一覧を開く。鑑定時間と比較すると非常に短時間であったにも関わらず『32』と9も上昇していた。食事による上昇率は高いと考えていいだろう。食事内容によって変わるかはまだ分からない。だが一日で27は上昇すると分かっただけでも大きな一歩だ。
『32』と床に記してから『ウォーターボール』『ウィンドボール』の二つを取得した。もちろん床に『2』と記すのも忘れない。
これを繰り返して10日ほどが立てば、簡単な魔法は取り終えていた。
そこから数日我慢して、ショルダーバックと予備のナイフ、ポーション2本と水入りの水筒を取得し、日が暮れるのを待つ。
最後の食事はやはりいつものスープとパン。
しっかり9ポイントが入ったのを確認してから、壁に数字を記した。
身体強化を施して、小屋の見張りに腹パンを決める。
特に恨みはないが騒がれたら逃亡の邪魔になるのだ。地面に倒れ込む男性に許して、と小さく囁いてから今しがた出てきた小屋を振り返る。内部を覗けばそこは想像以上に異様な光景が広がっていた。
手が届く範囲は全て数字で埋め尽くされ、一部破壊された床は焼かれた跡が残されていた。いわずもがな私の記録と魔法の練習跡なのだが、知らない人から見たら恐怖でしかないだろう。その恐怖もここの大人達にとっては今更なのかもしれないが。
「お世話になりました」
声どころか自我すらない小屋にお辞儀をして、森へと足を踏み出した。
森へと飛び出せば出会うのは野生の動物ーーではなく、魔物だった。
種類はゲームでおなじみのゴブリンから尻尾に鉱石を巻き込んだ巨大なリスまで様々だ。けれどそのほとんどが私を見つけるや否や襲いかかってくることは共通していた。
初めての戦闘は恐怖で身体が固まってしまうかもしれない。
よりによって初戦の相手は今の身体よりもずっと大きい緑色ボディ。
ふうっと短く息を吸ってナイフを構えた。
するとどうだろう。いつまで経っても恐怖なんて来やしない。
目の前のゴブリンと対峙するのと、前世で路地裏に引っ張られた時の恐怖を比較すれば断然後者が勝利したのだ。
あれに比べれば大抵の物は怖くない。
あっさり死んでしまったとはいえ、ブラック企業勤務を免れ、こうして魔物への恐怖も薄れさせてくれた名前も知らぬあの人に感謝の気持ちが沸き上がる。
怖かったけど!
死を意識したけど!
「ゴブリンなんか怖くない!」
高らかに声を上げ、チートな身体能力頼りの一陣を繰り出す。適当に繰り出した刃は首のやや下辺りから胸を真っ二つにするように流れ、それが致命傷となり、ゴブリンは消滅した。残ったのは小さな鉱石のみ。おそらく魔石だろう。
どうやら身体は消えて、アイテム? がドロップするシステムらしい。
ロザリアの記憶を辿っても魔石の使用方法は分からない。
どこかで買い取ってくれるのか、はたまたただの石扱いなのか。
ファンタジー系のゲームでお馴染みのギルドが存在するかも不明だが、身体が消えてしまうことから魔物討伐証明のアイテムとして使われている可能性もある。その場合、依頼を受けていない今の段階で倒したところで何の役にも立たない訳だが。
役割が分からない以上、かき集めても徒労に終わる可能性もある。
だから率先して魔物を倒そうとは思えない。それでも手に入れた分だけはとりあえずバックに投げ入れておく。
「お金になればいいな~」
一文無しの私にとって、収入となる可能性があるものを捨て置くことは出来ない。
食べ物はポイントと交換出来るにしても、宿代とかこの先の出費はさけられないのだから。
こうして遭遇した魔物をナイフと魔法でサクサクと倒していく。
どうやら魔物を倒してもポイントは貯まるらしく、ご飯を出そうと一覧を開くとかなりのポイントが貯まっていた。だからちょっとリッチに骨付き肉を頼んでみた。ちなみに何肉かは不明。少し筋張っていて噛み堪えはあるのに満腹感はあまりない。だがポイントが高い食事であったためか、還元されるポイントは20と今までの倍以上。
どうやら良い食事を取ると高ポイントが溜まるらしい。
余裕があるなら高ポイント帯の食事を摂取して還元させていった方がいいのだろうか。もちろん満腹感や腹持ちも大事で、一番は食べたいものを食べることだろう。
たかが食事、されど食事だ。
食べたくもないまずいご飯を食べ続ければストレスが溜まるのだ。
