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39.馬車通学とか恥ずかしい
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ヤコブさんが作ってくれたお祝いご飯を楽しみにゴトゴトと馬車で揺られること十数分。
お屋敷に到着し、ご飯~ご飯~とるんるんで椅子に腰を降ろせばエドルドさんは何かを思い出したかのように話を切り出した。
「明日から一週間ほどのオリエンテーションはしっかりと出席してくださいね」
「そのつもりです」
オリエンテーションの件は入学式で説明されている。
この学園は形式は前世の大学とよく似ており、ほとんどが選択授業で構成されている。通う生徒の大半がお貴族様ということもあり、お金に余裕があるのか、授業数は300近く存在する。
もちろんⅠを取得後にⅡ、Ⅲが受けられるようになるものもあるが、それでも種類は豊富であるといえるだろう。ちなみに申請をし、担当者が承諾すれば一気にⅢまでスキップすることも可能らしい。こちらは優秀な生徒に考慮してのことだろう。
さらに受講希望の生徒が一人しかいなくても授業を開講してくれるというのだからなんとも太っ腹な学園である。
ここまでして、卒業に必要な単位数は54と少なめだ。
前世で四年生の大学を卒業するのに必要だった単位が124だったから、そのちょうど半分。必修授業で稼げる単位が12だから差し引いて42単位。
朝から授業をぎっちりと詰め込めば一年生のうちに取り終えることが可能だ。
社交だの他の生徒との付き合いだのの関係で、三年間で散らして取るのが一般的なのだろう。
だが私は前世で1~2年と単位を落としまくった経験がある。
授業をサボっていたり、試験で点数低かったり、レポート提出間に合わなかったりと理由はそれぞれだが、とにかく単位というものは舐めると後で怖い。
いくら真面目に通わずとも卒業させてくれると分かっていても、初めくらいは真面目に通いたい。仕事で忙しいならまだしも、普通にサボって通いませんでした! ではレオンさんの長々とした学の重要性に付き合わされることが確定してしまう。
今後、真面目に学園に通うためにも、オリエンテーションは真面目に通うつもりだ。
すでにいくつかの授業には目を付けている。食後、じっくりとシラバスに目を通して、オリエンテーションに参加する授業を多めに選ぶつもりだ。
「馬車は毎日8時と18時に出しますので」
8時から18時というとキッカリ1限に合わせて登校して、5限目まで受けるスケジュールだ。
真面目に通おうとは思っているが、さすがにそこまで本腰を入れるつもりはないのだが……。
もしかして私の身近にいる教育熱心な人はレオンさんだけではなかったのだろうか。
いくつか中を開けるにしても、たまには早めの帰宅をさせて欲しいものだ。
「さすがにそのスケジュールはちょっと……」
スパルタすぎやしませんか? と言葉を繋げようと口を開けば、エドルドさんは困ったように首を掻く。
「すみません。本来ならば今日お渡しするはずだった通信用の魔道具にトラブルが見つかったらしく、まだ届いていないんです。届くのは早くて来週末になるそうで。申し訳ないのですが、早く終わったら図書館で本でも読んでいてください」
通信用の魔道具とは初耳だ。
おそらくスマホみたいなものなのだろう。
ギルドはそんなものまで支給してくれるのか。これから緊急のクエスト依頼はその魔道具を通して指示が送られるのかもしれない。
……あれ?
だったらエドルドさんをパーティーに入れる必要なかったのでは?
特殊クエストはSランク冒険者の義務だから原則として断ることは出来ないが、一般のクエストであれば受ける受けないは自由だ。三年間一つも受けなければ問題があるが、たまに顔を出して一気に複数依頼を引き受けて~という方法を取れば問題はないはず。
通信用の魔道具の支給は最近決まったのだろうか?
今のところエドルドさんがパーティーに加わった恩恵しか受けていないので文句はないが。
それよりも今、重要視すべきは学園への通学方法だ。
「馬車とかいいですって。歩いて行ける距離ですし」
山を越える必要があるなら少し考えるが、学園への道はしっかりと舗装されている。
王都の中央街を抜けてから10分ほどで到着するような場所なのだ。
普通に歩いて行ける距離だ。
むしろあれくらいの距離、毎日馬車で送って貰っていては身体が鈍ってしまう。
馬車送迎は不要だと訴える私に、エドルドさんはゆっくりと首を左右に振る。
「普通の生徒はあの距離を歩いて通学しません。ほとんどが馬車です」
「それはお貴族様の話でしょう?」
「いえ、平民の子どももです。よほどのイレギュラーでもない限り、馬車を抱えられるくらいの金銭的余裕がある子どもしか来ませんので」
そうだった。あそこにいるのはほぼ全員お金持ちだということを失念していた。
前世がある私からすると馬車通学って毎日車で送迎されているみたいでなんだか気恥ずかしいのだが、お金持ちにとっては当たり前なのかもしれない。
「あー、でもエドルドさんだって出勤に馬車使うでしょう?」
「時間をずらせば済む話です」
「ガットさんの仕事が増えるじゃないですか」
「ガットとて、たかが一日二回の送迎が増えたところで困りませんよ」
「たかが二回なのは私の徒歩通学も同じですって」
「悪目立ちしますよ」
悪目立ちはしたくない。
それにエドルドさんに迷惑をかけたくないし……。
ここは諦めて馬車に乗るべきなのか。
他に手段はないのか、と突破口を探して頭をフル回転させる。
「なら『転移』使うのでいいです」
取ってて良かった、転移スキル!
