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18.髪染めデビュー
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ドラゴン狩りに同行する約束で、今日はシュタイナー家が運営する店へ連れて行ってもらう予定だ。
予約時間は昼少し前。
だが昨晩レオンさんから指定された集合時間は朝食を摂ってからすぐだった。
しかも場所はレオンさんの部屋。
私とパーティーを組んでから同じホテルを拠点としている彼の部屋は2つほど下の階にある。
移動時間などわずか数分の距離にこんなに早く呼びつけるとは、ドレスコードでもあるのだろうか?
コンコンコンと三度ノックし、ゆっくりとドアを開く。
「おはようございます~」
するとそこには椅子やタオル、桶を用意したレオンさんが待っていた。
どうやら必要なのは服装のチェンジではなかったらしい。
「髪染めるからそこ座れ」
「なぜに!?」
「今日行く店に例の家の当主が来るかも知れないって話を聞いてな、染め粉買ってきた」
「なるほど」
美味しいご飯を食べるためなら必須イベントということか。
私が椅子に座るのも待たずに、レオンさんは染め粉を水で溶き始める。
私が拒否するとは想像もしていないのだろう。私もこの髪にこだわりがある訳でもないので、おとなしく椅子に腰を下ろすことにする。
レオンさんの手元を覗けば、そこにはやや茶色がかった赤色のペーストがある。
一応、元の色と似た色を用意してくれたようだ。
話を聞けば、この染料は一度染めると数ヶ月はこの色のままらしい。
そこから徐々に色が落ち、地毛が見えてくるようになるのだという。前世の髪染め剤を劣化させたようなものだろう。
昨日教えてくれれば錬金術で水で簡単に落とせる染料を作ることが出来たのだが、説明に時間がかかり同じ結果になっていたことだろう。
アイテム倉庫の存在も理解してもらうまで数日がかかったのだ。
錬金術の説明は時間がある時にでも話してゆっくり理解してもらうことにして、今回はレオンさんが買ってきてくれたものを使うことにした。
前世でも髪を染めたことはなかったので、初の髪染めデビューだ。
水に溶いた染料をペタペタと髪に塗りつけてもらい、放置すること数十分。水洗いをして、風の魔法で乾かせば想像よりも明るい赤が私の髪色となっていた。
「赤だ!」
「気に入ったか?」
「大満足です!」
「それは良かった。じゃあそろそろ行くか」
「はい!」
パッションピンクな少女から赤髪少女にイメージチェンジを果たした私はレオンさんと共に王都の中央通りに構える店へと向かった。
外観は至ってシンプルだが、貴族が経営しているだけあって、店内には高級そうな家具や絵画が並んでいる。おそらく使われている食器や食材も高級品なのだろう。
多くの貴族を虜にする料理とは一体どんなものなのだろう?
弾む心で周りを見渡しても、料理をサーブするタイミングは一緒なのか、料理が並んでいるテーブルはまだない。
「待っていれば運ばれてくるから良い子にしてろ。ほら、先に飲み物を選ばないと。何がいい? 食後にはコーヒーか紅茶が来るそうだが」
食後のお茶は前世ではよくあるサービスなのだが、この世界では一般的ではない。
レオンさんとパーティーを組んでから、フルコースで出てくるお高い店にいく機会もあったが、食後に飲み物が出てくる店は初めてだ。
レオンさんも初めての経験らしく、なぜ食後に出てくるんだ? と首を傾げている。
お貴族様は食後にゆったりとお茶かコーヒーを楽しむ習慣があるのだろうか?
『お貴族様のお抱えの店』はあっても『お貴族様が直接運営する店』は初めてで、他の店とはやや勝手が違うのかもしれない。
メニューにお値段が書かれていない、ある種の恐ろしい店だからそもそものターゲットが一般市民ではないのだろうが。
差し出されたドリンクメニューに視線を投げ、ソフトドリンクから一番無難なものを選択する。
「アイスティーで」
ミルク・レモン・ストレートの三択で迷ったが、ここはどんな食事が来ても対応出来そうなアイスティーを選んだ。
追加で頼む時は食事に合う範囲内で好きな飲み物を選べば良いだろう。
メニューを180度回転させて、今度はレオンさんにずいっと差し出せば、短い髭を撫でながらうーんと唸った。
「俺は……ワイン、飲んで良いか?」
レオンさんはそこそこお酒を嗜むらしいのだが、今は制限している。
まだお酒の飲める年齢ではない私に合わせているのだ。
仕事の関係で酒場には出入りするし、冒険者をしている以上大人と子どもの線引きなんて酷く曖昧だ。わざわざ気を使う冒険者なんてほとんどいない。
飲みたければ飲めばいいだけなのだが、レオンさんはお酒を飲みたくなった時、わざわざ私に確認を取るのだ。
ちなみに私が飲むなと言ったことなど一度も無い。
聞かれた時にはいつだって構わないと返しているのだが、毎回彼はおずおずと申し訳なさそうに許可を求めるのだ。
親子説が加速していくのはレオンさんのこの態度のせいもあるのだろう。
わざわざ毎回許可を出すのも面倒くさいのだが、それを伝えれば確認することなく禁酒生活に突入しそうだ。
ドラゴン討伐に誘う時はさらっと言い出したのに、一体どこで気を使っているのだろうか。
予約時間は昼少し前。
だが昨晩レオンさんから指定された集合時間は朝食を摂ってからすぐだった。
しかも場所はレオンさんの部屋。
私とパーティーを組んでから同じホテルを拠点としている彼の部屋は2つほど下の階にある。
移動時間などわずか数分の距離にこんなに早く呼びつけるとは、ドレスコードでもあるのだろうか?