自分のことでありながらこんなに食にこだわりがあるなんて知らなかった。
でも今の私は魔物討伐でポイントが溜まるなら、良い食事が出来るなら喜んで魔物にナイフを突き立てる。もちろん魔石を筆頭としたドロップ品の回収も忘れない。
意外と量が多く、バックは追加で交換したのだが、そろそろ『アイテム倉庫』なるスキルも取得したいものだ。
名前の通り、アイテムなら何でも保管出来るという優れもの。レベルによって保管可能量は変わるらしいが、重さがなく、好きな時に取り出せるなら早めに取っておくべきだろう。
これ、どんどん『攻略ガイド』取得が遠ざかるパターンのやつだ! と自覚していても目先の利には飛びついてしまう。
計画性がないのは転生しても変わらないようだ。
――といってもどうすればポイントが溜まるかは分からない。
だがオプション機能が発生したのが突然だったことを考えると、私が行ってきた『何か』でポイントが溜まるか、毎日少しずつ溜まる可能性が高い。
交換したナイフで床に『4』と数字を書き、そして小屋の隙間から外の物の鑑定を開始した。夕飯を鑑定して、ひとまず一覧を開く。ポイントは『23』と上昇していた。つまり時間の経過か鑑定を使うことによってポイントを稼ぐことが可能らしい。
床に『23』と記してから運ばれたパンとスープを食す。
パンは乾燥しすぎていて、このままではかみ切るのも一苦労だ。葉っぱがわずかに浮いただけの味がほぼないスープにつけてふやかしてやっと食べられるくらい。
ちなみにこの葉っぱは以前鑑定してみたところ『名無し草(雑草)』と表示された。忌み子なんだから食事を出してもらってるだけありがたいと思えということなのだろう。望まぬ軟禁状態とはいえ、村の役に全く立っていないから仕方ないのだろう。
だが私の前世は食に困ったことのない日本人。加えて薄味よりも濃い味派だった。はっきり言ってまずい食事をとり続けるのも辛い……。それでも空腹よりはマシだと自分に言い聞かせて食べきる。
そしてまた一覧を開く。鑑定時間と比較すると非常に短時間であったにも関わらず『32』と9も上昇していた。食事による上昇率は高いと考えていいだろう。食事内容によって変わるかはまだ分からない。だが一日で27は上昇すると分かっただけでも大きな一歩だ。
『32』と床に記してから『ウォーターボール』『ウィンドボール』の二つを取得した。もちろん床に『2』と記すのも忘れない。
これを繰り返して10日ほどが立てば、簡単な魔法は取り終えていた。
そこから数日我慢して、ショルダーバックと予備のナイフ、ポーション2本と水入りの水筒を取得し、日が暮れるのを待つ。
最後の食事はやはりいつものスープとパン。
しっかり9ポイントが入ったのを確認してから、壁に数字を記した。
身体強化を施して、小屋の見張りに腹パンを決める。
特に恨みはないが騒がれたら逃亡の邪魔になるのだ。地面に倒れ込む男性に許して、と小さく囁いてから今しがた出てきた小屋を振り返る。内部を覗けばそこは想像以上に異様な光景が広がっていた。
手が届く範囲は全て数字で埋め尽くされ、一部破壊された床は焼かれた跡が残されていた。いわずもがな私の記録と魔法の練習跡なのだが、知らない人から見たら恐怖でしかないだろう。その恐怖もここの大人達にとっては今更なのかもしれないが。
「お世話になりました」
声どころか自我すらない小屋にお辞儀をして、森へと足を踏み出した。
森へと飛び出せば出会うのは野生の動物ーーではなく、魔物だった。
種類はゲームでおなじみのゴブリンから尻尾に鉱石を巻き込んだ巨大なリスまで様々だ。けれどそのほとんどが私を見つけるや否や襲いかかってくることは共通していた。
初めての戦闘は恐怖で身体が固まってしまうかもしれない。
よりによって初戦の相手は今の身体よりもずっと大きい緑色ボディ。
ふうっと短く息を吸ってナイフを構えた。
するとどうだろう。いつまで経っても恐怖なんて来やしない。
目の前のゴブリンと対峙するのと、前世で路地裏に引っ張られた時の恐怖を比較すれば断然後者が勝利したのだ。
あれに比べれば大抵の物は怖くない。
あっさり死んでしまったとはいえ、ブラック企業勤務を免れ、こうして魔物への恐怖も薄れさせてくれた名前も知らぬあの人に感謝の気持ちが沸き上がる。
怖かったけど!