見知らぬ誰かになら決して伝えることはないが、すでにエドルドさんには多くのスキルとぶっ壊れステータスを見られている。
そこからさらに一つ分スキルがバレたところで痛くもかゆくもない。
お屋敷に到着し、ご飯~ご飯~とるんるんで椅子に腰を降ろせばエドルドさんは何かを思い出したかのように話を切り出した。
「明日から一週間ほどのオリエンテーションはしっかりと出席してくださいね」
「そのつもりです」
オリエンテーションの件は入学式で説明されている。
この学園は形式は前世の大学とよく似ており、ほとんどが選択授業で構成されている。通う生徒の大半がお貴族様ということもあり、お金に余裕があるのか、授業数は300近く存在する。
もちろんⅠを取得後にⅡ、Ⅲが受けられるようになるものもあるが、それでも種類は豊富であるといえるだろう。ちなみに申請をし、担当者が承諾すれば一気にⅢまでスキップすることも可能らしい。こちらは優秀な生徒に考慮してのことだろう。
さらに受講希望の生徒が一人しかいなくても授業を開講してくれるというのだからなんとも太っ腹な学園である。
ここまでして、卒業に必要な単位数は54と少なめだ。
前世で四年生の大学を卒業するのに必要だった単位が124だったから、そのちょうど半分。必修授業で稼げる単位が12だから差し引いて42単位。
朝から授業をぎっちりと詰め込めば一年生のうちに取り終えることが可能だ。
社交だの他の生徒との付き合いだのの関係で、三年間で散らして取るのが一般的なのだろう。
だが私は前世で1~2年と単位を落としまくった経験がある。
授業をサボっていたり、試験で点数低かったり、レポート提出間に合わなかったりと理由はそれぞれだが、とにかく単位というものは舐めると後で怖い。
いくら真面目に通わずとも卒業させてくれると分かっていても、初めくらいは真面目に通いたい。仕事で忙しいならまだしも、普通にサボって通いませんでした! ではレオンさんの長々とした学の重要性に付き合わされることが確定してしまう。
今後、真面目に学園に通うためにも、オリエンテーションは真面目に通うつもりだ。
すでにいくつかの授業には目を付けている。食後、じっくりとシラバスに目を通して、オリエンテーションに参加する授業を多めに選ぶつもりだ。
「馬車は毎日8時と18時に出しますので」
8時から18時というとキッカリ1限に合わせて登校して、5限目まで受けるスケジュールだ。
真面目に通おうとは思っているが、さすがにそこまで本腰を入れるつもりはないのだが……。
もしかして私の身近にいる教育熱心な人はレオンさんだけではなかったのだろうか。
いくつか中を開けるにしても、たまには早めの帰宅をさせて欲しいものだ。
「さすがにそのスケジュールはちょっと……」
スパルタすぎやしませんか? と言葉を繋げようと口を開けば、エドルドさんは困ったように首を掻く。
「すみません。本来ならば今日お渡しするはずだった通信用の魔道具にトラブルが見つかったらしく、まだ届いていないんです。届くのは早くて来週末になるそうで。申し訳ないのですが、早く終わったら図書館で本でも読んでいてください」
通信用の魔道具とは初耳だ。
おそらくスマホみたいなものなのだろう。
ギルドはそんなものまで支給してくれるのか。これから緊急のクエスト依頼はその魔道具を通して指示が送られるのかもしれない。
……あれ?
だったらエドルドさんをパーティーに入れる必要なかったのでは?
特殊クエストはSランク冒険者の義務だから原則として断ることは出来ないが、一般のクエストであれば受ける受けないは自由だ。三年間一つも受けなければ問題があるが、たまに顔を出して一気に複数依頼を引き受けて~という方法を取れば問題はないはず。
通信用の魔道具の支給は最近決まったのだろうか?
今のところエドルドさんがパーティーに加わった恩恵しか受けていないので文句はないが。
それよりも今、重要視すべきは学園への通学方法だ。
「馬車とかいいですって。歩いて行ける距離ですし」
山を越える必要があるなら少し考えるが、学園への道はしっかりと舗装されている。
王都の中央街を抜けてから10分ほどで到着するような場所なのだ。
普通に歩いて行ける距離だ。
むしろあれくらいの距離、毎日馬車で送って貰っていては身体が鈍ってしまう。
馬車送迎は不要だと訴える私に、エドルドさんはゆっくりと首を左右に振る。
「普通の生徒はあの距離を歩いて通学しません。ほとんどが馬車です」
「それはお貴族様の話でしょう?」
「いえ、平民の子どももです。よほどのイレギュラーでもない限り、馬車を抱えられるくらいの金銭的余裕がある子どもしか来ませんので」
そうだった。あそこにいるのはほぼ全員お金持ちだということを失念していた。
前世がある私からすると馬車通学って毎日車で送迎されているみたいでなんだか気恥ずかしいのだが、お金持ちにとっては当たり前なのかもしれない。
「あー、でもエドルドさんだって出勤に馬車使うでしょう?」
「時間をずらせば済む話です」
「ガットさんの仕事が増えるじゃないですか」
「ガットとて、たかが一日二回の送迎が増えたところで困りませんよ」
「たかが二回なのは私の徒歩通学も同じですって」
「悪目立ちしますよ」
悪目立ちはしたくない。
それにエドルドさんに迷惑をかけたくないし……。
ここは諦めて馬車に乗るべきなのか。
他に手段はないのか、と突破口を探して頭をフル回転させる。
「なら『転移』使うのでいいです」
取ってて良かった、転移スキル!
見知らぬ誰かになら決して伝えることはないが、すでにエドルドさんには多くのスキルとぶっ壊れステータスを見られている。
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