コンコンコンと三度ノックし、ゆっくりとドアを開く。
「おはようございます~」
するとそこには椅子やタオル、桶を用意したレオンさんが待っていた。
どうやら必要なのは服装のチェンジではなかったらしい。
「髪染めるからそこ座れ」
「なぜに!?」
「今日行く店に例の家の当主が来るかも知れないって話を聞いてな、染め粉買ってきた」
「なるほど」
美味しいご飯を食べるためなら必須イベントということか。
私が椅子に座るのも待たずに、レオンさんは染め粉を水で溶き始める。
私が拒否するとは想像もしていないのだろう。私もこの髪にこだわりがある訳でもないので、おとなしく椅子に腰を下ろすことにする。
レオンさんの手元を覗けば、そこにはやや茶色がかった赤色のペーストがある。
一応、元の色と似た色を用意してくれたようだ。
話を聞けば、この染料は一度染めると数ヶ月はこの色のままらしい。
そこから徐々に色が落ち、地毛が見えてくるようになるのだという。前世の髪染め剤を劣化させたようなものだろう。
昨日教えてくれれば錬金術で水で簡単に落とせる染料を作ることが出来たのだが、説明に時間がかかり同じ結果になっていたことだろう。
アイテム倉庫の存在も理解してもらうまで数日がかかったのだ。
錬金術の説明は時間がある時にでも話してゆっくり理解してもらうことにして、今回はレオンさんが買ってきてくれたものを使うことにした。
前世でも髪を染めたことはなかったので、初の髪染めデビューだ。
水に溶いた染料をペタペタと髪に塗りつけてもらい、放置すること数十分。水洗いをして、風の魔法で乾かせば想像よりも明るい赤が私の髪色となっていた。
「赤だ!」
「気に入ったか?」
「大満足です!」
「それは良かった。じゃあそろそろ行くか」
「はい!」
パッションピンクな少女から赤髪少女にイメージチェンジを果たした私はレオンさんと共に王都の中央通りに構える店へと向かった。
外観は至ってシンプルだが、貴族が経営しているだけあって、店内には高級そうな家具や絵画が並んでいる。おそらく使われている食器や食材も高級品なのだろう。
多くの貴族を虜にする料理とは一体どんなものなのだろう?
弾む心で周りを見渡しても、料理をサーブするタイミングは一緒なのか、料理が並んでいるテーブルはまだない。
「待っていれば運ばれてくるから良い子にしてろ。ほら、先に飲み物を選ばないと。何がいい? 食後にはコーヒーか紅茶が来るそうだが」
食後のお茶は前世ではよくあるサービスなのだが、この世界では一般的ではない。
レオンさんとパーティーを組んでから、フルコースで出てくるお高い店にいく機会もあったが、食後に飲み物が出てくる店は初めてだ。
レオンさんも初めての経験らしく、なぜ食後に出てくるんだ? と首を傾げている。
お貴族様は食後にゆったりとお茶かコーヒーを楽しむ習慣があるのだろうか?
『お貴族様のお抱えの店』はあっても『お貴族様が直接運営する店』は初めてで、他の店とはやや勝手が違うのかもしれない。
メニューにお値段が書かれていない、ある種の恐ろしい店だからそもそものターゲットが一般市民ではないのだろうが。
差し出されたドリンクメニューに視線を投げ、ソフトドリンクから一番無難なものを選択する。
「アイスティーで」
ミルク・レモン・ストレートの三択で迷ったが、ここはどんな食事が来ても対応出来そうなアイスティーを選んだ。
追加で頼む時は食事に合う範囲内で好きな飲み物を選べば良いだろう。
メニューを180度回転させて、今度はレオンさんにずいっと差し出せば、短い髭を撫でながらうーんと唸った。
「俺は……ワイン、飲んで良いか?」
レオンさんはそこそこお酒を嗜むらしいのだが、今は制限している。
まだお酒の飲める年齢ではない私に合わせているのだ。
仕事の関係で酒場には出入りするし、冒険者をしている以上大人と子どもの線引きなんて酷く曖昧だ。わざわざ気を使う冒険者なんてほとんどいない。
飲みたければ飲めばいいだけなのだが、レオンさんはお酒を飲みたくなった時、わざわざ私に確認を取るのだ。
ちなみに私が飲むなと言ったことなど一度も無い。
聞かれた時にはいつだって構わないと返しているのだが、毎回彼はおずおずと申し訳なさそうに許可を求めるのだ。
親子説が加速していくのはレオンさんのこの態度のせいもあるのだろう。
わざわざ毎回許可を出すのも面倒くさいのだが、それを伝えれば確認することなく禁酒生活に突入しそうだ。
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