死を意識したけど!
「ゴブリンなんか怖くない!」
高らかに声を上げ、チートな身体能力頼りの一陣を繰り出す。適当に繰り出した刃は首のやや下辺りから胸を真っ二つにするように流れ、それが致命傷となり、ゴブリンは消滅した。残ったのは小さな鉱石のみ。おそらく魔石だろう。
どうやら身体は消えて、アイテム? がドロップするシステムらしい。
ロザリアの記憶を辿っても魔石の使用方法は分からない。
どこかで買い取ってくれるのか、はたまたただの石扱いなのか。
ファンタジー系のゲームでお馴染みのギルドが存在するかも不明だが、身体が消えてしまうことから魔物討伐証明のアイテムとして使われている可能性もある。その場合、依頼を受けていない今の段階で倒したところで何の役にも立たない訳だが。
役割が分からない以上、かき集めても徒労に終わる可能性もある。
だから率先して魔物を倒そうとは思えない。それでも手に入れた分だけはとりあえずバックに投げ入れておく。
「お金になればいいな~」
一文無しの私にとって、収入となる可能性があるものを捨て置くことは出来ない。
食べ物はポイントと交換出来るにしても、宿代とかこの先の出費はさけられないのだから。
こうして遭遇した魔物をナイフと魔法でサクサクと倒していく。
どうやら魔物を倒してもポイントは貯まるらしく、ご飯を出そうと一覧を開くとかなりのポイントが貯まっていた。だからちょっとリッチに骨付き肉を頼んでみた。ちなみに何肉かは不明。少し筋張っていて噛み堪えはあるのに満腹感はあまりない。だがポイントが高い食事であったためか、還元されるポイントは20と今までの倍以上。
どうやら良い食事を取ると高ポイントが溜まるらしい。
余裕があるなら高ポイント帯の食事を摂取して還元させていった方がいいのだろうか。もちろん満腹感や腹持ちも大事で、一番は食べたいものを食べることだろう。
たかが食事、されど食事だ。
食べたくもないまずいご飯を食べ続ければストレスが溜まるのだ。
自分のことでありながらこんなに食にこだわりがあるなんて知らなかった。
でも今の私は魔物討伐でポイントが溜まるなら、良い食事が出来るなら喜んで魔物にナイフを突き立てる。もちろん魔石を筆頭としたドロップ品の回収も忘れない。
意外と量が多く、バックは追加で交換したのだが、そろそろ『アイテム倉庫』なるスキルも取得したいものだ。
名前の通り、アイテムなら何でも保管出来るという優れもの。レベルによって保管可能量は変わるらしいが、重さがなく、好きな時に取り出せるなら早めに取っておくべきだろう。
これ、どんどん『攻略ガイド』取得が遠ざかるパターンのやつだ! と自覚していても目先の利には飛びついてしまう。
計画性がないのは転生しても変わらないようだ。
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